やはり原発はクリーンに非ず

 原発は「危険」だけど「必要」? 福井県内の高校生、同世代調査
 (https://mainichi.jp/articles/20211211/k00/00m/040/209000c)
といったWeb記事がありました。
 福井南高の生徒たちが、福井県内の高校に通う同世代の若者たちが原発にどのような意識を持っているのかを調べるアンケート調査を実施し、その結果が紹介されていました。
 そのなかに、「これまでに学校で学んだ原発関連の項目」(複数回答)を尋ねた結果が示されていました。高かったものは、「福島第1原発事故」64.9%、「原発の仕組み」61.4%、「原発のデメリット」58.0%、「メリット」54.1%でした。
 一方、原発の発電と再処理の過程で生じる「高レベル放射性廃棄物(核のごみ)」については 23.5%、その処分方法となっている「地層処分」については 10.4%と、廃棄物処理など発電が終わった後の段階については、学んだと答える人が少ない結果となりました。

 廃棄物処理といった原子力発電の「下流部」に関することが教えられていないことは確かに問題ですが、「上流部」のことは全く無視されているようです。もしかしたらアンケート調査の選択肢にすら「上流部」のことはなかったのかもしれません。

 原発の上流部とは、ウランが日本に輸入されてくる前のことです。ウラン鉱石は、通常イエローケーキ(ウラン鉱石精製の過程の濾過液から得られるウラン含量の高い粉末)の状態で取引されるので、そこまでの段階をここでは「上流部」とします。
 ウラン鉱石が採掘され、イエローケーキと呼ばれる段階になるまでに現地ではどのような問題が生じているのか、日本ではほとんど報道されないので、学校で教わらなかったとしても無理はありません。しかし、今後も必要不可欠なエネルギー源として原発の是非を考えるなら、CO2排出や高レベル放射性廃棄物の問題だけでなく、鉱石採掘といったライフサイクルのはじまりから考えなければ、誤った答えにたどり着いてしまう恐れがあります。
 ウラン採掘時にも放射性廃棄物が大量に発生していることや、ウラン鉱山周辺の地下水などの環境汚染、鉱山作業員の高い肺がん発症率、危険性を知らされずに働く貧困層、虐げられてきた先住民のことなど、実は原発の上流部には、私たち日本人のほとんどが知らないたくさんの問題があります。
 「イエロー・ケーキ――クリーンなエネルギーという嘘」(Yellow Cake The Dirt Behind Uranium)というドイツのドキュメンタリー映画があります。2010年につくられましたが、日本では限られた場所でしか上映されませんでした。原発の上流部を知れば知るほど、原発がクリーンなエネルギーなどというのは真っ赤な嘘で、社会的立場の弱い人々を犠牲にして得られるエネルギーだということがわかります。

 洋服の分野では、原材料となる綿花について、人権問題のある新疆ウィグル自治区で作られた綿花を使用していたアパレル会社が世間から叩かれたことがありました。原発についても、同様の動きが今後日本で起こることを願っています。

2021年12月13日