地震・火山予知関連のブログ

それでも気になる千葉県の地震

 千葉県東方沖を震源とする有感地震が多発しています。
 気象庁による報道発表は、以下のURLに詳細が示されています。
 https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2024/20240226_eoff_chiba.pdf

 過去にもゆっくりすべり(数十日かけてゆっくりすべる現象)を伴う同様の地震活動が観測されています。
 気象庁によれば、1996年、2002年、2007年、2011年、2014年、2018年にも同様の地震活動が見られており、1週間から数か月間程度地震活動が継続することがあり、震度5弱程度の強い揺れが観測される可能性があるとのことです。

 これまで同様の経過をたどるのであれば、最大震度は5弱ということかもしれません。しかし、能登半島では群発地震(前震・本震・余震が区別できる活動ではなく、ある地域で多数の地震が発生)から、最大震度7の地震が発生しました。
 そのようなことから、不安を感じる人もいるでしょう。また、これに便乗して「大地震が来るぞ」と、さらに不安をあおるSNS等の投稿が見受けられます。

 上記PDFの最後(15ページ目)には、「相模トラフで次に発生するM8クラスの地震の発生確率」が示されています。
 千葉県東方沖を含むエリアでは、最大クラスの地震としてマグニチュード(M)8.6 の地震が想定されています。そして、30年発生確率は、ほぼ0%〜6%とあります。

 地震への備えは、発生確率は考慮せず、最大クラスの地震がいつ来てもおかしくない、と考え行動すべきです。

 もし、不安を覚えたなら、身の回りの防災を見直してみましょう。
 家具の固定、寝室の安全性(タンスの下敷きにならないか?など)、備蓄の確認(水や食料だけでなく電池なども)、避難場所や避難経路、家族との連絡方法などを再確認するいい機会です。

 日本ではどこにいても、大きな揺れに見舞われる可能性があります。
 備えあれば憂いなし。不安になったら、身の回りの防災を今一度、確認してみましょう。

2024年03月06日

能登半島地震の前兆情報は?

 能登半島地震を事前に警告していた情報はあったのでしょうか?調べた限りでは、「なかった」が答えになります。

 おそらく最も有名な民間地震予測のMEGA地震予測はどうだったのでしょうか?
 MEGA地震予測 2024年1月3日発行(https://ch.nicovideo.jp/jesea/blomaga/ar2180709)をみると、
「1月3日号のMEGA地震予測はお休みする予定でしたが、 「令和6年能登半島地震」が発生しましたので急遽当該地震について特集を致します。 通常の予測はお休みいたします。」とあります。

 具体的な内容は(有料のため)確かめられませんが、1月3日号を休む予定だったことから、能登半島地震は予測していなかったと推測されます。

 X(旧ツイッター)の書き込みはどうだったでしょうか?
 Yahoo!のリアルタイム検索で、検索ワード「前兆 地震」で調べました。この検索機能は過去30日まで遡ることができます。2023年12月12日まで遡ることができました。
 下図は日別のツイート数になります。2024年1月1日が多いのは、地震発生後にツイート数が急増したためです。ちなみに、地震発生時刻前のツイート数は16です。なお、12月31日までの20日間の平均ツイート数は、78.6です。

図:検索ワード「前兆 地震」の日別ツイート数(2023/12/12〜2024/1/1)

 次に、どのような地震が予想されていたのでしょうか?
 多かったのは、南海トラフと関東地方(首都直下など)の地震でした。

 南海トラフ地震については、三重県での小魚の大量漂着(12月15日ツイート)や、室戸沖で深海のダルマザメ捕獲(12月22日)、三重県南東沖の地震(12月25日)が、前兆候補の現象となっていました。

 関東地方の地震については、栃木県南部の地震(12月17日)、千葉県東方沖の地震(12月22日〜)、千葉県市原市で夕方なのに明るすぎること(12月27日)などです。

 他に、函館イワシ大量死(12月12日)が北海道や青森の地震、12月27日に東海地方で見られた穴あき雲が東海地方の地震の前兆ではないか、とのことでした。

 能登半島での地震を予想していたツイートは見当たりませんでした。

2024年02月19日

地震災害リスクと企業誘致

 石川県企業立地ガイド(https://www.ishikawa-ritchi.com/)に、石川県企業立地PR動画があります。
 これを見ていると、53秒あたりから「災害リスクが低い」の項目が始まり、「大地震の発生確率が低い石川」として、今後30年以内の震度6弱以上の発生確率マップが使われています(下図)。

図:大地震の発生確率が低い石川(石川県企業立地PR動画から)

 地震動の確率予測マップ(全国地震動予測地図)は、確率が低く見積もられている地域では「安全」と捉えられてしまう恐れがある、と以前から言われていました。
 地震動に限らず、津波浸水想定のハザードマップなどでも、被害想定外の地域では「安全」と考えてしまうのが、人の自然な発想なのかもしれません。

 地方が企業を誘致する際に、災害リスクが低いことはセールスポイントになります。したがって、石川県でも前述のような動画を作ったのでしょう。

 同様のアピールは、2016年熊本地震前の熊本県でも行われていました。
 当時の熊本県企業立地課のwebサイト企業立地ガイドKUMAMOTOでは、熊本地域は過去120年間(M7以上)の地震が発生していない「安全地帯」、とアピールしていました。

 この安全アピールは、地震が発生した4月14日の6日後(4月20日)には削除されたことなどが、ITmedia NEWSの記事として残っています。(https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1604/21/news074.html)

 日本人は「臭いものに蓋をする」と、都合の悪いことを隠してしまう傾向があります。
 熊本県の「安全地帯」アピール記事が、地震発生6日後には削除されていたことから、石川県の企業立地PR動画に携わった方々は、このことを知らなかったのかもしれません。

 災害の問題点を教訓として、次の世代に生かしてもらうには、当事者にとって都合の悪いことであっても、それを世間に知ってもらうことが大切なのではないかと考えます。

2024年02月06日

海底地滑りによる津波

 令和6年能登半島地震では津波が発生しました。
 富山湾における津波発生の原因について、以下のような記事がありました。

"津波の要因か…富山湾の海底で“東京ドーム半分“相当の土砂が崩れ水深40メートル深く 海上保安庁の調査" 2024年1月25日(木) 15:34
(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tut/961358?display=1)

 富山湾では地震発生の3分後に40センチメートルの津波が観測されています。気象庁は近い位置に津波の原因がある可能性を指摘していたことから、記事ではこの土砂崩落が富山湾での津波発生の原因である可能性を示唆しています。

 津波の発生原因としては、海底地震によって海底地形が変形(隆起・沈降)し、それが海面に伝わることで津波になるというメカニズムが一般的です。日本海溝などのプレート境界の地震が引き起こす津波がその典型です(図1)。

図1:海底地形の変形と津波発生
(https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/tsunamibousai/01/index01.htm より)

 能登半島を襲った津波は、逆断層型の地震だったので、同様に海底地形が上下に変動し発生したと考えられます。

 一方、富山湾における津波は、地震の揺れによって海底で土砂崩れが起きたことが原因ではないか、といった異なる発生メカニズムです。

 このような海底の土砂崩落(海底地滑り)による津波の例として、2018年9月28日にインドネシア・スラウェシ島で発生した地震(マグニチュード7.5)による津波を紹介します。

 この地震は横ずれ断層による地震だったので、一般的に津波は発生しにくいと考えられます(上下の変動が少ないため)。しかし、この地震では最大11.3メートルの津波が発生しました。
(https://www.jrc.or.jp/international/news/181024_005483.html#:~:text=9月28日現地,被害をもたらしました。)
 津波被害があった州都パルは、震源のドンガラからは約78キロメートルも離れています(図2)。

図2:震源のドンガラと津波被害があったパルの位置関係
(https://www.jrc.or.jp/international/news/181024_005483.html#:~:text=9月28日現地,被害をもたらしました。 より)

 津波研究の第一人者である東北大学の今村教授によれば、この津波は地滑りを起こしやすい特性があったパル湾の地形が、揺れに伴って海底地滑りを起こしたためではないか、とのことです(図3)。
(https://weathernews.jp/s/topics/201811/080125/)

図3:海底地滑りによる津波発生のメカニズム
(https://weathernews.jp/s/topics/201811/080125/ より)

 能登半島地震による富山湾の津波も、同様のメカニズムによるものだった可能性があります。

 ちなみに、地震が少ないイギリスでも、遠い昔に海底地滑りによる大津波があったようです。
"8200年前、大津波がイギリスを襲っていた…同時期の人口減少との関連は?" Jan. 28, 2024, 08:00 AM
(https://www.businessinsider.jp/post-281566)

2024年01月30日

能登半島は高レベル放射性廃棄物処分の好適地?

 経済産業省資源エネルギー庁のホームページには「科学的特性マップ公表用サイト」があります。
(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/)

 科学的特性マップとは、高レベル放射性廃棄物を地層処分する場合に、ある場所がそれに相応しいかどうかを見極めるために、各地の科学的特性を、既存の全国データに基づき一定の要件・基準に従って客観的に整理し作成された地図になります(図1)。
 この図は、地層処分に好ましくない地域(灰色と黄色)は国土の35%で、地層処分に好ましい地域(緑色と淡緑色)は国土の65%と半分以上あることを示しています。

図1:科学的特性マップ(右に能登半島の拡大図を追加)
(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/maps/kagakutekitokuseimap.pdf より)

 このマップによれば、能登半島は北の先端部を除き、ほとんどのエリアが「輸送面でも好ましい地域」であることを示しています。輸送面でも好ましいとは、言い換えれば「最も好ましい地域」になります。

 図2は、今回の能登半島地震で隆起し陸化したエリアを示しています。

図2:令和6年能登半島地震により陸化したエリア
(https://www.gsi.go.jp/common/000254191.pdf)

 地層処分の好適地とされた能登半島の海岸線では、今回の能登半島地震で広範囲にわたる地盤の隆起が確認されています。

 そして、その隆起は最大4メートル超です。
 "【能登半島地震】輪島の海岸が4メートル隆起 観測史上で最大級、津波への影響も" 2024年1月6日 05時10分 (1月6日16時39分更新)

図3:https://www.chunichi.co.jp/article/833150 より

 震度7を記録する場所や、おそらく数分たらずで4メートルも隆起してしまう場所でさえも、高レベル放射性廃棄物の処分地として「好ましい」と、科学的特性マップは主張しています。

 これが科学の実力、と私たちは謙虚になるべきではないかと痛感します。

 こうした批判に対しては、「あくまで他の場所に比べて "相対的に" 好ましいと言っているだけだ」といったような反論があるかもしれません。
 しかし、震度7の揺れや数分たらずで4メートルも隆起する場所が、相対的にではあっても処分地として好ましいというのなら、「科学的特性マップ」は、日本列島に高レベル放射性廃棄物を処分する適地はどこにもない、ことを示しているに過ぎないのではないでしょうか。

2024年01月22日

かつてあった珠洲原発計画

 令和6年能登半島地震の震源となった珠洲市には、かつて原発建設計画がありました。
 北陸電力・中部電力・関西電力の電力会社3社は、珠洲市の2ヶ所(高屋と寺家)に原発を建設しようとしていました。(下図)

図:珠洲原発の予定地だった場所
(https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2003/1205-1_1j.html より)

 しかし、住民の反対運動で2003年に計画は凍結されました。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/珠洲原子力発電所 より)

 珠洲原発については、今回の地震を受けて一部メディアが報道しています。
 "志賀原発「異常なし」から考えた 運転中だったら?「珠洲原発」だったら? 震度7の地震は想定内なのか" 2024年1月5日 12時00分
(https://www.tokyo-np.co.jp/article/300551)

 また、珠洲に原発建設計画があったことは、以前の地震でも取り上げられています。

 "震度6強 石川・珠洲の住民「原発造らず正解だった」 建設計画に翻弄された過去" 2023年5月19日 6:00 [有料]
(https://kahoku.news/articles/20230519khn000010.html)
 "大きな地震相次ぐ石川能登で浮上していた「珠洲原発」…2003年12月に計画凍結" 公開日:2022/06/21 06:00 更新日:2024/01/05 15:17
(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/307042)

 ここでよくよく考えてほしいことは、電力会社や原発推進派は珠洲市が原発立地の適地と考えていたからこそ、この計画があったということです。
 別の言い方をすれば、活断層直近の場所でさえ、原発推進派にとっては原発立地の適地と考えていることになります。

2024年01月15日

能登半島地震は想定されていたのか?

 令和6年能登半島地震は想定されていたのでしょうか?
 図1は、全国地震動予測地図 2020 年版にある今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示したものです。右側の図は能登半島を拡大したものです。

図1:確率論的地震動予測地図
(https://www.jishin.go.jp/main/chousa/20_yosokuchizu/yosokuchizu2020_chizu_10.pdf より)

 能登半島の大半は、0.1%〜3%と相対的に低い確率になっていました。
 このハザードマップから考えれば、今回の能登半島地震は予測できていなかったといえるでしょう。

 では、石川県の地域防災計画に、"能登半島地震"は想定されていたのでしょうか?
 図2は、石川県地域防災計画 地震災害対策編 (令和5年修正)にあった能登半島北方沖の想定地震による震度と液状化の予測地図になります。

図2:能登半島北方沖の想定地震による震度と液状化の予測
(https://www.pref.ishikawa.lg.jp/bousai/bousai_g/bousaikeikaku/documents/jishinnsaigaitaisaku.pdf より)

 想定場所は近いですが、地震の規模(マグニチュード)はM7.0と、1月1日の地震よりかなり小さい想定でした。実際に発生した地震はM7.6ですから、想定地震のおよそ8倍になります。
 輪島と珠洲の大半は震度5強(左図の黄色部分)の予測でした。また、「ごく局地的な災害で災害度は低い。」と記載されていることからも、地震動予測地図同様に、予測されていなかったといえるでしょう。

 ところが、同じ石川県地域防災計画の津波災害対策編 (令和5年修正)では、図3にあるF43地震による津波が想定されていました。

図3:平成28年度津波想定断層位置図
(https://www.pref.ishikawa.lg.jp/bousai/bousai_g/bousaikeikaku/documents/tunamisaigaitaisaku.pdf より)

 こちらの断層による地震の想定は、場所が同じで規模がマグニチュード(M)7.57と、1月1日の地震(M7.6)にかなり近いです。

 わからないことは、「地震災害対策編」と「津波災害対策編」で似た場所の地震に対して、なぜ異なる地震断層を想定をしたのか、です。
 いずれも令和5年修正になっています。また、津波の想定に使われたF43の断層は、平成28年度のものです。さらに、それより以前の平成23年度の想定では、M7.66と平成28年度の想定(M7.57)よりも大きい地震を想定していました。

 なんとも解せません。地震災害対策と津波災害対策で、ほぼ同じ場所に異なる地震断層をなぜ想定したのでしょうか?
 防災会議で「地震対策も津波対策と同じ想定断層で考えるべき」と、なぜならなかったのか?解せません。

2024年01月13日

今回もSNSで偽情報

 令和6年能登半島地震でも、SNS上で多くの偽情報が流れています。
 ただ、近年の災害では同様のことが繰り返されるからでしょう、Yahoo! JAPAN ニュースでも「能登半島地震 最新情報まとめ」サイトのなかに「デマ・誤情報に注意」といった項目がありました。
 「災害時、SNSの情報に騙されないために」といったことで、以下のことが示されています。

https://news.yahoo.co.jp/pages/20230101a より

 ここには、"「いくら正しい情報が来ても簡単には否定できない」飛び交う被災地のニセ情報…SNSでデマ拡散のナゼ" といった記事が紹介されています。
(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/923049?display=1)

 この記事では大変有用なことが書かれています。
 東京大学の関谷直也教授によると、
 (1)「不安だから流言は広がる」=メカニズムを知ることが大事。
 (2)「流言は知者に留まる」=おかしいと思った人が止めることで拡大を防げる。
 (3)「流言ワクチンを打つ」=流言がどう広がるのか、あらかじめ知っておけば、正しいかどうか判断できる。とのことです。

 私自身は、これまで地震流言について、(3)の「流言ワクチンを打つ」を意識した論文を書いてきました。
 地震流言とは、いつ・どこで・大地震が発生する、といったうわさが不特定多数の人に広まることです。
 特に大地震発生の直後には、地震再来流言が当地で発生することがあります。また、大地震に見舞われた場所とは異なる地域で地震流言が広まることもあります。

 ただ、こうした地震流言には共通項があります。
 a) 地震発生の月日を(場合によっては時間まで)指定
 b) もっともらしい権威を情報の出所としている
 c) 不安を煽る出来事がある

 一例として、北海道胆振東部地震で広まったうわさを示します。
「苫小牧の海上保安庁から,苫小牧に地響きあり,約9時頃本震が来る可能性があるそうです.十分注意してください. 2018/09/08 18:28」(SBAPP,2019/1/12 閲覧)
 a) 地震発生の月日を指定 →(本日)9時頃
 b) もっともらしい権威を情報の出所 → 苫小牧の海上保安庁
 c) 不安を煽る出来事 → 苫小牧に地響き(そもそも北海道胆振東部地震が不安を煽る出来事)

 特に地震発生について、「いつ」をピンポイントで指定している情報は、その時点で「ウソ」と判断すべきです。(なぜなら、少なくとも現時点で、地震は予知できないので。)
 また、「海上保安庁から」といっていますが、海上保安庁はそのようなことを言っていません。このような場合は、拡散する前に、もっともらしい出所(海上保安庁)のホームページ等を確認すれば、この情報がウソだと判断できます。

 このように、(3)「流言ワクチンを接種」していれば、(2)「知者として流言(地震発生のうわさ)を留める」ことができます。

 偽情報を流す人は、受け手の好意につけこんで拡散を狙っているか、もしくは受け手の罪悪感(これを伝えないと誰かが犠牲になるかも)につけこんで拡散を狙っているのかもしれません。
 偽情報を流す輩を止めることはできませんが、受け手の私たちが流言についての知識を持ち、知者になって拡散を止めることはできます。

2024年01月04日

能登半島で大地震

 1月1日16時10分頃、石川県能登地方でマグニチュード:M7.6(暫定値)の地震が発生しました。最大震度は7で津波も発生しました。(令和6年能登半島地震と命名されました。)

