能登半島は高レベル放射性廃棄物処分の好適地?

 経済産業省資源エネルギー庁のホームページには「科学的特性マップ公表用サイト」があります。
(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/)

 科学的特性マップとは、高レベル放射性廃棄物を地層処分する場合に、ある場所がそれに相応しいかどうかを見極めるために、各地の科学的特性を、既存の全国データに基づき一定の要件・基準に従って客観的に整理し作成された地図になります(図1)。
 この図は、地層処分に好ましくない地域(灰色と黄色)は国土の35%で、地層処分に好ましい地域(緑色と淡緑色)は国土の65%と半分以上あることを示しています。

図1:科学的特性マップ(右に能登半島の拡大図を追加)
(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/maps/kagakutekitokuseimap.pdf より)

 このマップによれば、能登半島は北の先端部を除き、ほとんどのエリアが「輸送面でも好ましい地域」であることを示しています。輸送面でも好ましいとは、言い換えれば「最も好ましい地域」になります。

 図2は、今回の能登半島地震で隆起し陸化したエリアを示しています。

図2:令和6年能登半島地震により陸化したエリア
(https://www.gsi.go.jp/common/000254191.pdf)

 地層処分の好適地とされた能登半島の海岸線では、今回の能登半島地震で広範囲にわたる地盤の隆起が確認されています。

 そして、その隆起は最大4メートル超です。
 "【能登半島地震】輪島の海岸が4メートル隆起 観測史上で最大級、津波への影響も" 2024年1月6日 05時10分 (1月6日16時39分更新)

図3:https://www.chunichi.co.jp/article/833150 より

 震度7を記録する場所や、おそらく数分たらずで4メートルも隆起してしまう場所でさえも、高レベル放射性廃棄物の処分地として「好ましい」と、科学的特性マップは主張しています。

 これが科学の実力、と私たちは謙虚になるべきではないかと痛感します。

 こうした批判に対しては、「あくまで他の場所に比べて "相対的に" 好ましいと言っているだけだ」といったような反論があるかもしれません。
 しかし、震度7の揺れや数分たらずで4メートルも隆起する場所が、相対的にではあっても処分地として好ましいというのなら、「科学的特性マップ」は、日本列島に高レベル放射性廃棄物を処分する適地はどこにもない、ことを示しているに過ぎないのではないでしょうか。

2024年01月22日