 能登地方では、昨年5月5日にM6.5(最大震度6強)が発生しています。その後、M7クラスの地震が発生する恐れがあると言われていました。今回の地震はそれを上回る規模の地震となってしまいましいた。

 さて、この地震の予兆、前兆はあったのでしょうか?
 ネットで検索すると、
"石川県「能登半島地震」は現地で何年も前から前兆が現れていた…「能登半島で連続発生していたヤバい揺れ」と全国で起こっていた「奇妙な前兆」" (2024.01.01)
(https://gendai.media/articles/-/122316)
といった記事がありました。

 2022年11月と2023年1月に富山港で、2月に和歌山の白浜で、3月には島根の海で深海魚のリュウグウノツカイが釣りあげられたことを、「前兆」としていました。

 冬季の日本海では、実はしばしばリュウグウノツカイが出現しています。また、2022年11月は今回の地震の1年以上前の出来事です。それを結びつけようとすることは、何でもいいから異常を地震と関連づけようとする発想といえるでしょう。

 1928年から2011年までに以下のリュウグウノツカイ関する記録があります(織原他, 2018 より)。
<富山県>
 2009/12/15 黒部市荒俣の海岸に漂着
 2010/01/19 氷見市で混獲
 2010/02/05 入善町飯野沖で混獲
 2010/02/08 入善町飯野沖で混獲
<島根県>
 1951/07/02 浜田市瀬戸ヶ島湾内に漂着
 1954/06/20 隠岐島西方沖で確認
 2009/01/08 出雲市大社町の稲佐の浜に漂着
 2009/11/20 松江市美保関町の境水道に迷入
(和歌山県はなし)

 日本海中部地震(M7.7)は1983年5月26日に発生しています。上記のリュウグウノツカイ出現の後に、日本海で大地震は記録されていません。

2024年01月02日

住民避難から1ヶ月余、アイスランドで火山噴火

 現地時間12月18日22時17分頃、アイスランド南西部にある港町グリンダビークから北東約4キロのところで火山噴火が始まりました。

図)噴火した場所
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/photos/900001048.html より

 グリンダビークの住民は、約1ヶ月前の11月10日に急きょ避難しました。
 報道によれば、人的被害は今のところないとのことです。
 ただ、避難者に関する報道がないため、1ヶ月余の避難生活がどのようなものなのかがわかりません。

 南海トラフ巨大地震に関連したある調査では、事前避難による避難生活の受忍期間は、せいぜい1週間でした。
 グリンダビークの住民約4,000人の避難先はどこなのでしょうか?避難で町を離れることから、避難所ではなく知人宅やホテル住まいなのかもしれません。

 日本の場合は火山噴火だけでなく、南海トラフ巨大地震などで事前避難の情報が出される可能性があります。
 仮に、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)が発表された場合、地震発生後の避難では間に合わない可能性のある住民は、1週間の事前避難が求められます。
(https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/rinji/index4.html)

 もし、1週間経過しても地震が発生しなかった場合、自宅に戻る住民もいるでしょう。1ヶ月もすれば、ほとんどの住民が帰宅してしまうかもしれません。そして、今回のアイスランドの火山噴火のように、1ヶ月と少し経ってから大地震に見舞われる可能性も考えられます。

 例えば、東日本大震災では直前の異常として、昭和三陸地震の前にも異常が見られた井戸で、本震の約1ヶ月前ごろから井戸水の異常が確認されています。仮に、この時点で巨大地震警戒情報を出したとしても、巨大地震発生時には自宅に戻り、元の生活をしていたかもしれません。

 少し話が飛躍してしまいますが、今後どんどん人口が減る日本ですから、自然災害に見舞われる危険度が高い地域は、非居住地域にするような大胆な施策を考えてもいいのかもしれません。

2023年12月25日

マイワシの豊漁、その原因は?

 北海道東沖でマイワシが5年連続20万トン超えと、豊漁が続いているとのことです。
 "マイワシが北海道の東沖で豊漁、水揚げ高は32年ぶりに100億円突破…飼料・肥料の国際市場高騰も追い風"
(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20231116-OYT1T50080/)

 1896年明治三陸地震の前には、マグロ、イワシ、カツオが豊漁、1933年昭和三陸地震の前には、イワシが豊漁だったとあります(吉村昭著『三陸海岸大津波』)。
 そして、2011年東北地方太平洋沖地震でも、イワシの漁獲異常(豊漁)がありました。ただし、同様の漁獲異常は大地震が起きなかった別の年にもみられました(織原他, 2014)。

 今回のニュースにあったイワシの豊漁は、三陸の大地震前のそれとは違うようです。
 マイワシの資源量は数十年単位で増減を繰り返すといわれています。今は資源量が多い時期と考えられます。

 また、近年は海水温の上昇により、獲れる魚種が変化してきているようです。
 "函館で名物のイカとれずブリ大漁…海水温の上昇で漁場が北方にシフト、専門家「漁で狙う魚種の転換支援を」"
(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20231116-OYT1T50135/)
 "「漁師も鮮魚店も知らないような魚が…」伊豆の海に異変のナゼ 夏の水温観測史上最高でキハダマグロが定置網にかかり 沖縄を代表する魚も“定住” "
(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/sbs/839200)

 三陸沖の大地震に関しては、上記のように3回のイワシ漁獲異常(豊漁)が報告されています。
 次の大地震前にも同様の現象がみられる可能性があります。ただし、イワシの漁獲異常だけで大地震を予測することはできません。それでも、地震の予兆を考える上で、補足情報にはなり得ると思っています。

 ただ、こうした漁獲異常も、昨今の海水温上昇による影響で、今後は参考にならなくなってしまうかもしれません。

2023年11月27日

アイスランドで大規模噴火の予兆

 現地時間の11月10日(金)から、アイスランド南西部で地震が急増し、大規模噴火が懸念されています。
 "アイスランド南西部で火山噴火が切迫か" 2023/11/11 11:07
(https://weathernews.jp/s/topics/202311/110145/)

 南岸に位置する漁師町グリンダビークの住民が10日に急きょ避難、とのことです。
 "破壊的噴火に備えるアイスランド、漁師町壊滅の恐れ" 2023年11月13日 13:20 JST
(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-13/S41830T0AFB401)

アイスランド南西部の地図
(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-13/S41830T0AFB401 より)

 マグマの貫入によって地震が多発しているようです。

 火山噴火の予兆としては、一般的に火山性地震の増加や地形の変化、地下水温など熱の変化、さらに、電磁気学的現象などがあるとされています。
 今回の事前避難は、こうした予兆から近いうちに噴火が起きるであろうと考えての措置と思われます。

 アイスランドでは、2010年にも大きな噴火がありました。
 このときは噴出した火山灰が、欧州の上空に滞留し、空の便に支障をきたしました。

 日本では、仮に富士山が噴火して大量の火山灰が西風に乗って首都圏に到達すれば、大混乱となるでしょう。
 交通網の麻痺だけでなく、大規模停電、断水、さらには、目や喉など人体への直接的な影響も考えられます。

 懐中電灯や電池などバッテリーの準備、水や食料の備蓄などに加え、ゴーグルや防じんマスク等も、各家庭で用意しておくとよいでしょう。

2023年11月21日

アフガニスタンの地震は四つ子の地震

 "アフガン地震は“四つ子地震”、「ありえない」と科学者ら唖然"
(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/102300541/)

 10月7日午前11時11分(現地時間)にアフガニスタンのヘラート州で発生した地震は、マグニチュード(M)6.3 でした。そして、その23分後に再び M6.3の地震が発生しました。
 さらに、4日後の10月11日に同じ地域で3回目のM6.3の地震が発生しました。
 これで終わらず、死者数が約3000人に達した10月15日には、4回目のM6.3の地震が発生しました。

 続けて、記事では、わずか1週間余りの間に、同規模の大地震が4回も連続して発生することは非常に珍しく、米ワシントン大学のハロルド・トービン氏による、「ドミノ効果」説を紹介しています。

 2016年の熊本地震は、4月14日21時26分にM6.5の地震が熊本地方を襲い、続けて4月16日01時25分にはM7.3の地震が発生しました。
 いずれの地震も最大震度7でした。震度7の地震が同じ地域に立て続けに発生したことで、当時多くの人(特に地震学者)が驚きました。

 4月14日のM6.5地震の直後は、これが最も規模が大きい地震(本震)で、その後はより規模が小さい地震が発生するといった「本震−余震型」と思われました。ところが、4月16日にM7.3の地震が発生したわけです。
 型にはめようとするなら、4月16日のM7.3地震が本震で、4月14日のM6.5地震は前震となります。
 しかし、4月14日のM6.5地震は本震で、その影響を受けて、別の本震(4月16日のM7.3地震)が起きたと考えることもできます。

 私たち人類(特に地震多発地域の人々)は、これまで多くの地震を経験してきました。
 しかし、M9.0の2011年東北地方太平洋沖地震が発生するとは、誰も予想していませんでした。震度7が連続した2016年熊本地震も同様です。

 今回のアフガン地震は四つ子地震と、極めて珍しい地震の起こり方でした。
 地震のこと、地球のこと、私たち人類は、実はまだまだ知らないことが多いのかもしれません。

2023年10月30日

最近やたらと多い巨大地震の煽り記事

 "日本の「巨大地震」で命を奪う「意外すぎるモノ」…それは津波でも火事でもない" 2023.10.15
(https://gendai.media/articles/-/116809)
 "「南海トラフ巨大地震」で「日本」は「衝撃的な有り様」になる…その「ヤバすぎる被害規模」" 2023.09.28
(https://gendai.media/articles/-/116942)
 "巨大地震の後にやってくる「大津波」の恐怖…多くの人が知らない「生死を分けたもの」" 2023.09.26
(https://gendai.media/articles/-/116119)

 このような不安を煽る記事を、最近よく目にします。
 ただし、これらはいずれも「現代ビジネス」関連の記事で、書籍の宣伝記事でもあります。

 南海トラフ地震も首都直下地震も、必ずやってくる地震です。ただし、いつ・どの程度の規模か、といったことを正確に言い当てることはできません。

 現時点で、首都直下地震については、大正関東地震(マグニチュード: M7.9)よりもひと回り小さいM7クラスの地震発生が懸念されています。そのことは、2023/9/1付ブログ「関東大震災から100年」でお話ししました。

 「首都直下地震の被害想定対策のポイント」(https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/jikkoukaigi/03/pdf/1-1.pdf)には、M7クラスの19想定地震による震度分布などが示されています。

 "首都直下、震源別に4ケース 震度7可能性は計21区市町" 2022年5月25日 11:41
(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE233IK0T20C22A5000000/)
 "東京都初「災害シナリオ」首都直下地震で停電とトイレ・食料リスク" 2022/07/05
(https://www.bosai.yomiuri.co.jp/feature/6560)
などには、発生直後から1か月までに起こりうる出来事が明示されています。

 何が起こりうるのかを知り、それに備えることは大切です。
 ただ、19想定地震による震度分布や、災害シナリオは、あくまで想定地震の1つが起きた場合のことです。

 ある首都直下地震が引き金となって、別震源の首都直下地震が立て続けに発生する可能性がないとはいえません。
 また、地震以外の自然災害(風水害や火山噴火など)が同時期に発生するといった複合災害の可能性もあります。さらに、首都直下地震と南海トラフなど他の大地震が立て続けに起きることも否定できません。

 このようにいろいろ考えを巡らすと、どこまで想定すればいいのかわからなくなり、最終的に思考停止になってしまうかもしれません。
 だからといって、何も準備しなくてもいいはずはありません。必ずやってくる震災への備えは必須です。
 家族の安否確認方法、避難場所とそこまでのルート、家屋の耐震化、家具の固定、水や食糧の備蓄など、考えられることはとにかく準備しておいて損はありません。

 南海トラフにしろ首都直下にしろ、大地震が発生した場合(特に南海トラフ)は、国家存亡の一大事になる可能性が非常に高いといえます。
 そうした必ずやってくる危機を前に、政府やマスコミの動きの少なさは、来るべき現実から目を背けているようにも思えてしまいます。

2023年10月16日

モロッコ地震前に発光現象?

 "モロッコ地震(マグニチュード6.8)の少し前、上空に現れた青い閃光の正体は" といった記事がありました。
(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/09/post-102638.php)

 このWeb記事2ページ目に動画があります。
 23時08分14秒頃 (画面中央と左の中間)に瞬間的な光, 23時08分23秒頃 (画面左), 23時08分24秒頃 (画面中央と左の中間) にやや継続する青白い光が見られます。

 この地震は、現地時間で2023年9月8日23時11分1秒 に発生しました。動画の時刻が正しいとするなら、地震発生前にあった発光現象といえます。
 また、この動画は、震源となったアトラス山脈の南西の都市アガディールの監視カメラで撮られたものだそうです。ちなみに、アガディールは震源から約150km 離れています。

 そして、本記事では、この青白い光の正体は変圧器の爆発によるもの、と結論づけています。

 日本でも、監視カメラ等が増えたおかげで、夜間に大きな地震があると、揺れに伴う発光現象がしばしば記録されています。これらは揺れによって送電線がショートしたりして発生した光などであると、一般的にはいわれています。

 この記事の内容が正しいならば、今回のモロッコ地震の発光は、地震前に、ある意味絶妙なタイミングで、変圧器が爆発したことになります。

 地震発光現象は謎が多く、1995年阪神・淡路大震災の地震発生前に空が明るくなった、という話は複数あり、信憑性は高いです。また、1966年の長野県松城群発地震の際にも発光現象が確認されています。これは写真にも記録されています。詳細は、気象庁の「松城群発50年特設サイト」をご覧ください。
(https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/matsushiro/mat50/disaster/luminous.html

 地震に関係した地震発光現象がどのようなメカニズムで発生するのか?今のところ、はっきりしたことはわかっていません。

2023年09月19日

関東大震災から100年

 本日9月1日は、1923年に発生した大正関東地震(関東大震災)から100年になります。

 9月1日は「防災の日」ですが、日本赤十字社によるインターネット調査によりますと、9月1日が「防災の日」であることを知らない人の割合は若年層ほど多く、約半数が「知らない」という結果になりました(2018年調査)。
 9月1日が「防災の日」であることを知らない人の割合
 20代:51.7%
 30代:42.8%
 40代:28.0%
 50代:26.6%
 60代:17.4%
(https://www.jrc.or.jp/press/180829_005405.html より作成)

 現在懸念されているのは、大正関東地震(マグニチュード: M7.9)よりもひと回り小さいM7クラスの首都直下地震です。
(詳しくは、https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/past2/pdf/higai_gaiyou.pdf)

 東京湾北部を震源とする地震 (M7.3) では、震度6強のエリアが東京都の東部から千葉県の湾岸などに広がる想定です。
 東京の東部は、海抜ゼロメートル地帯である江東5区(墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区)に重なります。河川堤防の破損による水害も懸念されます。
 特に、このような地域にお住まいの方は、揺れの大きさだけでなく、地震の揺れにより起こる次の災害の危険性(リスク)についても、知っておくべきです。もちろん、他の地域にお住まいの方も、足元にどのような危険(リスク)が潜んでいるのかを知っておくべきです。

 上記の調査は2018年の結果ですが、今年 (2023年) では、20代:56%、30代:69% と、知らない割合が増加しています。
(https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/352941)
 これは、政府を中心とする啓発活動がうまくいっていない証といえるかもしれません。

 防災の第一歩は、身の回りの危険(リスク)を知ることです。知ってもらうことと同時に、知ることの大切さも若い世代へ伝えていく必要があるようです。

2023年09月01日

地震発生前のキジの鳴声

 YouTube で、2022年3月16日23時36分頃に発生した福島県沖の地震(マグニチュード(M)7.4; 最大震度6強)に先行して、キジ(雉)の鳴く声が収録されている動画を見つけました。
(https://www.youtube.com/watch?v=tavTI_dvQ20)

 画面右上の時計は22時台を示していました。1時間ずれているようです。
 これが2022年3月16日の画像で、分と秒は正しいとすると、23時36分51秒頃に地震波が到達したようです。そして、55秒頃に車のウィンカーが点滅して、車が揺れ始めました。

 残念ながら、この動画が撮られた場所が不明です。
 気象庁HP内の "令和4年(2022年)3月16日 23時36分 福島県沖の地震"
(https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/kyoshin/jishin/2203162336_fukushima-oki/index.html)
を参考にすると、観測場所は宮城県内か福島県内でしょう。

 同サイトから、震源時刻は2022年3月16日23時36分32.6秒になります。
 キジの鳴き声と思われる音は、35分37秒頃に1回、35分46秒頃に1回、35分51秒頃から複数回、36分12秒頃に1,2回、そして、36分50秒頃に1回あり、直後に揺れが始まっているようです。

 震源時刻が23時36分32.6秒ですから、確かにそれより前、1分近く前から鳴き声が記録されています。

 しかし、"令和4年3月 地震・火山月報(防災編)"を見ますと、同じ日に同じ福島沖でM6.1, 最大震度5弱の地震が、この地震の2~3分前、23時34分頃に発生しています。
(https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/gaikyo/monthly/202203/202203furoku_1.pdf)

 初めてこの動画を見た時は「地震前兆現象か⁈」と、少し興奮しました。
 その後、色々と調べてみると、23時34分頃に同じ福島沖で地震(M6.1) が発生していたことがわかりました。この地震の影響で、キジが鳴いていた可能性も考えられます。

 以上により、この動画に記録されているキジの鳴き声が、地震前兆であるかどうかは現時点では不明です。どちらかと言えば、直前に発生していたもう一つの地震の影響かもしれません。

 もし、残っているのであれば、23時34分より前の動画が見たいものです。

2023年08月28日

報道しない自由

 ジャニーズ事務所の創業者ジャニー喜多川氏(故人)による性虐待の話が、やっとTVでも取り上げられるようになりました。しかし、残念ながら、この問題は深掘りされることなく、葬り去られてしまうかもしれません。
 2004年、裁判でジャニー氏の敗訴が決まったにも関わらず、彼のセクハラ行為に対してマスコミは、今のいままで沈黙を守り通しました。いわゆる報道しない自由です。

 この問題については、ジャニーズ事務所とマスコミ関連業界との持ちつ持たれつの関係が、報道しない自由の行使につながったと考えられます。
 やっとテレビ報道されるようになったのに、なぜ追及しないのかというと、事件の深堀りイコール自分で自分の首を絞めること、になってしまうからです。
 遅くともジャニー氏敗訴決定後に、その罪を社会に喚起していたなら、2004年以降の被害は防げたかもしれません。マスコミも犯罪に加担したと言われかねません。

 さて、報道しない自由については、別の理由もあります。テレビも新聞も、何を報道するのかを考える際、時間的・紙面的な制約があります。何を取り上げ、何を取り上げないかの取捨選択は、そのような制約のなかで決められる側面があります。

 前回(5月12日)のブログでも取り上げたMEGA地震予測について、「週刊ポストや夕刊フジ,フジテレビなど一部メディアが村井予測の応援団」となる一方、「大手紙や NHK は村井予測のデタラメぶりを知りながら,報道しようとしない」と横山裕道氏は、マスコミの対応に不満を示しています。
(地震ジャーナル, 2020年12月, 55-58ページから引用) 

 私も横山氏の意見には賛同します。ただ、なぜ大手紙やNHKが村井予測のデタラメぶりを取り上げないのかというと、上記のジャニーズ問題とは異なり、視聴者・読者の関心や社会的影響が、他の出来事と比較して「低い」と判断されたからではないかと推測します。
 とはいっても、一部マスコミが応援団として取り上げているわけですから、それに対抗する民放や週刊誌が、ひとつぐらいあってもいいのではないかとも思います。

 いずれにしても、現状でマスコミが否定的にMEGA地震予測を取り上げてくれることはないでしょう。今のところ、本ブログのように、個人的な発信しか期待できません。

2023年05月19日

能登で震度6強、千葉で震度5強

 5月5日に石川県能登地方で最大震度6強(暫定マグニチュード6.5)、そして、11日は千葉県南部で最大震度5強(暫定マグニチュード5.2)の地震が発生しました。

 能登地方では2020年12月頃から活発な地震活動が継続しています。今回の地震は、この一連の活動のなかで最大のものとなっています。
 富山大学の竹内章名誉教授によりますと、現在の群発地震は「本体の活動の前兆というか準備段階」の可能性、つまり、今後より大きな地震が発生するかもしれない、とのことです。
(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/473425?page=3)

 この記事にある竹内名誉教授のコメントの中で気になった点があります。
 「今回は珠洲の地域に古い断層があって、どれも活断層と認められていないものがほとんどなんです。(中略)複数の古傷が割れていることが続いている(後略)」

 現在の科学的な知見で「活断層ではない」とされていた断層が、活動した(活断層だった、というよりは、活断層に変化した)ことを示唆しています。
 原子力発電関連では、しばしば活断層か否かが問題になります。この竹内先生のコメントをそのまま受け入れるなら、現時点で活断層ではない、と考えられる断層が何らかの理由で、今後活断層に戻ってしまう可能性がある、ということになります。

 11日には、千葉県木更津市で震度5強を記録する地震が発生しました。その南東沖には、2011年東北地方太平洋沖地震の割れ残りとされるエリアがあります。また、首都圏に近いこともあり、首都直下地震を心配する声が聞かれました。

 首都直下地震については、どこが震源となるかわかりませんが、いつ起きてもおかしくない、と考えておくべきでしょう。
 現時点で、事前避難を促せるような確度の高い地震予測(地震予知)はできません。命を守るためには、日頃からの備えを怠らないことが肝要です。

 ちなみに、前回取り上げたMEGA地震予測の「異常変動全国MAP2023VOL.3」では、能登地方は安全な(地震の心配はない)地域でした。
(https://www.news-postseven.com/archives/20230426_1863408.html/2)

 一方、千葉の地震は当たっているのでは?と思われた方がいるかもしれません。以下のリンクを確認してください。
 異常変動全国MAP2023 VOL.2
(https://www.news-postseven.com/archives/20230311_1848588.html?DETAIL)
 異常変動全国MAP2023Vol.1
(https://www.news-postseven.com/archives/20230103_1824318.html?DETAIL)
 異常変動全国MAP2022 Vol.6
(https://www.news-postseven.com/archives/20221025_1805457.html/2)
 異常変動全国MAP2022/Vol.5
(https://www.news-postseven.com/archives/20220819_1785355.html?DETAIL)
 異常変動全国MAP2022VOL.4
(https://www.news-postseven.com/archives/20220710_1771728.html/2)
 異常変動全国MAP2022VOL.3
(https://www.news-postseven.com/archives/20220530_1758789.html/2)
 異常変動全国MAP’2022 VOL.2
(https://www.news-postseven.com/archives/20220328_1739080.html/2)
 アップデート版 異常変動全国MAP2022 Vol.1
(https://www.news-postseven.com/archives/20220131_1723190.html/2)

 関東地方と東北地方は、一年中警戒エリアになっていたことがわかります。このようにしておけば、地震発生後に「当たった」と必ず言えます。

 一般的に、人は昔のことを忘れがちです。以前どのような予測がなされていたかより、最新の予測に興味を抱きます。だから、「当たった」と言われると、その真偽を確かめるより、次の地震はどこか?と最新の予測情報に関心が向いてしまいます。

 こうした人の心理を利用した点は、ビジネスセンスがあったと言えるかもしれません。しかし、科学の進歩には何の寄与もしないでしょう。また、日頃からの備えを怠らないこと以上に、「ひとりでも多くの人の命を救う」こともできないでしょう。

 それでも有料会員を続けますか?

2023年05月12日

それでも続くMEGA地震予測

 村井俊治の引退により、MEGA地震予測が終了するかと思いきや、継続されるようです。
(https://www.news-postseven.com/archives/20230426_1863408.html?DETAIL)

 MEGA地震予測とは、村井俊治が始めた地震予測情報の配信サービスです。月額380円(税込)で有料情報を得ることができます。
 月額380円と安価ではありますが、地震学者でお金を払ってこの情報を得たいと思う人は、おそらく1人もいないと思います。月380円の価値すらないと判断するでしょう。

 ところが、"測量学の世界的権威"、"東大名誉教授" といった肩書きで信用してしまう人、また、"地震を言い当てた" などの宣伝文句を鵜呑みにしてしまう人が後を絶たないようです。

 個人が自己責任で購入する分には、個人の自由でしょう。しかし、社会的に責任ある何らかの団体が、MEGA地震予測を信用あるもののように扱うことには問題があります。
 一部の週刊誌では、MEGA地震予測がピンポイントに地震を当てた、と宣伝していますが、「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」に過ぎません。日本の広範囲で頻繁に危ない、と言っていれば、いつかは当たります。そして、当たったことだけを示せば、あたかも予測が成功したかのように錯覚してしまう人もいます。

 村井俊治氏は現在まで、日本地震学会においてMEGA地震予測を発表していません。ご本人が望めば可能でしょう。それでもやろうとしないのは、学会で発表すれば、多くの批判にさらされ、その批判(質問)にまともに答えられないと、思っているからかも知れません。

 まともな学術論文も学会発表もないMEGA地震予測は、科学的な検証がなされていません。
 "予測を当てた"、と主張するなら、正々堂々と過去の全データを公開し、第三者による検証を可能にすべきです。科学的な検証を経て「当てた」となれば、信用度が一気にアップするのに、なぜ第三者による検証をしようとしないのでしょうか?

 また、村井俊治氏は、「地震を予測して、ひとりでも多くの人の命を救いたい。」と述べています。(https://www.jesea.co.jp/)
 本当に「ひとりでも多くの人の命を救いたい」と思っているなら、自らの「地震予測」がどれほど「人の命を救う」ことに役立っているのか?地震予測の精度について、客観的な検証が必要なのではないでしょうか?

 有料会員が求めている情報は、将来(これから先)のことです。過去のデータを公開しても、有料会員が損するとは考えられません。
 繰り返しますが、本当に「ひとりでも多くの人の命を救いたい」と思っているなら、その地震予測の精度を第三者が検証できるよう過去の全データ(どのような予測をしたのか)を公開すべきです。

 村井氏の応援団の方々は、「ひとりでも多くの人の命を救いたい」といった村井氏の思いに賛同していることと推測します。
 であるなら、科学的な検証でそれを証明してもらおうではありませんか。
 是非とも、過去データを公開するようMEGA地震予測(JESEA)に働きかけてください。

2023年05月06日

千葉のイルカ集団座礁の原因は?

 今週の月曜日 (3日) から、千葉県一宮町でのイルカ集団座礁が、SNSを中心に話題になっています。
 なかには「地震の前兆では?」といった書き込みがありました。

 昨日6日には、"集団漂着のイルカたち、衰弱した妊娠中の仲間を守ろうとして浅瀬に流されたか" (2023/04/06 13:37 讀賣新聞オンライン)といった記事が配信されました。
(https://www.yomiuri.co.jp/science/20230405-OYT1T50239/)

 死んだイルカを回収した国立科学博物館が3頭の解剖し、2頭が妊娠中で、うち1頭は重篤な肺炎だったそうです。また、同博物館の田島研究主幹によれば、「1頭には肺炎の症状もあり、呼吸をするのも難しい状況だったはず。黒潮から冷水域に入り、複数の衰弱した妊娠個体を仲間が守ろうとして浜辺に漂着したのではないか」とのことです。

 何か異常な出来事があると、すぐに「地震の前兆ではないか?」と考えてしまう人が少なからずいます。本人がそう思っているだけなら特に問題はないのですが、それを他人に話す(SNSで拡散する)と、それを見聞きして不安を抱いてしまう人も、また少なからずいます。

 見聞きして不安がった人たちは、この記事のような専門家の分析結果を聞くと、少しは安心するのではないでしょうか。それでも、これとて一つの仮説であって、地震前兆の仮説が否定されたわけではない、と考える人がいるかもしれません。

 「地震の前兆ではない」と「ない」ことを否定することは、悪魔の証明などと言われることもあり、大変困難なことです。
 なので、何がもっともらしいか?地震前兆説を信じる前に、それ以外の説を自分で調べてみる、判断はその後でもいいのではないでしょうか。
 
 SNS上には、面白半分または悪意を持って、わざと人が不安を抱くようなことを発信する人がいます。
 受け取る側は、悪意を持った発信者が必ずいることを常に念頭に置いて、投稿内容を安易に受け入れない、自分で色々な発言(説)を調べてみることが大切です。

 そのためのレクチャーを、小学校のうちから断続的にでも続けることが、不安を抱いてしまう人を減らすことにつながるのではないか、と考えます。
 換言するなら、情報リテラシー、ネットリテラシーなどと言われるものの向上をはかる、ということです。

2023年04月07日

イルカやクジラの集団座礁と地震

 2023年4月3日(月) 10:26付で、"【速報】約30頭のイルカが海岸に打ち上げられる 5頭が死んでいるのを確認 千葉・一宮町" といったニュースがありました。
(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/412066?display=1)

 今回も、この集団座礁と地震とを結びつけるコメントがネット上に見られます。
 なかには、2011年の東日本大震災前や同年2月のニュージーランドの地震前もそうだった、といった書き込みもありました。
 この件については、地震との関連性は考えにくいことを、2022年08月30日付のブログ "【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(3) クジラ" で説明しています。
(https://dfir-lab.info/posts/post31.html)

 今回の集団座礁は、東日本大震災前の茨城県(鹿島灘に面する海岸)より南、九十九里海岸の南端あたりのようです。鹿島灘に面する海岸同様に、ここも遠浅と考えていいようです。

 過去のデータを調べますと、2006年2月22日に、いすみ市岬町太東海岸でカズハゴンドウ 2頭、2006年2月28日は長生郡一宮町東浪見(トラミ) でカズハゴンドウ 67頭の集団座礁が記録されています。
 地震はどうでしょうか?
 政府の地震調査研究推進本部「2006年の主な地震活動の評価」(https://www.jishin.go.jp/evaluation/seismicity_annual/major_act_2006/)によりますと、
 3月27日、日向灘 M5.5 最大震度5弱
 4月17日頃~、伊豆半島東方沖の地震活動 最大M5.8(21日) 最大震度5弱(30日)
 6月12日、大分県中部 M6.2 最大震度5弱
 11月15日、千島列島東方 M7.9 (津波を観測)
の4つの地震がでてきます。

 場所的には4月17日頃からはじまった伊豆東方沖の地震活動が最も近くなります。しかし、集団座礁からは2ヶ月近く後になります。
 それでも、この67頭の集団座礁は伊豆東方沖の地震活動の前兆だったかもしれない、と考える人はいるでしょう。
 両者は無関係と言い切ることはできません。一方、カズハゴンドウ 67頭が集団座礁した段階で、伊豆東方沖で4月半ばに顕著な地震活動がある、と予知した人もおそらくいません。
 「2006年2月28日・長生郡一宮町東浪見・カズハゴンドウ67頭の集団座礁」といった情報から、「伊豆東方沖で4月半ばに顕著な地震活動」を読み解くことは、まず不可能です。2011年の茨城県での集団座礁でも同様のことが言えます。

 イルカやクジラの集団座礁に限らず、いつもと違う何らかの出来事があると「地震の前兆では?」と考えたがる人がいます。しかし、その出来事から、具体的な地震の日時・場所・規模を精度良く言い当てる(地震予知)ことは、まずできないでしょう。地震が起きて、はじめて具体的な地震と関連づけようとするわけです。決して地震前ではありません。

 イルカやクジラの集団座礁は、少なくとも現時点では、実際の防災・減災に役立つ情報にはなり得ない、と言えます。

2023年04月03日

巨大地震の啓発活動の難しさ

 3月4日にNHK総合にて「南海トラフ巨大地震」のドラマが放映されました。
 マグニチュード8.9 の巨大地震が、西日本を中心に大きな被害を及ぼす想定です。また、地震発生当日から一週間後までが描かれ、割れ残りとされる東側で大きな地震が発生したところでドラマは終了していました。

 普段からの備え(備蓄や家族での安否確認の方法など)や避難訓練の大切さ、津波の恐ろしさなどを周知させるには、このようなドラマは助けになるでしょう。
 一方、ネット上ではドラマ終了後から「なぜ原発が描かれていないの?」といった疑問の声が多く上がっていました。
 「原発は安全です」と描いても、「原発で事故です」としても、批判は大きかったのではないでしょうか。そこで、NHKはいずれも描かなかった、と推測しています。

 15日には “NHK記事が”炎上”…津波訓練で小学生が高齢者を誘導「巻き添えになる」と批判→町「狙いは高齢者の意識アップ」”(https://maidonanews.jp/article/14861723)といったネット記事がありました。
 高知県黒潮町で開かれた津波の避難訓練がSNS上で批判を浴びた、というのです。
 黒潮町は子供たちに、自らの命を第一に守りなさい、と伝え、必ず高齢者を助けに向かうよう教育しているわけではない、と説明しています。編集の仕方や受け取り方もあって、「真意が伝わらず不本意」と話したとのことです。

 南海トラフ巨大地震は、仮に発生したなら、国家存亡に関わるような、極めて深刻な被害が発生するだろうと予想されています。
 東日本大震災では直接的な被害がない地域でも、燃料(ガソリン)等の物資不足などにより、これまでの日常がなくなったところがありました。南海トラフ巨大地震では、東日本大震災以上に影響は広範囲に、そして大きなものになるでしょう。
 こうした危機感は、先日のドラマでは伝わらなかったと思います。
 
 また、南海トラフ地震ばかりに注目が集まると、直接的な被害が見込まれない地域の人たちにとっては、「自分のところは大丈夫」といった安全情報になってしまう恐れがあります。首都直下も日本海溝や千島海溝の地震もあります。それだけでなく、日本には至る所に活断層が走っています。あなたのまちにも活断層があるかもしれません。そうした内陸の活断層の切迫度を正確に推し量るのは難しいので、「いつ起きてもおかしくない」と考え備えをするべきです。

 国民の命を守るための啓発活動は、これをやっていれば大丈夫といった万能なものはなく、毎回アップデートさせながら、絶え間なく続けるしかない、と考えています。

2023年03月18日

トルコ・シリア地震でも出てきた人工地震説

 大きな地震が発生すると、必ずと言っていいほど「人工地震説」が出てきます。
 この地震は自然に発生したものではなく、誰か(なんらかの組織等)が人工的に発生させた地震といった説です。2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)のときもありました。

 「地震の24時間前にトルコから大使を引き揚げた」国名リストが“人工地震説”で拡散、誤情報に注意 公開 2023年2月15日 Kota Hatachi 籏智 広太 BuzzFeed News Reporter, Japan
(https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/turkey-earthquake-debunk)といったネット記事もありました。

 人工地震は、例えばどこかの国が地下核実験を行うと、その地震波が各国で観測されます。また、地下構造を調べるために、爆薬を使って人工地震を発生させることもあります。

 このように、人工的に地震を発生させることは実際にあります。
 爆薬を使って発生させた人工地震と、自然の地震との違いは地震波に現れます。
 自然の地震はP波とよばれる比較的速度が速いP波(縦波)と、それに続く大きな揺れとなるS波(横波)が観測されます。一方、人工地震ではおもにP波が観測され、すべての観測点でP波初動が押し波として観測されるなどの違いがあります。

 今回の地震については、日本ファクトチェックセンター(JFC)が2023年2月11日付で“ファクトチェック:「トルコ地震は人工地震」という言説は誤り”
(https://factcheckcenter.jp/n/n0479b0d24c48)といった記事を掲載しています。

 また、2022年3月16日に最大震度6強(マグニチュード7.4)を記録した福島県沖の地震については、NHKが取り上げています。
 「人工地震ではありません」 専門家が解説 2022年3月17日 21時55分
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220317/k10013538631000.html)
 この記事では、震源の深さまで人類は掘ることができていない事実も挙げています。

 地震雲や動物異常行動などは、科学的には明らかになっていないところがあります。
 一方、人工地震説は少し調べればオカルト的な話であることがわかります。
 はたして、どれだけの人が人工地震説を信じているのか?またなぜ信じるのか?知りたいところです。

2023年03月03日

トルコ・シリア地震前とされる鳥の異様な行動

 ニューズウィーク日本版が配信した「【動画】トルコ大地震の前の不気味な鳥の群れ、地震予知した?猫カフェの猫たち......」 2023年2月9日(木) 16時29分 の動画を確認しましたが、これが地震前の映像であることを確かめることはできませんでした。
(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/post-100824_1.php)

 多くの鳥が夜空を舞っている場面から動画は始まっています。その後、多くの鳥が木々にとまりました。
 この動画には場所や時間の情報が見当たりません。
 動画には地震の揺れも確認できないので、おそらくは(仮に地震で揺れた場所だったとしても)地震発生後に動画を撮り始めたのではないかと思われます。
 また仮に地震の前から撮り始めたのであれば、揺れを感じないほど震源から離れた場所で撮られたものと推測されます。

 このような動画を引用して「地震前、鳥の群れの異様な行動」などと記事にするメディアに唖然とします。
 また、鳥の群れが木にとまったり、一斉に木から飛び上がったりする光景は、日本でもしばしば目にします。何が「異様な」行動なのかがわかりません。

 この記事には続きがあり、2018年6月18日大阪北部地震の際、大きな揺れが来る前に猫が騒ぎ出した動画が載っていました。
 これは、確か和歌山で撮られた動画で、P波と呼ばれる大きな揺れより先に到達する初期微動に反応したものと考えられます。
 すでに、このことは多くの人が知っていることかと思います。それを「地震予知した?猫カフェの猫たち」などと紹介するメディアに、また唖然としてしまいました。

 日本版は翻訳されたものなので、原本と思われる英語版を確認してみました。タイトルは以下になります。
"Fact Check: Does Turkey Earthquake Video Show Birds Acting Strange Before?"
(https://www.newsweek.com/fact-check-turkey-earthquake-bird-video-viral-1779767)

"Fact Check: Does Turkey Earthquake Video Show Birds Acting Strange Before?" を直訳すると
「真偽チェック:トルコ地震のビデオは(地震に)先立つ鳥の奇妙な行動を示しているか?」
ぐらいになるでしょう。ところが日本版では
「トルコ大地震の前の不気味な鳥の群れ、地震予知した?猫カフェの猫たち......」
です。

 日本版のタイトルは英語版とはだいぶ違っています。
 また、英語版には日本語版にある猫カフェの動画は見当たりません。

 そして、英語版では最後に "The Ruling"(判決文)が示されています。この動画の真偽については、"Unverified"(未検証:はっきりしない)と結論づけています。その理由として、この動画の撮影場所や日時が確認できなかったことなどを挙げています。
 ところが、こうした内容は日本語版には見当たりません。

 以上のことから、日本語版だからといって、原本に忠実なわけではなく、むしろかなり異なった内容を紹介していたことがわかりました。
 newsweek.com と www.newsweekjapan.jp は似て非なるものと考えた方が良いかもしれません。ひとつ勉強になりました。

2023年02月20日

トルコ・シリアの地震と怪しい雲 (3)

 2月10, 11日付ブログに引き続き、トルコ・シリアの地震と怪しい雲を取り上げます。
 前回、ヤフーコメントでは、気象学者で雲研究科の荒木健太郎氏の「ない」と否定する断定口調を批判する書き込みが多く見られたことを紹介しました。

 今一度、荒木氏のツイートを眺めてみましょう。
 「何度でも言いますが、雲は地震の前兆にはなりません」「巷で『地震雲』と呼ばれることの多い雲は全て気象学で説明できる子たちで、雲の見た目から地震の影響等を判断するのは不可能です」

 確かに、雲が地震の前兆現象だったことを明確に示した事例はない、と言っていいでしょう。
 などと言うと、「阪神・淡路大震災前に見られた渦巻き上の雲は?」といった質問がくるかもしれません。あの雲は地震雲か?とも言われていますが、推測の域を出ていません。また、他の疑わしい雲もみな後付けで「だったかもしれない」と言われているに過ぎません。

 荒木氏が言うように、雲の見た目から地震の影響等を判断するのは、まず不可能です。などと言うと、今度は「私は雲で予知してきた」と主張する人が出てくるかもしれません。以前、そのような方に「ではこれから先、あなたの予知情報をすべて私に教えてください。」というと、その後の連絡が途絶えてしまいました。

 雲の形状や出現方位、時間などの情報から、再現性のある地震予知情報を導き出すことは、まず無理でしょう。
 だいぶ前のテレビ番組になりますが、どこかの大学の研究室が地震と地震前に見られた雲とのあいだに、何らかの法則性のようなものがある、と主張していたことを覚えています。
 しかし、その後この話は途絶えてしまいました。学術論文での発表もなされていないのではないかと思います。

 昨年の3月に、東京と大阪でボラが大量死し、その直後に福島県沖で最大震度6強地震がありました。このボラ大量死を、東京から約300kmも離れている地震の前兆とする書き込みがネット上で散見されました。

 このことは、異常ともいえる現象に出くわすと、たとえその後の大地震が遠く離れた場所であっても、両者を関連づけてしまう人が少なからずいることを示しています。そして、今回のトルコ・シリアの地震についても同様のことが起こったといえます。

 雲と地震の関係について、いらぬ反発を招かずに、読者に冷静に(客観的に)判断してもらうには、どのような表現がふさわしいのでしょうか?

 例えば以下のような言い方ではどうでしょう。
 「雲を見て地震を予知することはまず無理でしょう。」「現に今回の雲をみて、700km以上離れた場所で2月6日にマグニチュード7.8の地震が起こるといった人は誰もいませんでした。」
 「ただし、科学的に解明されていない事実が隠されているかもしれません。雲で地震が予知できる方がいましたら、ぜひご連絡ください。」

 雲が地震の前兆になり得ることについて、科学的な検証に耐えうる客観的なデータがあるなら、それは大変興味深いことです。

2023年02月15日

トルコ・シリアの地震と怪しい雲 (2)

 2月10日付ブログに引き続き、トルコ・シリアの地震と怪しい雲を取り上げます。
 今回は、気象学者で雲研究科の荒木健太郎氏がツイッターで「雲は地震の前兆にはなりません」といった意見を発したことに対するネット民の反応についてです。

 Yahoo!ニュース2023/2/7(火)18:39配信「トルコ大地震で目撃“地震雲”の正体に気象学者・荒木健太郎氏「雲は地震の前兆にはなりません」」日刊スポーツ(https://news.yahoo.co.jp/articles/13d78990595cf5e0d3ba0228b46c16f11608df44)の内容を以下に引用します。
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 続く投稿でも「何度でも言いますが、雲は地震の前兆にはなりません」と強調。「巷で『地震雲』と呼ばれることの多い雲は全て気象学で説明できる子たちで、雲の見た目から地震の影響等を判断するのは不可能です」と断言し、(後略)
---------------------

 このような荒木氏の話に対する読者の反応を、ヤフーニュースのコメントから探ってみます。
 荒木氏の発言を理解し擁護するコメントがある一方で、批判的なコメントも多々ありました。

 批判的なコメントで目立ったのが、「なぜ “ない” 言い切れるのか?」といった内容に関連したものです。
 「雲の見た目から地震の影響等を判断するのは不可能です」といった荒木氏の意見に私も同意しますが、Yahoo!ニュースの読者には、この断定口調がむしろ、“非科学的” と感じたようです。
 断定口調を “非科学的” と感じた点は理解できます。ただし、「ない」ことの証明は、悪魔の証明などと言われることもあり困難です。

 そのようなことから私は、ある事象と地震との間に関連性が見いだせなかった場合、「防災には役立たない情報」といった言い方をしています。

 今回の件でも、赤みを帯びた雲を「怪しい」と思ったところで、それが 700 km 以上離れた場所の 18日後の マグニチュード7.8 の地震を予知できる情報にはなり得ません。
 この雲から「いつ」「どこで」「どの程度の」地震が発生するのかといった情報を読み取ることは、おそらく誰にもできないでしょう。
 仮に、これがいわゆる地震雲だったとしても、事前避難による人命救助といった、現実的な防災には何の役にも立ちません。

 断定口調による「否定」については、私も以前に当時の上司から注意されたことがあります。
 言い方に気をつけないと、反発を招くことがあります。

 いわゆる地震雲は、ネットを見ますと、毎日のようにどこかで見られています。そして、小さい地震を含めれば、日本どこかで毎日地震は発生しています。
 地震雲が仮にあったとしても、それを事前避難を促すような防災情報として活用することは、まず無理でしょう。

2023年02月11日

トルコ・シリアの地震と怪しい雲 (1)

 2月6日未明にトルコとシリアの国境付近を震源とするマグニチュード7.8の地震が発生しました。
(https://www.usgs.gov/news/featured-story/magnitude-78-earthquake-nurdagi-turkey)
 日本時間10日朝の時点で、死者は2万人を超えていると報道されています。

 さて、この地震が発生する前の1月19日朝に、トルコ・ブルサ県に赤みを帯びたレンズ雲が現れました(下写真)。

写真:https://forbesjapan.com/articles/detail/60364 より

 写真元のフォーブスジャパンによれば、「複雑な地形に強い風が吹き、空気中の水蒸気が交互に圧縮、減圧され、その結果、その下にある地形を反映したような形状に凝縮された」ときに出現するとあります。また、赤色については、「日の出の瞬間かそれに近い時間に撮られた」ため、赤みを帯びたとあります。朝夕の空の色は、朝焼けや夕焼けを想像するといいかもしれません。

 しかし、ネット上では、この雲が地震の前兆だったという、いわゆる地震雲説が出てきました。予想していた通りです。
 残念なのは、それを紹介するネット記事です。

 2023/2/7(火) 18:39 日刊スポーツ配信の記事では、気象学者で雲研究科の荒木健太郎氏がツイッターで「雲は地震の前兆にはなりません」としたことを中心に紹介しています。単に、他人のツイートを紹介しているだけです。
 マスコミとしての自覚があるなら、記者自身がもう少し調べて記事にすべきです。
 下図は、この雲が発生した場所と、今回の地震との位置関係です。

図:https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/us6000jllz/map?historic-seismicity=true&shakemap-intensity=false に加筆

 上図が示すように、雲が発生したブルサ県と震源となったガジアンテプ県カフラマンマラシュは、直線距離で 700km以上あります。
 仮に、ブルサ県の雲がカフラマンマラシュの地震の前兆だったとするなら、日本でいえば、東京の地震の前兆が東京ではなく、広島県や愛媛県、北海道南部などで見られたことに相当します。

 こうした、ちょっと調べればわかるようなこともせずに、他人の言動を横流しするだけで記事にしてしまう、マスコミ(といっていいのか?)情報が、ネットにはあふれています。
 このような事実を認識することも、ネットリテラシーのひとつといえるでしょう。

2023年02月10日

地震発生確率の長期評価をどう考えたらよいか

 1月13日、政府の地震調査委員会は、大地震が今後起きる確率を予測する長期評価の最新版(算定基準日2023年1月1日)を公表しました。
https://www.static.jishin.go.jp/resource/evaluation/long_term_evaluation/updates/prob2023.pdf
https://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/ichiran.pdf

 マス・メディアもこの件を報道しています。例えば、産経新聞から活断層に関する記事を紹介すると「活断層の地震では、岐阜県から三重県に延びる養老-桑名-四日市断層帯のM8程度の地震では、30年以内の確率が昨年のほぼ0~0.7%からほぼ0~0.8%に上昇した」とあります。
(https://www.iza.ne.jp/article/20230113-QYJAHSYHGNJXDATFAVDZMDC4QI/)

 おそらく多くの人にとっては、地震の発生確率が0.7%から0.8%に上昇したことに、特別な意味を見出すことは難しいでしょう。「そもそも0.7%とか0.8%って、警戒する必要ないんじゃないの?」って考えるのが普通ではないかと思います。

 活断層の大地震は発生間隔が非常に長いため、確率で表すと低い値になってしまいます。
 これでは一般市民に地震の切迫度が伝わらないないため、地震調査委員会は2016年熊本地震の後にランク分けの評価も示すようになりました*1)。
 Sランクが相対的に最も危ない活断層で、Aランク、Zランクと続きます。Xランクは地震発生確率が不明な活断層になります。
 しかし、ランク分けであっても、SランクよりZランクの安全、などと安心情報にならないとも限りません。

 私は地域防災で講演する際に「発生確率は参考程度に」とお話ししています。
 発生確率に使われる平均活動間隔は、例えば、(熊本地震の)布田川断層帯・布田川区間のように、8,100年~26,000年程度と大きな幅(1万年以上など)がある場合があります。言い換えれば、誤差が1万年以上もあるということです。人の一生(せいぜい100年)を考えたら、とてつもなく長い誤差になります。
 したがって、近隣に活断層があったなら、(発生確率は考えずに)いつ地震が発生してもおかしくない、といった心構えで対策するようお話ししています。

 加えて、現在知られている活断層以外にも、日本には発見されていない活断層があり、日本中どこでも地震が起こりうると考えた方がよい、といったこともお話ししています。

*1) 熊本地震の発生時点で、布田川断層帯(布田川区間)における今後30年以内の地震発生の確率は、ほぼ0~0.9%でした。
この表現では、「防災を担う自治体担当者や一般国民に、正しく危険性を伝えられていない」、「あたかも降水確率を見るかのように、「起こらない確率」が高く見えてしまい、かえって安心情報になっている」などの指摘を国会や報道などから受け、表記が見直されました。
(https://www.jishin.go.jp/main/seisaku/hokoku16j/sg60-5.pdf)

2023年01月27日

日本地震予知学会の学術講演会に参加

 12月23,24日に京都大学で開催された日本地震予知学会第9回学術講演会に参加してきました。
 秋の日本地震学会は大学での講義の関係で参加することができず、今年は最初で最後の学会参加となりました。

 私は「海鳴りと地震・津波」といったタイトルで発表しました。講演後に参加者の方から有益なアドバイスや耳寄りな情報をいただきました。

 地震前兆的な海鳴りは本当にあるのか?今のところ、数少ない過去の証言があるだけです。
 地震があると、後になって「そういえば」と、例えば、「カラスが騒いでいた」とか「怪しい雲を見た」などの話が出てきます。しかし、地震がなくてもカラスが騒ぐことも、怪しい雲が出ることもあります。
 したがって、そうした現象が実際の防災に役立つ情報になり得るか否かを判断するには、分母となる数をまずは把握する必要があります。

 分母の数が少なければ、その現象が見られた場所の近くで発生した顕著な地震との相関を調べることになります。
 分母の数が多い場合は、単純に相関を見ても判断が難しいです。しばしば発生するある2つの出来事どうしで相関を調べると、それらが全く無関係であっても相関あり、になってしまうことがあります。
 そこで、(分母の)数が多い現象の場合、例えば「怪しい雲を見た」などを種類分けしてみるのが、次なるステップとして考えられます。その際には客観的な基準が求められます。

 海鳴りについては、以前から興味を抱いていたものの、分母となる海鳴りを観測する手立てがありませんでした。
 ところが最近、"インフラサウンド・モニタリング・ネットワーク"という、一般財団法人日本気象協会が防災・減災への取り組みの一環として行っているインフラサウンド(微気圧振動)データの公開サイトの存在を知りました。
 インフラサウンドとは、人の耳に聞こえる可聴域よりも低い領域の低周波音になります。その波源には津波も含まれ、東北地方太平洋沖地震の津波に起因するインフラサウンドを日本気象協会が捉えていたことが、"インフラサウンド・モニタリング・ネットワーク"に繋がったようです。

 ホームページ(http://micos-sc.jwa.or.jp/infrasound-net/observed/)上では、誰でも各観測点のデータ(グラフ)を見ることができます。ただし、データをダウンロードするには会員になる必要があります。そこで、私も先日申請をして会員になりました。

 海鳴りは一般的に、沖の荒れた天候によって生じた波浪が、崩れる際に出す大きな音とされています。地震とは関係なく、海鳴りをインフラサウンドで観測することはできるのか?まずはこの検証から実施したいと考えています。

2022年12月26日

津波襲来を知らせる海鳴り

 一般的に海鳴りは、沖の荒れた天候によって生じた波浪が、崩れる際に出す大きな音といわれています。それが厚く低い雲と海面に反射して、沿岸まで伝わると考えられます。そして、雲が厚ければ厚いほど、音は大きく聞こえる傾向にあり、最大10km以上伝わるとされています。

 津波の際にも海鳴りが発生することがあります。気象庁ホームページには、津波波高が3メートルを超えると発生する「前面が砕けた波による連続音」を海鳴りとしています。
(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq26.html)
 また、海外のサイト(https://www.tsunami.gov/?page=tsunamiFAQ)でも、“Natural tsunami warnings include strong or long earthquakes, a loud roar (like a train or an airplane) from the ocean” 「自然が教える津波警報には、強くて長い地震の揺れや海から聞こえる大きな轟音(電車や飛行機のような音)がある」と、海鳴りと考えられる現象が紹介されています。

 こうした地震発生後の津波襲来を知らせた海鳴りの報告例としては、1896年明治三陸地震と1933年昭和三陸地震があります。いずれの地震でも津波襲来前に、沖合から大砲の砲撃のようなドーン、ドーンといった音響があったとの証言が残っています。
 1933年昭和三陸地震のときは、事後に中央気象台などが各地で音響聴取状態を調査しています。砲声のようなこの音響は、青森県、岩手県、宮城県の各地で確認されました。また、この音響の正体が何だったのかについては、結局不明のままでした(吉村, 2004)。

 1933年昭和三陸地震については、津波襲来を知らせる“海鳴り”の存在を後世に伝える碑文が残っています。青森県八戸市館鼻公園にある震嘯災記念の碑文に、「地震 海鳴り ほら津浪」と記されています(http://sekihi.minpaku.ac.jp/spots/view/40)。地震発生→海鳴り→津波襲来、と海鳴りが津波襲来を知らせるものであることを示しています。

 では、2011年東北地方太平洋沖地震ではどうだったのでしょうか。今のところ、津波襲来直前の大砲の砲撃のような音響があったとする記録を見たことはありません。
 昭和三陸地震などで聞かれた砲声のような音響の正体とともに、2011年東北地方太平洋沖地震における津波襲来前の同様の音響の有無についても、今後の調査対象となります。

2022年11月28日

昭和南海地震と海鳴り

 11月5日は「世界津波の日」です。2015年12月の国連総会において制定されました。日本ではこれに先立ち、東日本大震災後の2011年6月に「津波防災の日」に制定しています。
 ではなぜ、11月5日なのでしょうか。これは、嘉永7(1854)年11月5日に発生した「安政南海地震」に由来します。津波から村人の命を救った話「稲村の火」は、この地震津波を題材にしています。

 今回は津波の日にちなんで、1946年昭和南海地震にまつわる話を紹介します。ソースは、磯田道史著『天災から日本史を読みなおす』中公新書 になります。
 文化勲章も受賞した俳優の森繁久彌さん(故人)は、徳島県海陽町でこの地震に遭遇しています。その体験談がこの本に載っています。
 地震のあった夜、森繁さんは宴の最中に地鳴りのようなものを感じました。そして、二、三度周囲の人に「地震じゃないの?」と尋ねましたが、「ありゃァ、海鳴りですよ」と軽く片づけられた、と『森繁自伝』にはあるそうです。そして後日、この海鳴りは地震の前触れだったと解釈したようです。

 大地震前の海鳴りについては、2022年10月17日のブログ【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(5) 海鳴りとキジ、でも取り上げました。
 今回の森繁さんの回想録から推測されることは、海鳴りは、実は数多く発生しているのではないか、ということです。
 明記されてはいませんが、「ありゃァ、海鳴りですよ」と返答したのは、おそらく地元の人でしょう。深刻に捉えていなかったということは、海鳴りは時々あるもので、何か不吉な出来事の前触れのようなものではない、と思っていたから軽く片づけたのではないでしょうか。

 もうひとつ、森繁さんは、もしかしたら、海鳴りをこのとき初めて体験したのかもしれません。地元の人にとっては珍しくない現象(ここでは海鳴り)も、それを初めて体験した人にとっては、そして大地震と大津波があったなら、その現象は異常な出来事で大地震・大津波の前触れと思ってしまうかもしれません。
 人の一生はせいぜい100年です。地震という人類が誕生するはるか昔からある自然現象のことを、たった100年ぽっちの個人的な体験から解釈しようとすること自体、無理があるのではないでしょうか。

2022年11月07日

【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(5) 海鳴りとキジ

 ”気仙沼で起きた東日本大震災前日の異変”(http://inorinowa.org/yochibousai/yochibousai-10.html)には、2011年9月1日付河北新報の記事が転載されています。

 東日本大震災の前日3月10日に、宮城県気仙沼市波路上地区の住民が、激しい海鳴りとキジの鳴き声を2回ずつ聞いていました。この地区では経験的に海鳴りの後にキジが鳴くと地震があるとされています。
 3月10日午前7時半ごろに海鳴りがあり、続いてキジが鳴きました。また、同日午前10時半ごろにも同様のことが起きました。以前、海鳴りの後に地震を経験したある住民は、地震が来ると身構えていたそうです。しかし、地震はなく「こんなことは初めて」と不思議に思った、とあります。一方、震災当日の11日は、海鳴りもキジの鳴き声も聞かなかったそうです。

 「キジが鳴くと地震が起きる」といった言い伝えは、日本各地に残っています。だからといって、上記の「海鳴り→キジが鳴く」が本震(3月11日)の前兆だったとは断定できません。

 この記事からは、3月9日の地震前に「海鳴り→キジが鳴く」があったかどうかが不明です。3月9日の地震は3月11日の前震とされていますが、マグニチュード7.3と大きな地震でした。過去に「海鳴り→キジが鳴く」が、どの地震の前にあったのかも不明ですが、仮に同等の規模の地震であったなら、3月9日にも「海鳴り→キジが鳴く」があってもおかしくありません。

 この記事では、過去に「海鳴り→キジが鳴く」を経験した住民が、過去に何回、どの地震でそれを経験したことがあるのかの情報もありません。ただし、ネットで拾うことができたこの情報は原本ではないので、河北新報の原記事を確認する必要があります。

 この前兆だったかもしれない出来事は、不明な点が多いものの興味深いものではあります。海鳴りにキジが反応して鳴いた可能性も考えられます。また、海鳴りはどの程度頻繁に発生するのか?キジの鳴き声はどの程度頻繁に発生するのか?「海鳴り→キジが鳴く」はどの程度頻繁に発生し、その後に地震が起きたケースと起きなかったケースはどの程度あったのか?海鳴りのメカニズムはどのようなものなのか?など、いろいろと興味が尽きません。

2022年10月17日

【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(4) ナマズ

 2011年3月24日付の東奥新聞に「1月、やなに連日ナマズ 東日本大震災の前兆?」といった記事があります。

 八戸市北部を流れる五戸川で2011年1月、サケ採捕用のやなに連日多くのナマズが掛かっていたとのことです。年明けからやなを撤去する1月中旬まで、ほぼ毎日、多い日には20匹程度のナマズが掛かったそうです。担当職員の話では「30年以上従事しているが、あんなに多かったのは見たことない」とのことでした。仲間と「大地震が来なければいいが」と話していたそうです。

 やはりナマズは地震を予知していた!と思う方もいるかもしれません。過去30年間で初めての出来事なので、異常現象と言ってもいいかもしれません。また、やなの設置終了に伴い1月中旬で記録が途絶えていますが、続けていたならナマズ捕獲も継続していたかもしれません(あくまで想像です)。

 ただし、気になる点がいくつかあります。ひとつは「あんなに多かったのは見たことない」といった証言です。この言い方だと、毎年やなにナマズは掛かっていると読み取ることができます。量の大小の問題となると、過去にもそれなりに多くのナマズが掛かっていたことがあったが記憶には残らず、今回は東日本大震災という大きな地震があったため、記憶に鮮明に残った可能性、つまり、人のバイアスが掛かっていた可能性が否定できません。
 次に、ナマズ異常行動の情報は青森県八戸市の五戸川だけ、といった点です。マグニチュード9.0といった巨大な地震の前兆であるなら、もっと広範囲でナマズの異常行動が見られているべきではないか?といった疑問です。

 ナマズは広範囲に生息しています。それなのになぜ、五戸川の異常しか情報がないのか?
 五戸川のナマズ異常行動が東北地方太平洋沖地震の前兆だったかどうか、この記事だけでは判断できません。他にナマズの前兆的な異常行動なかったのか、さらなる情報が欲しいところです。

2022年10月10日

【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(3) クジラ

 今回は3つの事例の最後「クジラ」について考えてみます。

 読売新聞の記事(2011年7月2日夕刊13ページ)によりますと、震災一週間前の3月4日、茨城県鹿嶋市の海岸で、小型クジラのカズハゴンドウ54頭が打ち上げられました。
 そして、同様の現象が同年2月のニュージーランド・カンタベリー地震(マグニチュード6.1、死者185名)の前にもあったと紹介されています。地震の数日前に同国南西部の島で107頭のゴンドウクジラが打ち上げられました。

 カズハゴンドウ54頭の打ち上げは、本震の一週間前、前震の5日前と時間的に近いです。場所は震源からは少し遠い茨城県ですが、地震の規模(マグニチュード9.0)が非常に大きいので、震源から遠くても異常が現れたと考えられなくもありません。

 この件については、織原・野田 (2015) で検証していますが、結論から言えば両者には関係がない、と考えるのが妥当です。
 カズハゴンドウ54頭が打ち上げられた鹿島灘に面する海岸では、過去にも何度か集団でクジラやイルカが打ち上げられていました。2001年1月から2011年3月までに6回ありました。そして、その6回は全て2月〜5月に起きていました。
 鹿島灘は遠浅でクジラなどが一度海岸付近に迷い込むと外海へ脱出しにくい地形であることや、集団打ち上げの発生が春あたりに集中していることから、仮に自然現象が原因であったとしても、それは地震ではなく別の現象(海流の変化など)と考えた方が合理的です。

 実はこの話には後日談があります。
 2015年4月10日、同じ鹿島灘に面する海岸でカズハゴンドウ156頭が打ち上げられました。2011年3月と同じ場所で、同じカズハゴンドウが、今度は前回よりも100頭以上多く打ち上げられました。
 この事件はワイドショーでも取り上げられ、コメントを求められたので、過去に何度もあった出来事で地震との関連は考えにくい、といった主旨の説明をしました。事実、この後に3.11同等の巨大地震は発生しませんでした。

 もうひとつ、2011年2月のニュージーランド・カンタベリー地震について付け加えます。
 2011年2月22日の地震は余震で、本震は2010年9月4日に発生しています(マグニチュード7.0)。また、2011年6月13日にはより大きな余震(マグニチュード6.3)が発生しています。しかし、それらの前にクジラやイルカの集団打ち上げがあったとの情報は見当たりません。
 ニュージーランドについても、過去にどれだけ集団打ち上げがあったのか、客観的なデータから地震との関連を考察する必要があります。

2022年08月30日

【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(2) カラス

 【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(1) に引き続き、今回は「カラス」について考えてみます。

 読売新聞の記事(2011年7月2日夕刊13ページ)によりますと、宮城県石巻市で震災当日の午前1時50分頃、公園で普段暮らす3倍近い約50羽のカラスが、すごい鳴き声をあげながら飛び回っていたとのことです。5年間で初めての経験だったとのことです。

 地震前にカラスが騒いでいた、といった話はよく耳にします。では、ことわざではどのように言われているのでしょうか。
 『災害予知ことわざ辞典』(大後美保, 1985)には、
 ・カラスが早口で鳴く時は地震あり 各地
 ・地震のあとカラスの宿る森でカラス鳴かざる時は続けて地震あり 各地
の2つが載っています。
 他に、消防庁が収集した防災に関わる「言い伝え」では、
 ・地震が起きる前には、スズメ・カラス等の鳥がいなくなる 富山県小矢部市
 ・カラスが騒ぐと、地震が来る 宮崎県串間市
がありました(https://www.fdma.go.jp/publication/database/item/database009_02_02.pdf)。

 意外なことに、「地震前にカラスが騒ぐ」といった言い伝えは全国各地にあるわけではなかったようです。

 一般的にカラスの繁殖期は3月〜7月頃になります(https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-1b/01.pdf)。
 そして、繁殖期は警戒心が高まり鳴くことがあるようです(https://rescue.epark.jp/brands/sharing/害鳥/2257)。また、カラスは起床時間が早いため、午前0時頃に起きる個体もいるようです(https://meetsmore.com/services/harmful-animal-removal/media/112127#:~:text=夜中巣に近づかれ,て仲間を呼びます。)。

 このようなことを考慮すると、3月の午前2時頃にカラスが騒いだ原因は、地震とは関係ない別の理由だった可能性も浮上してきます。

 カラスはいつ騒いでいるのか? Yahoo!リアルタイム検索により「カラス 地震」で過去1週間(8/13-8/22)を調べてみました。すると、毎日日本のどこかでカラスが騒いでいたり、カラスの大群が見られていたりしていました。
 ほぼ毎日、日本のどこかでカラスが騒いでいたり、大群が出現したりしているようです。一方、地震については、小さいものを含めれば、日本周辺で毎日発生しています。

 しばしば起きる出来事どうしを比較する場合、その中でも数が少ない出来事に着目するとわかりやすくなることがあります。 今回の例でいえば、発生数が少ない大きな地震に着目し、その前に見られたカラスの異常行動が、他の時期の異常行動と区別できる特徴を有しているか?を調べることです。
 震源により近い場所でより多くのカラスが騒いでいた、騒いでいるカラスの数がいつもよりはるかに多かったなど、同じカラスの騒ぎであっても、客観的に異なると判断できる行動が大きな地震前のみに見られるかどうかを調べることができれば、少なくとも、カラスの騒ぎが大地震発生の注意を促すような情報になりうるか否かを判断することができます。

 ただし、そのためには毎日のカラス定点観測データが必要になります。
 であるなら、上述した3.11前のカラスの事例は5年間の定点観測になるのでは?と考える人がいるかもしれません。残念ながら人の記憶はあいまいで、印象に残らなかったことは忘れてしまう傾向があるため、客観的なデータとはいえません。それでも、興味深い話ではあります。

2022年08月23日

【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(1) トンビ

 大地震の前に動物がいつもと違う振る舞いをしていたとする話は、地震の後によく耳にします。
 2011年3月11日東日本大震災(マグニチュード9.0)の前にも、動物に異変があったとする話はあります。今回は読売新聞の記事(2011年7月2日夕刊13ページ)にあった内容について考えてみます。

 この記事では「鳥」と「クジラ」を取り上げていました。「鳥」はカラスとトンビになります。今回はトンビの異常行動について考えてみます。
 記事では、3月11日午前10時から正午頃、宮城県石巻市で数十羽のトンビが上空で激しく争うように飛んでいたとのことです。本震は午後2時46分ですから直前の出来事といえます。

 「空飛ぶ鳥の姿が全く見えなくなる時には地震あり」各地
 「天空に飛び交い舞遊ぶ鳥類の姿が見えなくなると地震あり」福島県飯坂
 上記の2つは、『災害予知ことわざ辞典』(大後美保, 1985)に書かれている鳥類に関することわざです。トンビそのものに関わることわざはありませんでしたが、「天空に飛び交い舞遊ぶ鳥類」といった表現は、トンビにも当てはまるのではないかと思われます。
 いずれも普段見られる空飛ぶ鳥が地震前には姿を消すといった内容です。しかし、3.11前のトンビの異常行動とされるものは「姿を消す」ことではなく、普段よりも目立つ行動でした。ことわざとは全く異なる行動といってもよいでしょう。

 言い伝えられてきたことわざが必ず正しいとは限りません。例えば「海底の魚が、浮き上がるは、地震の前兆」といった深海魚出現と地震との関連を示唆するような言い伝えがあります(足助の諺調査部会, 1981)。しかし、1928年から2011年までの事例を調べた結果、深海魚出現から一ヶ月以内に半径100km 範囲内でマグニチュード6.0以上の地震が発生したケースは一例しかありませんでした(Orihara et al., 2019; 織原, 2019; 織原, 2020)。

 3.11前のトンビの異常行動については、過去の言い伝えには見当たらなかった行動です。もちろん、ことわざにないから地震に無関係とは言い切れません。しかし、トンビが上空で喧嘩することもあるでしょう。そのような状況を初めて見たとしても、それは個人の非常に限られた経験のなかのことです。トンビが上空で激しく争うように飛ぶことが大地震の前だけに見られる現象かどうかは、この記事の情報だけではわかりません。

 地震前の動物異常行動とされる行動が、どれだけ珍しい現状なのか?単に地震前に見られた珍しい現象を取材するだけではなく、今後は普段(地震前ではないとき)にはどれだけ見られる現象なのかまで、是非とも取材して欲しいものです。

2022年08月16日

田代島の猫と3.11(東日本大震災)

 田代島は、宮城県石巻市に属する小さな島で、多くの猫が島民と共に暮らす猫の島としても知られています。
 東日本大震災から約1年後の現地調査で、この島も訪れようとしましたが、アクセスがまだ不便な上、日程の調整がつかず断念してしまいました。

 3.11前に猫の異常行動は見られたのか?とりあえず、ネット検索で情報を探してみました。
 残念ながら、地震前兆の可能性がありそうな異常行動(宏観異常現象)の情報を見つけることはできませんでした。

 しかし、猫たちは地震の後すぐに島の高台へ逃げたとのことです。ただし、少数の猫は津波の犠牲になってしまったようです(現在URLアクセス不可)。
 また、2011年3月9日の前震(マグニチュード7.3)でも、約 50cm の津波があったそうです。この時、港にいた一部の猫が地震直後に海に向かって叫んでいるような動画があります。今も閲覧可能です(https://www.youtube.com/watch?v=5f-6XXgGe6s)。

 もしかしたら、3月9日に「地震の大きな揺れ → 津波」を経験した猫が学習し、3月11日のより大きな揺れの際に津波の到来を予測したのかもしれません。

2022年08月09日

7月4日に「南海トラフ巨大地震」“予言”

 7/4(月) 13:10配信のヤフーニュースに、『未来人を称する「南海トラフ巨大地震」“予言”が不安広げる 気象庁「日時と場所を特定した地震予知情報はデマ」』といった記事がありました(https://news.yahoo.co.jp/articles/aa7f8e8aa86e10f44a917e6d3cc7348ac7fd8c2c ソースは https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2207/04/news075.html)。また、2022年7月3日から7月4日にかけて、Twitterでは「南海トラフ」がトレンド入りしたそうです。
 
 ヤフーコメント欄には、「こういうデマを拡散したくないのであれば、記事すら載せない方が良い」とする意見がありました。
 掲載した側からすれば、Twitterで「南海トラフ」がトレンド入りしたぐらい注目度があったので、記事にしたのかもしれません。しかし、Twitterにトレンド入りする文言など数えきれないほどあります。それらすべてを記事にすることなどは無理でしょう。であるならば、コメントにあったように、「記事すら載せない」といった選択肢もあるはずです。
 人の不安を駆り立てる地震予言のたぐいは、デマと思いつつも関心を持ってしまう人が少なからずいます。だから、今回のようにネットニュースとして取り上げられているわけです。取り上げる側からすれば、一定数の関心を引くネタと認識しているでしょう。

 続いて、7/5(火) 10:30配信のヤフーニュースには、『「南海トラフ大地震」予言デマ騒動 不安あおった自称「2054年の未来人」の動機は?識者が分析』が掲載されました(https://news.yahoo.co.jp/articles/c5fc3b3a157f4101c23619bd1e9c150e100193af ソースは https://www.j-cast.com/2022/07/05440954.html)。この記事では、自らの予知能力を信じている者もいるとしています。

 自分は「地震が予知できる」と信じている人は確かにいます。しかし、「検証したいので、データをお示しください」とお願いすると、そこで話が終わってしまいます。過去にそうした経験をしたことがあります。
 おそらく、こうした人たちは、自分には地震を予知できる力がある、といった自らの姿を保ち続けること自体を大切にしているのではないかと考えています。
 上記 7/5(火) 10:30配信の記事では、「犠牲者を減らすべく『親切心』で情報発信を行っているのでは」としていました。仮にそうであるなら、本当に人命救助に役立つ情報なのかどうか、その検証を拒む理由はありません。しかし、検証を拒むということは、自らの像を保ち続けたいといったことが優先されている、と考えた方が合理的なのではないでしょうか。

 地震予知に関する情報を流す人は、愉快犯であったり、自分は地震が予知できると本気で信じていたり、人命救助を建前にした単なる金儲けであったり、といろいろあります。
 避難行動を促せるような確度の高い地震予測(予知)は、少なくとも現時点ではできません。したがって、気象庁も言っているように「日ごろから地震に対する備えをする」ことが、私たちにできる防災ということになります。

2022年07月05日

ボラの大量死は地震前兆か?

 東京新聞から「東京と大阪で同時期にボラが謎の大量死 新月での大潮が酸欠招いた?」といった記事が、5月8日に配信されました。
(https://www.tokyo-np.co.jp/article/176053)

 記事によりますと、3月6日に東京都大田区の呑川で体長12~13センチのボラを中心に約1000匹が死んでいるのが見つかりました。また、大阪市では、3月7日と8日に大阪城に近い平野川と第二寝屋川で、体長約20センチのボラ約7500匹が死んでいるのが見つかりました。
 その後、3月11日に兵庫県南東部を震源とするマグニチュード(M)4.2の地震(最大震度3)、3月16日には福島県沖で M7.3 の地震(最大震度6強)が発生しました。

 東京と大阪のボラ大量死は、これらの地震の前兆ではないか?といった話がネットで広がっていました。
 この件について、東京新聞からコメントを求められました。

 ボラの大量出現や大量死は、春にニュースになることがよくあります。
 ボラと地震との関連をデータに基づいて調べたことはないので、はっきりしたことは言えないものの、今回の件は、しばしば発生する春のボラ大量死の後に、たまたま目立つ地震があったから、これらを結び付けようとしたのではないか、とお答えしました。
 こうした関連づけは人間の心理的な作用(本性)によるものの可能性が考えられます。
 
 今回はたった2事例ではありますが、ボラ大量死の後に地震がありました。しかし、地震を伴わなかったボラの大量死はこれまでにもありました。さらに、ボラの大量死が先行して発生していない地震は、相当数あります。

 何かの出来事と別の何かの出来事との関連性を考える場合は、以下に示す4つの場合(四象限の窓)について、それぞれがどの程度の頻度で起きているのかを考える必要があります。(ボラ大量死と地震を例に)

 前兆ではないか?という今回のネット情報は、① だけを取り上げています。
 地震はマグニチュードが1小さくなると、桁違いに発生数が増えます。
 3月11日に兵庫県南東部で発生した地震程度の規模(マグニチュード4)であれば、日本周辺で年間900個程度発生しています(2001〜2010年の気象庁地震データより)。このことを考慮すれば、②ボラ大量死なし&地震ありのケースが非常に多くなることが容易に想像できます。

 今回のネット上のうわさは、1日平均2回程度発生する出来事に対して、別の出来事がたまたま場所と時期が2回連続して重なったに過ぎない、と考えるのが妥当かと思います。

2022年05月16日

予測的中を宣伝する記事

 4月30日のYahoo!ニュースに "4月19日の福島県地震が的中…「麒麟地震研究所」が捉えた「M8超」級の前兆ノイズ" といったタイトルの週刊誌記事が掲載されていました。
 元の記事は SmartFLASH (https://smart-flash.jp/sociopolitics/180146) になります。

 年に数回、いくつかの週刊誌が「地震の予測的中!」と銘打った記事を掲載し、それがネットにも流れます。
 結論から言えば、こうした記事はすべて煽り記事のたぐい、もしくは有料地震予測情報を読者に買わせるための宣伝記事に過ぎません。

 本当に地震との関連が示唆される先行現象であるなら、それは査読付き学術論文で発表されるべきものです。
 発表する場所が学術論文や日本地震学会などではなく週刊誌であることから、「安易に信用すべき情報ではない」と判断するのが賢明です。

 今回の記事には、2011年3月11日東日本大震災の2日前3月9日14時30分ごろに大きな電磁ノイズがあり、それが3.11の前兆、とありました。実は、3月9日11時45分ごろに前震とされるマグニチュード(M)7.3の地震が発生しています。しかし、この地震前に電磁ノイズはなかったようです。

 4月19日に福島県で発生した地震はM5.4(暫定) と、2011年3月9日の地震(M7.3)よりもかなり小さい地震です。
 地震のマグニチュードは1違うとそのエネルギーは約32倍、2違うと1000倍にもなります。
 規模(マグニチュード)のより大きな地震では前兆がなく、それよりかなり小さな地震で前兆あった、というのも説得力に欠けます。

 また、マグニチュードが1小さくなると、その発生数はおよそ10倍に増えます。
 日本周辺で発生するM5クラスの地震は年間120個程度ありますが、M7クラスだと2個程度と極端に少なくなります(2001〜2010年の気象庁地震データより)。
 地震予知は本来めったに起こらない大きな規模の地震を当てなければならないのに、それをハズし、しばしば発生する規模の小さな地震を当てたと言われても、これまた説得力がありません。

 さらに、2011年3月9日の電磁ノイズについては、本震の前兆と考える前に、このマグニチュード7.3の地震による何らかの影響による可能性を考察すべきでしょう。

 こうした記事は、地震などに予備知識のない読者を煽るものに映ります。
 もし、あなたが地震のことをあまり知らない場合、まずは、その情報の出所や大元の発信源はどこなのか?その出所(発信源)は信用できるのか?について考えることをおすすめします。

2022年05月09日

津波避難と地震予知

 "「津波避難タワー」費用負担が課題…「高齢者にはきつい」建設しても使われないケースも"
 (https://news.yahoo.co.jp/articles/e8422b65a723b1ffc7541df359254d84862fe149)
といった読売新聞オンライン記事(2022/4/6付)を目にしました。

 2011年東日本大震災以降、全国で500棟近くの津波避難タワーが建設されましたが、階段を登るのは高齢者にとってはきついため、実際にお年寄りの命を救う手段になり得るか疑問があるとのことです。
 これに対してヤフーコメント欄には、「若者の命が助かるならタワー必要」、「高齢者は別の対策を考えるべき」、「弱者保護は道徳的観点から理解できるが・・・」などの意見がありました。

 「津波てんでんこ」は、三陸地方にある言い伝えで、地震が来たらてんでんばらばらでも、とにかく(津波から)逃げて自分の命は自分で守れ、といった意味とされています。
 若者と高齢者の避難を別々に考えている前述のヤフコメは、この津波てんでんこに通じるものがあると考えます。

 いつ・どこで・どの程度の地震が発生するのかをほぼ100%の確率で言い当てる、いわゆる地震予知は少なくとも現時点では不可能です。それでも地震予知研究が必要な理由として、「予知でなければ救えない命がある」といわれることがあります。
 津波到達前に避難タワーに登り終えない高齢者などの命は、確かに地震を予知して発生前に安全な場所に移動させれば助けることができます。

 しかし、地震予知研究が進んだとしても、次の南海トラフや首都圏直下などの大地震までに、100%確実な地震予知はできないでしょう。それでも、例えば「30%程度の確率で起きる」といった言い方ができるようになるかもしれません。
 ただし、こうした不確実な情報を実際の防災に活かすには、空振りや避難解除後に地震が発生する場合もあることなどについて、市民の理解と同意が必要になります。
 地震予知研究は理学的な真理探究に加え、それを実用化するための工学的要素、さらに社会学や心理学などの要素もからんできます。

2022年04月11日

人工地震や地震兵器を信じてしまう心理

 先週3月16日に発生した福島県沖を震源とする地震(マグニチュード7.4)について、SNS上では「人工地震だ」という投稿があり、ツイッターでも一時トレンド入りしたとのことです。
 これに関して、NHKが専門家に聞いて人工地震を否定する記事を出しました。
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220317/k10013538631000.html)

 もしかしたらNHKが記事にするほど、近年では「人工地震」や「地震兵器」といったオカルト情報がSNSを賑わしているのかもしれません。

 この地震の後に「地震雲」に関するツイッターの書き込みを見ると、やはり急増していました。大きな地震の後に書き込みが急増する傾向はいつものことです。ここでは「地震雲はありません」と否定する書き込みも急増しており、オカルト論の火消しが行われます。
 今回のNHKの記事はおそらくSNS上の火消しに役立ったでしょう。

 しかし、ちょっと考えれば荒唐無稽だとわかるトンデモ説をなぜ信じてしまうのでしょうか。
 これについては、"人工地震を信じる人々が映す「陰謀論」深刻な浸透 「情報の民主化」は「偽情報の民主化」でもある" (https://toyokeizai.net/articles/-/540520)に書かれていることが参考になります。
 わたしたちにはあらゆる現象の背後に行為の主体を見つけようとする心性が備わっているとのことです。例えば、木の枝が折れていたり、物陰から音がしたりといった周囲の環境の変化に、敵や捕食者などの知的な行為者の存在を直観することで、それが勘違いであったとしても生存戦略として有効だったために強く機能しているというのです。
 これは人類が進化の過程で獲得した認知バイアス一つといえるでしょう。

 このような心理そのものを消し去ることはできません。しかし、そうした心理が人間には働くということを認識できれば、トンデモ説を安易に受け入れる防波堤になるかもしれません。

2022年03月22日

三陸大津波がそう遠くない将来に起こる可能性

 2011年3月11日、東日本大震災(死者・行方不明者:約1万8千人)
 1933年3月3日、昭和三陸地震(死者・行方不明者:約3千人)
 1896年6月15日、明治三陸地震(死者・行方不明者:約2万2千人)

 東日本大震災は地震による揺れも大きかった(最大震度7)ですが、昭和三陸地震と明治三陸地震は揺れは、最大震度5強程度だったと考えられています。この2つの地震は、揺れの割に津波が大きかった点が共通します。

 単純にこの3つの津波地震の発生間隔をみると、東日本大震災と昭和三陸地震は78年、昭和三陸地震と明治三陸地震は37年しかありません。三陸地方では100年にも満たない間隔で津波地震が発生しています。昭和三陸地震と明治三陸地震では40年を切っています。

 先日、"「慶長の大津波」東日本大震災規模だった 三陸沿岸北部-中部、東北大チーム調査"、2022/2/26(土) 6:00配信 河北新報
(https://news.yahoo.co.jp/articles/b12a94da5c70d06e460f2e73de87c0babcb0ae9a)の記事を目にしました。
 1611年の慶長奥州(三陸)津波が三陸沿岸北部-中部では東日本大震災の津波に匹敵する巨大津波だった、とのことです。
 東日本大震災発災直後は、貞観津波(869年)以来1000年に1度の巨大津波と言われました。その後、享徳にも大津波(1454年)があったのではないか、となり500年に1度と言われるようになりました。
 しかし、今回の調査結果は享徳津波の157年後にも三陸地方を巨大津波が襲っていたことを示しています。

 三陸地方を襲う巨大津波は周期的ではなく、昭和三陸と明治三陸の間隔が37年しかないことも考慮すると、次に三陸地方を襲う巨大津波はそう遠くない将来なのかもしれません。

2022年03月16日

『私が見た未来』完全版を見て

 2021年8月9日付のブログ「富士山噴火予言は煽り(あおり)記事か?」で、8月20日「富士山噴火説」を取り上げました。この予言の元ネタは漫画『私が見た未来』(たつき諒著, 朝日ソノラマ1999年刊・絶版)でした。
 昨年秋にこの本が完全版として復刊しました。これを読むと、煽り記事で当たったとされる予言以外に、ハズしている予言がいくつか紹介されていました。著者自身はどうも富士山噴火はハズした予知夢と考えているようです。したがって、昨年の8月20日富士山噴火説は、読者が勝手に想像を膨らましたものと考えるのが妥当でしょう。

 さて、この完全版を読んだ限りでは、予知夢がどの程度当たっているのかを評価できるだけの情報はありませんでした。一次資料といえる予知夢を書き込んだノートを見ないことには何ともいえません。
 また、この本にはこれから先の予言も書かれていました。それは、太平洋上で大地震か大噴火かが起こるといった予言です。詳しいことをここで書いてしまうと問題があるので、興味のある方は是非とも『私が見た未来』完全版をご覧ください。以下に、その予言を読んで私が感じたことを記します。

 1月15日にトンガ沖で海底火山の噴火がありました。その際にこの予言を思い浮かべました。ただし、時間も場所も規模も予言とは大きく異なるものでした。
 海底火山の噴火については、現在の科学でも「ここに海底火山がある」といった事実を示し、それが仮に大噴火を起こした場合の被害想定などは、ある程度できるでしょう。しかし、ハワイのようなホットスポットとよばれるものが、いつ・どこで新たにできるかまではわからないかもしれません。マントル全体(約2900km)の変動を扱うプルームテクトニクスについて、私自身もっと勉強すべきと感じています。

 予言は非科学的なものです。地震や火山噴火を予言することは、場合によったらニセ科学になります。また、それでお金儲けをしていたなら詐欺(サギ)科学になってしまいます。しかし、非科学的といわれる予言などのなかには、ごく稀にですが、科学的な検証をする価値があるものが含まれていると考えています。

2022年02月22日

巨大地震や破局噴火、不安をあおる記事

 ニュースで取り上げられるような地震や火山噴火があると、人は不安な気持ちになるものです。そうした不安な気持ちにつけ入るかのように、さらに恐ろしい将来を描く記事が必ず出てきます。
 それを注意喚起ととらえて、自らの防災状況を確かめる機会になるなら意味ある記事といえるでしょう。しかし、不安な心理につけ込んで、地震予測などの有料サイトをさりげなく紹介している記事には注意が必要です。

 さらなる大地震や大噴火の予測に関することを記事にしているなかに、有料予測サイトなどがさりげなく宣伝されている場合があります。記事を書いたマスコミと有料予測サイトとの直接的な関連はないようですが、「次に危ないところはここだ!」などとあおればその記事は注目され購買数が増えます。一方、記事内で紹介された有料予測サイトは有料会員の新規獲得につながります。このように、記事にするマスコミと有料予測サイトは WinWin の関係にあります。

 そもそも、いつ・どこで・どの程度の大きさの地震が発生するのかを、確度高く予測することは(少なくとも現時点では)できません。火山噴火については「どこで」はわかっていますが、それでも予測していないところから噴火(2018年1月23日の草津白根山の噴火)する場合もあります。
 こうした事実を理解していれば、「次に危ないところはここだ!」などと煽る記事がうさん臭いものだと気づきます。そして、そこで紹介されている有料予測サイトも当然うさん臭いものと理解できます。

 不安をあおる週刊誌やWeb記事には気をつけましょう。

2022年01月31日

トンガ沖の海底火山噴火から人知を考える

 1月17日といえば真っ先に1995年の阪神・淡路大震災を思い浮かべます。しかし、今日は15日に発生したトンガ沖の海底火山噴火とそれに伴う津波について触れてみたいと思います。

 火山噴火による津波といえば、日本では島原大変肥後迷惑といわれた1792年の山体崩壊による津波があります。これは、島原地方(今の長崎県)に位置する眉山が山体崩壊して、その土砂に一気に有明海に流れ込むことで生じたものです。しかし、日本にも押し寄せた今回の津波(人によっては潮位変化と言っています)は、海底火山の噴火によるものなので、これとは発生メカニズムが異なります。
 今回のようなメカニズム(現時点ではどのようなものなのか不明)による津波は、少なくとも近代的な観測以降はないといえます。気象庁も津波の予測が出しづらかったことと推測します。

 さて、ここで私が思ったことは、やはり人類は地球のことを知り尽くしてはいないということです。どの程度知っているのかも、はっきりと答えることはできないでしょう。
 "Save the Planet"(地球を救おう)など、まさに驕り高ぶった人類を象徴しているように思えてなりません。また、高レベル放射性廃棄物の処分について、10万年先のことまでわかっているかのようなことを言う人さえいます。
 人は地球によって生かされている存在です。地球がなければ誰も生きていくことはできません。一方、今この瞬間に全人類がいなくなったとしても地球は存在し続けます。人が地球を守っているのではなく、人は地球に守られているのです。そのことを認識しなければ、持続可能な社会の実現は難しいのではないかと考えています。

2022年01月17日

地震予知研究のあり方 (2)

 地震予知の前提には「地震は自らの大きさを(発生する前から)知っている」といった仮定があります。でなければ、地震予知の三要素のひとつ「どの程度の大きさ」を示すことはできません。先行現象の強度や、その現象がどの程度の範囲まで観測されたかで「どの程度の大きさ」の地震になるかを見積もろうといった考え方です。
 地震は震源付近の揺れが大きく、それが四方へ減衰しながら伝わっていきます。大きな地震ほど震源付近の揺れが大きく、遠くまで揺れが伝わっていきます。先行現象も同様に、震源付近ではその強さなどが大きく、震源から離れるほど弱くなるといった考え方です。こうした先行現象を観測することにより、「どこで」「どの程度の大きさ」の地震が発生するのかを言い当てることができる、といった仮説です。「いつ」については経験的に見積もるか、あるモデルから見積もるかになります。

 しかし、「地震は自らの大きさを(発生する前から)知っている」については、それを否定する研究結果があります。例えば、地震の揺れのはじまりを細かく観測してみても、小さな地震と大きな地震に違いがないといったことです。最初の破壊が大きいから大地震になるわけでないということです。
 もうひとつ、揺れ始めた場所(破壊が始まった場所)と最も大きく揺れた場所(最も大きく破壊された場所)とが一致しないといった観測結果です。地震がどこまで成長するのかは発生してみなければわからないということです。

 これに対しては、小さな破壊が次から次へと連鎖して大きな破壊、大地震に成長するためには、その場所が広範囲にわたっていつでも壊れる状態にある、と考えることができます。こうした広範囲にスタンバイな状態であるときに見られる特有の現象を見いだすことができれば、大地震の予知に一歩近つくことになるでしょう。
 しかし、それを見いだせていないのが、今の地震予知研究の現状です。

2022年01月04日

日本地震予知学会の学術講演会に参加

 12月25日(土)に日本地震予知学会の第8回学術講演会が、会場とリモートの合わせた方式で実施されました。
 私は「これからの地震予知研究に関する一考察」といったタイトルで発表しました。昨年はコロナの影響もあり、自分の研究を進めることがほとんどできませんでした。そこで、今回の発表では地震予知研究のあり方について、自らの過去の研究結果も踏まえて、今一度考え直してみました。
 理化学研究所在籍時、地震に先行する地電位差異常シグナルを見つけて予知ができるようになると期待をもって研究を進めていましたが、話はそう簡単ではありませんでした。確かにポジティブな結果もあります。例えば、伊豆諸島の神津島では地電位差異常と島近傍で発生した地震との関連性が示唆されました。ただし、マグニチュード3といった小さな地震も含まれたものでした。警戒宣言が出せるレベルの実用的な予知に使えるものではありませんでした。また、昔からの言い伝えとされていた地震前の深海魚出現については、むしろ両者の関連性を否定するような結果となりました。
 こうした実用的予知には役立たない結果、ネガティブな結果は研究者としては好ましくないものです。ですから、自説に都合のいい結果のみを見せて、あたかも予知できるかのように振る舞う人もいます。しかし、そのような行為はゆくゆくは自らの、そして予知研究のコミュニティ全体に悪影響を及ぼすことになります。一方、ネガティブな結果であっても、それを研究成果として示すことは、研究者だけでなく予知研究コミュニティ全体の信頼につながるものになるでしょう。

 地震前兆現象の候補を消す作業も大切なことである、とあらためて思った次第です。

2021年12月28日

地震予知研究のあり方 (1)

 「関東で地震」、「山梨で地震」、「和歌山で震度5弱」など、最近地震が多いと話題になることがあります。そして、週刊誌などでは「首都直下地震」や「南海トラフ巨大地震」、「富士山噴火」で不安を煽る記事が次々とでてきます。しかし、警戒宣言を出せるような確度の高い地震の予測、つまり地震予知はできないのが現実です。ですから、私たちはいつ起きでもおかしくないといった心構えと準備が必要になります。

 さて、科学的な予知ができないのになぜ研究を続けるのでしょうか。
 1880年に世界初の地震学会を日本に創始したジョン・ミルンは「地震学が研究されるようになって以来、その学徒の主要な目的の1つは、地震の到来を予言 (foretell) する何らかの方法を発見することである」と述べ、地震予知の研究が地震学の重要な課題であることを説いています(泊, 2013)。日本では地震学の草創期から地震予知を目指していたということです。

 しかし、いつ・どこで・どの程度の大きさの地震が起きるのかを事前に100%の確率で言い当てること(地震予知)ができないなら、予知研究はどこに向かっているのでしょうか。
 ひとつは、いつ・どこで・どの程度の大きさといった地震予知の三要素について、確率で示すといったことです。
 ある現象が観測された場合、いつ・どこで・どの程度の大きさの地震が発生するのかを、可能性として確率(パーセンテージや割合)で示します。この確率が偶然起こるよりも高い場合は、地震に先行して観測される"ある現象"が前兆現象である可能性が示唆されることになります。そして、地震に先行する現象と地震との間の物理的因果関係を示すことが最終目的になります。ただし、そこまでいかなくとも、相関関係が示されれば実用的な予知手法になる可能性はあります。現在進められている地震予知研究の多くはこれでしょう。
 もうひとつは、動物異常行動で見られる研究手法になります。動物がどのような外からの刺激に反応して異常行動を示すのかを実験などから明らかにしようとするものです。ただし、この場合は外的刺激(においや音、電磁気など)が地震の前兆現象であることを示さなくてはなりません。そうなると、ひとつめの手法により、少なくとも相関関係のある外的刺激となる現象を見出す必要があります。

 となると、まずは前兆現象といえる地震に先行する現象を見つけることが地震予知研究の本筋といえそうです。実は、これは上田(2001)が唱えていたことになります。

2021年12月20日

御坊市で震度5弱、市庁舎の耐震化は?

 12月3日午前9時半ごろ、紀伊水道を震源地とするマグニチュード5.4の地震が発生しました。震源に近い和歌山県御坊市では震度5弱を観測し、市庁舎の窓ガラスが割れるなどの被害がありました。
 御坊市庁舎は、2010年の耐震調査で震度6以上の地震で倒壊する恐れがあると診断されました。現在、新市庁舎を今の市役所のすぐ隣にある土地に建設中とのことです。

 市役所や町村役場は地震などによる災害が発生すると、通常はその対策本部が置かれる場所になります。災害時、市役所や町村役場は住民への対応窓口になるため、非常に重要な役割を担うことになります。しかし、その庁舎が被害にあい、災害対応に支障をきたした事例は過去にもありました。
 ところが、こうした市町村の庁舎耐震化や建て替えなどが後回しになってしまっていたケースを私も直接目にしたことがあります。
 東日本大震災以前のことです。ある東北地方の市へ視察に行った際、市庁舎が非常に古かったので、耐震化のことを質問しました。すると「市民からは市役所より先にやることがあるだろう、と言われる」といった返答をいただきました。

 市町村の庁舎があまりに立派すぎるのも問題がありますが、災害時のことを考えると、耐震化や建て替えを優先することも必要かと思います。庁舎が洪水や津波の浸水域内にある場合は、より安全な場所への移動も可能ならば考えるべきでしょう。
 住民感情を汲み取りつつも、必要な耐震化や建て替えなどは優先されるべきであり、そのことを住民に理解してもらう努力が地方行政には求められます。

2021年12月06日

観測網設置が早ければ北伊豆地震は予知できたのか?

 先日、興味深い記事が Yahoo News にありました。
「地震予知に初めて成功しそうだった91年前の北伊豆地震」饒村曜気象予報士 11/26(金) 4:04
(https://news.yahoo.co.jp/byline/nyomurayo/20211126-00266497)

 1930年11月26日伊豆半島北部の丹那盆地でマグニチュード7.3の北伊豆地震が発生しました。死者・行方不明者は全国で272名にもなりました。この地震はまた、丹那断層が動いたことで当時建設中だった丹那トンネルが直線でつながらなくなってしまったことでも知られています。
 この地震では前震が顕著でした。気象台は十数日続く群発地震の様子を見て危険性があると判断しました。そこで、震源地を囲む韮山、三島、湯河原、網代の4か所に臨時の観測網を設置することを決め、26日朝に観測機を持っていく準備をしていました。しかし、地震はその直前26日午前4時3分ごろに発生しました。

 この Yahoo News 記事では「口惜しがる気象台 大地震を予知して準備中にこの災厄」(昭和5年(1930年)11月27日の東京朝日新聞)といったタイトルの、当時の新聞記事が紹介されています。
 果たして、臨時の観測が開始されていたなら、北伊豆地震は予知できたのでしょうか?
 地震予知とは、いつ・どこで・どの程度の大きさの地震が起きるのかを、予め確実に言い当てることです。
 「どこで」については、群発地震があった北伊豆地方ということで当てられたでしょう。
 「どの程度」については、確実なマグニチュードまでは示していませんが「大地震」と言っています。
 「いつ」についてはどうでしょうか?結論からいえば、言い当てられなかったことになります。十日以上続いていた地震活動で、臨時観測開始直前に地震が発生してしまったわけですから、「いつ」は当てられなかったことになります。
 では、臨時観測を行っていれば予知は可能だったのでしょうか?
 臨時観測が数日早かった場合を仮定してみます。警戒情報などが発表されていたなら、数日後地震があったので「予知成功」といわれたかもしれません。一方、そうした発表がなかったなら「失敗」といわれたでしょう。

 今日でも、前震は本震発生後に「前震だった」といわれるレベルです。しかし、小さな地震を大きな本震を伴う前震なのか、それとも小さな地震で終わってしまう地震なのかを区別する研究が進められ、興味深い結果を紹介した論文もあります。
 2011年東北地方太平洋沖地震では、2日前にマグニチュード7.3の地震がありました。2016年熊本地震では震度7の直下型地震が立て続けに発生しました。このような地震に対して将来、「これは本震ではない可能性がある」といえるようになれば、それだけでも(予知はできませんが)災害軽減につながる情報になるかもしれません。

2021年11月29日

ヤフーコメントから探る民間の地震予測を信じる理由、のタイトルで発表

 先週の土曜日(10月16日)、日本地震学会秋季大会の地震教育・地震学史のセッションで「ヤフーコメントから探る民間の地震予測を信じる理由」と題した口頭発表を行いました。今年もリモート開催の大会でした。

 本発表は、週刊ポストが年に数回記事にする「MEGA地震予測」に関するものです。MEGA地震予測とは、村井俊治氏が取締役会長を務める株式会社地震科学探査機構(JESEA)が配信する地震予測情報のことです。

 MEGA地震予測は、「ノイズをシグナルとしている」、「ハズした予測を後から当たりにしている」、「日本中が年中警告エリアになっている」などの批判が絶えないにも関わらず、有料会員は5万人ともいわれています。なぜ、これほど多くの人たちがそうした情報を購入するのか?別の言い方をすれば、どのような理由で信じているのか?その理由を知りたいと常々思っていました。


 今年の4月26日に、NEWSポストセブンからMEGA地震予測の記事が配信され、Yahoo!ニュースでも取り上げられました。Yahoo!ニュースには読者が投稿できる「コメント欄」があります。今回の研究では、このコメントをデータとして扱い、MEGA地震予測に対して、どのような理由から好意的もしくは批判的なのかを探ってみました。そして、その結果を先週の学会で発表しました。

 MEGA地震予測に好意的な理由は、「予測内容を信用」しているものが割合として最も多く、次いで「注意喚起の情報として容認」でした。この2つで8割以上を占めました。一方、批判的な理由は、予測エリアが広すぎる等から「当たって当然」とするものが約7割で最も多くなりました。次に、ハズした予測を後で当たったことにしている、当たった事例だけをアピールしている、など「予測成功を装うことへの批判」が1割強でした。
 好意的な理由として最も多かった「予測内容を信用」については、一見科学的にみえる手法の問題点を理解したり、絶対に当たる占いと同じ手法を用いていることなどに気づいたりすれば、現時点で抱いている信用が揺らぐかもしれません。しかし、「注意喚起の情報として容認」している人たちの中には、ハズレてもOK、と半ば信者的な人もいます。こうした人たちが自らの考えを変えるのは難しいかもしれません。


 MEGA地震予測については、以前、拙著『地震前兆現象を科学する』(2015年)のなかでも、過去情報(データ)を公開すべきだ、と主張しました。有料会員は将来のことが知りたくてお金を出しているわけですから、過ぎてしまった情報に価値はありません。したがって、過去の配信情報をそのまま公開しても問題はないはずです。しかし、いまだに過去のデータは公開されていません。これでは当事者や週刊誌などが宣伝するように、本当に予測が当たっているのかどうかを第三者が検証ができません。もしかしたら、過去の予測情報を公開すると、有料会員が減ってしまうことを恐れているのではないか?と勘ぐってしまいます。

2021年10月18日

千葉の地震、揺れの前に魚が・・・

 10月7日22時41分頃、千葉県北西部を震源とするマグニチュード(M) 5.9 (深さ 75km)の地震が発生しました。埼玉県川口市と宮代町、東京都足立区で震度5強を記録しました。
 そして、翌8日に国土交通省の荒川下流河川事務所がツイッターで地震発生時の映像を公開しました。江戸川区小松川の平成橋で撮られた映像には、魚や鳥が地震に反応している様子が記録されています。
https://twitter.com/mlit_arakawa_ka/status/1446343533342838786?ref_src
=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Etweet
https://www.huffingtonpost.jp/entry
/story_jp_6160f87de4b024dc52810fbc?utm_hp_ref=yahoo

 地震の揺れが来る10秒くらい前に川の魚が一斉に飛び跳ねていました。

 下の図は地震の初期微動(P波)及び主要動(S波)と震源からの距離の関係を表しています。一般的に P波は 5~7 km/s, S波は 3~5 km/s です。この図では P波 7 km/s, S波 4 km/s としています。


 魚が飛び跳ねたのは大きな揺れ(S波)が到達する約10秒前でした。また、震源が東京都江戸川区に近い千葉県北西部で、震源の深さが 75km だったことから、魚が飛び跳ねた平成橋付近から震源までの距離は 80~100 km 程度だったと考えられます。
 上の図から P波と S波の時間差が 10秒程になるのは、震源からの距離が 90km ぐらいのときです。このことを考慮すると、この魚の飛び跳ねは P波到達によるものと考えるのが妥当でしょう。魚がびっくりしたぐらいですから、この地震の P波はそれなりに大きかったのだと思います。

 そういえば、2018年大阪府北部地震の際に、和歌山県の猫カフェでも、揺れ(S波)到達前に猫が騒ぎ出した映像があった記憶があります。これもP波を猫が感知したものと考えられます。
 こうした動物の異常行動は、地震を事前に察知したかのように見えますが、そうではなく、初期微動(P波)に反応したものと考えるべきでしょう。

2021年10月11日

首都直下の想定地震が見直される可能性

 2013年に内閣府中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループがまとめた資料、"【別添資料4】首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)" によりますと、首都直下のM7クラスの地震を防災対策の主眼を置く、とされています。

 一方、相模トラフ沿いのM8クラスの地震 【大正関東地震タイプの地震(Mw8.2)】は、当面発生する可能性は低い(2120〜2320年頃?)ので、長期的視野に立った対策の実施、としています。また、大正関東地震よりも、さらに規模が大きい元禄関東地震(1703年、M8.5)規模のものは、2000〜3000年程度の間隔で発生すると考えられるため、さらに切迫性は薄れます。

図1 南関東で発生した地震(1600年以降、M>6.0以上)
中央防災会議, 2013, 【別添資料4】首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告) より


 これに加えて、M8クラスの海溝型地震として、大正関東地震で破壊されなかった元禄関東地震の震源域として、房総半島の南東沖、日本海溝の1677 年延宝房総沖地震も想定にあります。これらも当面発生する可能性は低いと考えられています。

図2 M8クラスの海溝型地震
中央防災会議, 2013, 【別添資料4】首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告) より

 ところが、先月 "1000年前「未知の巨大地震」が発生か、九十九里浜に大津波の跡" といった9月25日付のニュースがありました。
(https://www.yomiuri.co.jp/science/20210925-OYT1T50201/)

 産業技術総合研究所などのチームによりますと、千葉県の房総半島沖で1000年ほど前に未知の巨大地震があり、九十九里浜一帯が大津波に襲われた可能性があるとのことです。地震の規模はマグニチュード (M) 8.5〜8.8 と、かなり大きなものです。
 平安~鎌倉時代にこのような巨大地震と津波があったとの記録がないため、首都直下地震対策検討ワーキンググループでも当然ながら、このことは考慮されていません。したがって、M8クラスの巨大地震発生の可能性が、今後これまでよりも高く見積もられる可能性が出てきました。

 今回の産業技術総合研究所らの研究チームによる発見は、首都圏の防災を考える上で非常に重要な報告です。

2021年10月04日

大地震の事前注意の呼びかけ (2)

 南海トラフに加えて、千島海溝と日本海溝についても、巨大地震の事前注意呼びかけの検討を国が始めたことを「大地震の事前注意の呼びかけ (1)」で紹介しました。

 国は警戒宣言を出せるほど確実な地震予測(つまり地震予知)はできない、としています。しかし、本当に発生するかしないかわからないけど、観測データに異常が見られた場合には、事前に注意情報を出すとしています。
 地震発生の事前注意情報を出すといったことを、南海トラフ以外にも広げると言うのであれば、国にはそうした情報を出せる機関(または個人)を限定する法律も制定すべきではないかと思っています。

 気象に関しては、気象予報士以外が予報してはいけないと平成6年度の気象業務法の改正によって定められています。しかし、地震動と火山現象及び津波については、そのような制度がありません。こうした現状に対して、尾池他 (2018)※ は地震火山予報士の制度化を提唱しています。
 現在、民間企業や個人などが、地震予測(予知)情報を有料で配信しています。また、一部メディアが定期的にそれらを宣伝していることもあり、ある民間企業では有料会員が5万人とも言われています。

・地震の起きる地域には偏りがある。→日本は地震がたくさん起きる場所
・大きな地震は滅多発生しないが、小さな地震はたくさん発生している。→小さい地震は桁違いに数が多い
など、地震に関する少しの知識と、統計に関する少しの知識、さらに人の心理に関する少しの知識があれば、こうした地震予測の有料情報が、単なるゴミでしかないことを見抜くことができます。

 しかし、何万人ものひとがお金を出してゴミを買っているといった現状を考えると、これ以上騙される人をなくすためにも、国として、気象予報士のような制度を地震等についても設けてほしいと思ってしまいます。

※)尾池和夫・金田義行・北川源四郎・鳥海光弘・樋口知之(2018): 特集 地震予測の新しい考え方[座談会]地震予測と「第4の科学」データに駆動された新たなアプローチへ(後編), 科学, 8(86), 0563-0569.

2021年09月13日

大地震の事前注意の呼びかけ (1)

 去る8月19日、国が千島海溝と日本海溝の巨大地震について事前注意呼びかけの検討を始める、との報道がありました。
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210819/k10013211111000.html)

 異常な現象が観測された場合、住民などに注意を呼びかける仕組みとしては、「南海トラフ地震臨時情報」というものがあります。
 2017年、国の内閣府中央防災会議は「警戒宣言を前提とする確度の高い予測はできない」と、それまで唯一予知が可能とされていた東海地震に関しても「予知」の旗を降ろしました。そして、気象庁は同年11月から強制力を伴った東海地震の「警戒宣言」をやめて、「南海トラフ地震に関連する情報(定例と臨時)」を発表するようになりました。これにより、対象範囲は静岡県中心から南海トラフ全域に拡大した一方、強制力のない情報となりました。そして、令和元(2019)年5月31日から「南海トラフ地震に関連する情報(定例と臨時)」に替わって、「南海トラフ地震臨時情報」及び「南海トラフ地震関連解説情報」の情報発表を行うようになりました。

 「事前注意の呼びかけができるということは、やっぱり地震は予知できるの?」と思ってしまう人がいるかもしれません。予知とは、ほぼ100%の確率で、いつ・どこで・どの程度の大きさの地震が発生するかを言い当てることと考えればいいでしょう。こうした地震予知は、今の科学では不可能とされています。そして、国が既に実施している「南海トラフ地震臨時情報」や、今回の「千島海溝・日本海溝の巨大地震についての事前注意呼びかけ」は、100%ではないが従前よりは地震が発生する可能性が高くなったと考えられる段階で情報を発信するといったものです。ただし、予知ではないので、本当に発生するかどうかはわかりません。

 地震の揺れが収まる前に津波が到達してしまう地域に住む人々の命は、事前避難ができれば救うことができます。しかし、その避難が空振りに終わってしまう可能性もあります。また、避難してからしばらくたっても地震が起きず、家に戻ったら地震が発生した、といったシナリオも考えられます。こうした不確実性の高い情報を防災に活かすには、情報を発信する側(行政)と住民との信頼関係や、事前注意の情報などに関する住民の正しい理解が不可欠です。

 "「地震予知」の幻想―地震学者たちが語る反省と限界" の著者である黒沢大陸氏は、起きるかも知れないという不確かな(生煮えの)情報を提示し、役立たせる方法を考えようといった発想は、研究を役立たせることを優先させる研究者の論理、と言っています。そして、被害を減らすために何をやるべきか、住民視点での減災策から出発すべき、と主張しています。

 国には、こうした批判的な意見にも真摯に向き合い、不確実な情報の防災への活かし方を議論してもらいたいものです。

2021年08月30日

8月20日、富士山は噴火ぜず

 7月19日のブログで「8月20日、富士山噴火説」を取り上げました。8月20日に富士山は噴火しませんでした。
 この話題を取り上げた最近の記事を検索すると以下が見つかりました。

 "ネットで騒然「8月20日富士山噴火説」の真偽、火山学の専門家はこう見る" 8/17(火) 8:54配信 週刊SPA!
 (https://news.yahoo.co.jp/articles/96c272e3bafb2f3b8fe7d415bf37d9a7d2edabba)
 "「8月20日富士山噴火説」に備える人々。独自の対策マニュアル作成も家族の反応は" 8/17(火) 15:54配信 週刊SPA!
 (https://news.yahoo.co.jp/articles/c5fa406ca088070462ea654cf4013323ac5f3c0b)
 " “予言的中率9割!”の漫画が示す「8月20日富士山大噴火」の信憑性" 8月19日(木)18時0分 アサ芸Biz
 (https://news.biglobe.ne.jp/trend/0819/abz_210819_8718592424.html)

 もし、将来に起こる災いを事前に知ることができたなら、それから逃げるなり備えるなりして、生き延びようとするのは人間の本能的な行動なのかもしれません。ですから、こうした予言やそれを取り上げる煽り記事は、今後もなくなることはないでしょう。

 上記2番目の記事タイトルにあるように、今回の予言ではそれが成就した場合に備えた人がいたようです。実は、こうした備えの行動をとる人は、地震発生のうわさが世間に広まる地震流言(りゅうげん)とよばれる事象を調べると、必ずいたことがわかっています。

 2008年6月に山形で大地震が発生するといったうわさが中高生を中心に県内全域に広まりました。うわさの地震が発生した場合の備えの行動は、個人のみならず一部の学校や行政機関にも及んでいました。

 同じ2008年には、愛知県岡崎市を中心とした地域でも大地震発生のうわさが広まりました。軟弱な地盤の上に住んでいた住民のなかには、地震発生とされた日の前から市内のホテルに泊まった人がいました。また、市内のホームセンターでは、防災グッズが品薄になったとのことです。

 地震や火山噴火などの災害予言に対し、それを「注意喚起」として肯定的に受けとめる人がいます。なかには、そうした情報をお金を払って買っている人さえいます。たとえ月額200円や300円であっても、「大した金額じゃないから」と考える人が何万人もいたなら、騙す側にとっては実においしい商売になります。

 こうした有料情報を、半年間でもいいですからしっかりと記録に残して、それを後から見直してみることをお勧めします。すると、ほとんどいつも「危ない」と言っていたことに気づくと思います。災害はいつ起きるかわからないから常に備えておくように、といった注意喚起と何ら変わらないことを、もっともらしく言っていたに過ぎません。お金を払ってまでして得る必要のない情報だったことに気づくのではないかと思います。

2021年08月23日

日本各地が揺れていた安政年間

 前回(8月9日)のブログでは、安政年間に発生した南海トラフと首都直下地震が、現代に発生した場合の資産被害想定の話をしました。
 実は、安政年間の1854年〜1858年は、日本各地で大きな地震があったと記録されています。宇津徳治「地震活動総説」によれば、以下の地震がありました。
 1854年7月9日 マグニチュード (M) 7.3 伊賀上野地震, 死1,600人
 1854年8月28日 M6.5 八戸・三戸
 1854年12月23日 M8.4 安政東海地震, 死2000人
 1854年12月24日 M8.4 安政南海地震, 死1000s人
 1854年12月26日 M7.4 伊予西部・豊後
 1855年3月18日 M6.8 飛騨, 死12人
 1855年9月13日 M7.3 陸前
 1855年11月7日 M7.3 尾張・遠江(余震?), 死some
 1855年11月11日 M6.9 安政江戸地震, 死7,444人
 1856年8月23日 M7.5 三陸地方・松前, 死37人
 1856年11月4日 M6.3 江戸・立川・所沢,
 1857年7月14日 M6.3 駿河, 死8人
 1857年10月12日 M7.3 伊予・安芸, 死some
 1858年4月9日 M7.1 飛騨・越中・加賀[飛越地震], 死430人
 1858年7月8日 M7.3 青森・八戸
 1859年1月5日 M6.2 石見
 1859年10月4日 M6.3 石見(周布)
 さらに、1856年8月25日「安政3年の台風」で江戸は猛烈な暴風と高潮により、死者10万人ともいわれています。

 これら安政年間の1854年〜1858年(4年間)のことをまとめると、以下のようになります。
 ・M7クラス以上の地震は12回
 ・南海トラフ巨大地震の11ヶ月後に江戸直下地震
 ・江戸直下地震の8ヶ月後に三陸沖で大地震
 ・江戸直下地震の9ヶ月後に江戸に台風直撃
 これを現代に置き換えると、
 ・南海トラフ巨大地震の11ヶ月後に首都直下地震、その9ヶ月後に三陸で大地震、そして、その2日後には東京で風水害ということになります。それ以外にも南海トラフ巨大地震から安政3年の台風(東京で風水害)までの1年8ヶ月の間に、愛媛・大分でM7.4、岐阜飛騨でM6.8、宮城でM7.3、首都直下地震の4日前には愛知・静岡でM7.3 と、顕著な地震が多発したことになります。

 今現在、九州から関東にかけての太平洋側を中心に大雨による災害が各地で発生しています。そして、大雨が降りやすい状況は今週も続くとの予報で、さらなる被害が懸念されます。大雨災害に地震など他の災害が重なるといった、複数の災害が同時に発生する複合災害への対策も真剣に考えなくてはなりません。

2021年08月16日

安政年間の連続大地震が今起こったら・・・

 「日本を襲った過去の大地震 首都直下と南海トラフが連動したケースも」
 https://news.yahoo.co.jp/articles/6c64eb112cfc2a712c788cc48d0a5530d7bfe0b3
といったネットニュースがありました(8月6日配信)。

 1854年12月23日に安政東海地震 (M8.4) 、翌24日には安政南海地震 (M8.4) が発生しました。南海トラフの東側が最初に動き、その約32時間後に西側が動いた巨大地震でした。そして、翌年の1855年11月11日に安政江戸地震 (M6.9) 安政江戸地震が発生しました。宇津徳治「地震活動総説」によれば、死者は 7,444人 とあります。

 安政年間のように、次の南海トラフの巨大地震と首都直下地震とが立て続けに起こるかどうかはわかりません。仮に発生したとしたなら、それは国難というか国家存亡の危機になるかもしれません。

 土木学会が推計した向こう20年間の南海トラフ巨大地震と首都直下地震の資産被害は、
 ・南海トラフ巨大地震:1410兆円
 ・首都直下地震:778兆円
になります。ちなみに2018年度(新型コロナ禍前)の国の一般会計予算は97兆7128億円です。
単純に1年で換算すると
 ・南海トラフ巨大地震:70.5兆円(国の一般会計予算1年分の7割強)
 ・首都直下地震:38.9兆円(国の一般会計予算1年分の4割)
となります。この数字だけ見ても、国家存亡の危機といっても過言ではありません。

 次に来る南海トラフと首都直下の連動は仮定の話ではありますが、過去に実際あったことなので全くの空論ではありません。

 「仮定のことは考えない」菅義偉首相のもとで本当にそのようなことが起きたなら、国民にとって最悪の結果が待っていることだけは容易に想像できます。

2021年08月09日

富士山噴火予言は煽り(あおり)記事か?

 "8月20日「富士山噴火説」。的中率9割の予言書が明示する恐怖に抗う術は"
 https://nikkan-spa.jp/1767198?cx_clicks_art_mdl=3_title
といったWeb記事を目にしました。今年の8月20日に富士山が噴火するとの予言です。

 地震予言にも当てはまることですが、このような記事の「的中率9割」と、ライターが自信を持って提示できる理由がわかりません。ある地震予言では予言を出している本人の言葉として、それを紹介していました。当事者の言や他の記事に書いてあったことについて、裏取りもせずにセンセーショナルな語句を使った記事は、典型的な煽り記事(不安を煽る記事)と考えた方がよいでしょう。

 さて、8月20日「富士山噴火説」についてお話ししましょう。この予言は漫画『私が見た未来』(たつき諒著, 朝日ソノラマ1999年刊・絶版)に書かれた著者自身が過去に見た予知夢を再現した話のようです。当たったとされる具体例がこのWeb記事にも紹介されています。ちなみに、煽り記事は通常、当たったとされる事例のみを示すものです。

 この記事では的中率9割と主張していますが、そもそも的中率って何でしょう?的中率とは、矢や弾丸が的に当たる割合から、予測や予想などが当たる割合のことを指します。この漫画では的中率9割とのことですから、10の予知夢のうち9が当たったことになります。しかし、この記事にはそれを調べた(裏を取った)形跡がありません。そもそもこの漫画はすでに絶版で、Amazon では17万円以上の値がついていました(下の画面キャプチャー参照)。そのような手に入りにくい本を苦労して入手して裏を取ることなど、おそらくしていないのでしょう。(ちなみに今年10月に完全版として復刊するようです。)

 

https://www.amazon.co.jp/私が見た未来-ほんとにあった怖い話コミックス-たつき-諒/dp/4257986999 より(画面キャプチャー)

 

 『私が見た未来』が出版されたのは1999年です。しかし、この記事で的中例として紹介されているフレディ・マーキュリーとダイアナ妃の死は、それぞれ1991年と1997年です。いずれも出版前の出来事です。後になって実は予知していたと主張することは、後予知(あとよち)などといわれています。作者が本当に夢をみた可能性は否定できないので、これが後予知だったとはいいませんが、少なくとも疑われる成功事例ではあります。

 しかも、フレディ・マーキュリー死亡の予知夢は実際の死の15年前、ダイアナ妃の場合は5年前に見た夢とのことです。人は必ず死ぬわけですから、これは(誰でもできる)必ず当たる予言のようにも思えます。

 一方、東日本大震災は2011年なので後予知ではありません。これは本の表紙にある夢日記に「大災害は2011年3月」と書かれているものに相当するようです。ただし、フレディ・マーキュリーやダイアナ妃の死、富士山噴火は日まで指定していますが、この予知夢は日の指定がありません。そうした違いがなぜあるのか気になります。

 1999年以降の予知夢とされるものがいくつあり、どのような書かれ方をされているのか、大変興味があります。また、大災害といえば、例えば2004年のスマトラ沖地震の被害者は死者22万人ともいわれています。マグニチュードも東北地方太平洋沖地震より大きいです。こちらの予知夢はなかったのか?についても知りたいところです。

 

 予言や予測が本当に当たっているのかどうかを検証する場合、予言や予測がどれだけ出されていたかだけでなく、その予言や予測の対象となる事例がどれだけあるのか、についても注意を払わなければなりません。例えばフレディ・マーキュリーやダイアナ妃のことなら、世界中の著名人が対象になる可能性があります。その場合、対象はものすごい数になります。ただ、この予知夢は死亡する月日を当てているとされています。しかし、それは後予知なら細工が可能なので、そのような疑いを払拭する意味からも、出版された1999年以降の予知夢で検証すべきです。

 「大災害は2011年3月」については、大災害の条件を定めてそれに相当する事例が対象となる期間(この場合、2011年3月を最終月として1999年出版の月からとする)にどれだけあったかを調べる必要があります。

 

 予知・予測に関する記事を読む際は、記事を書いたライターは、何を根拠にそのようなことを述べているのか?を考えてみるといいでしょう。そうした視点でこの記事を眺めると、予知夢についてライターが実際に『私が見た未来』を読んで確認した形跡が見当たりません。「的中率9割」は自分が本を読んで確かめたわけではないようだ、別の言い方をすれば、このライターは裏を取るといった記事を書く際に重要な作業をやっていないようだ、ということがわかります。

 さらに言葉の使い方もおかしいです。記事には ”「大災害は2011年3月」の文字。東日本大震災をピンポイントで予知し、” とあります。しかし、日にちまで指定していませんし、場所も指定していません。当たったとされるダイアナ妃の死などは、対象となる個人が指定され、月日も指定されています(ただし、年の指定はありません)。こうした事例と比較すると、記事内の「ピンポイント」は時間的にも場所的にも、言葉の使い方が正しいとはいえません。

 実は、年に数回雑誌等に登場する地震予測の煽り記事では、しばしば「ピンポイント」という言葉が出てきます。しかし、その大半は実際にはピンポイントではありません。この点も、煽り記事かどうかを判断するひとつの材料になるかもしれません。

2021年07月19日

「メガマウス」が千葉・館山港の海面に出現

 メガマウスが千葉県・館山港の海面に6月15日頃から複数回出現しているとのことです。https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000219800.htm

 深海に生息するメガマウスが連日海面に姿を現したことについて、メガマウスは夜にプランクトンを求めて浅瀬に移動する習性があるとのことです。しかし、今回は日中に姿を現しています。このことについて映像をみた専門家は、傷が多く弱っている可能性を指摘していました。

 しかし、一部の人たちはメガマウス出現を地震の前兆と考えているようです。

 この件については、以前大学の講義で情報リテラシーの問題として取り上げたことがあります。メガマウス出現と、その後に発生した地震を列挙したWebサイトの情報から何が読み取れるか?といった問いです。例えば、このWebサイトでは、マグニチュード4の小さい地震を関連づけたり、三重県のメガマウス出現を、遠く離れた東北地方太平洋沖地震や熊本地震と関連づけたりしていました。また、メガマウス出現から地震発生までの間隔も1日後から約2ヶ月後までと、かなりの幅をもたせています。

 日本周辺でマグニチュード4以上の地震は、年間で900個程度(1日に2個以上)発生しています(2001〜2010の気象庁データより)。また、遠くの地震と関連づけていることについては、もっと震源に近い場所で過去にメガマウスの出現があったにも関わらず、なぜこのときは出現していないのか?といった疑問が生じます。小さな地震だけでなく、場所的にも時間的にも遠く離れたものまでOKにすれば、対象の地震はかなり増えます。

 このWebサイトのような関連づけのやり方は、単に対象となる地震を探してきたに過ぎません。

 さらに忘れていけないことは、小さな地震も遠く離れた地震も対象とするなら、関連づけされた「当たり」の地震の裏には、その何十倍、何百倍もの「はずれ」の地震があるということです。 

 私たち人間は、一般的に予言や予測などについて「当たり」のみに注目を向けてしまう傾向があります。占いや予言を信じてしまう心理です。しかし、それが本当に役に立つ情報なのか?といった視点で考えれば、たいていの予言や予測の「当たり」の裏には、その何倍もの「はずれ」があることに気づくでしょう。

2021年06月19日

2008年5月12日に四川大地震

 2008年の今日、中国内陸部の四川省でマグニチュード7.9の地震が発生しました。国連の国際防災戦略(ISDR)によれば、死者は8万人以上といわれています。

 この地震は、1000万年以上活動していなかったとされる龍門山断層(Longmenshan Fault)が動いたものです。これだけ長期間活動の痕跡がなかった断層ですから、次の活動を予測する長期予測も難しかったと考えられます。

 では、地震発生直前の前兆現象はどうだったのでしょうか。この地震の震央から約75km離れた四川大学(Sichuan University)のある研究室で、動物の自発運動と体内時計の研究のため、同時に8匹のマウスが飼育されていました。そして、この8匹のマウスのうち6匹で地震の3日前から自発運動と体内時計の両方で異常が見られました。(Li et al., 2009, Behavioral Change Related to Wenchuan Devastating Earthquake in Mice, Bioelectromagnetics)

 地震3日前から見られたこのマウスの異常行動は、地震予知研究と無関係な研究で得られたデータです。したがって、地震前兆を見つけようとするバイアス(偏見)がかかっていないものと考えられます。その意味において、信頼性の高いデータではないかと考えています。

2021年05月12日

民間の地震予測の結果は?

 前回取り上げた地震予測の記事では、日本の約3分の2を占める面積を5つのエリアに分けて警戒ゾーンとしていました。そのうちの1つ東北警戒ゾーンで最大震度5強の地震(M6.8)が5月1日に発生しました。

 この地震をもって「予測的中!」とこの予測情報を好意的に捉えているネット上の書き込みがありました。では、外れた予測はなかったのでしょうか?5つのゾーンのうちの1つでは確かに当該の地震がありましたが、残り4つのゾーンではありませんでした。また、地震があった東北地方はもともと地震が多く、今年に入ってやや大きな地震が続いていました。
 2月13日には福島県沖(M7.3,最大震度6強)
 3月20日には宮城県沖(M6.9,最大震度5強)
このような事実を考慮するなら、この的中は偶然だった可能性も考えられます。

 それよりも注目していただきたい点は、外れた予測がどれだけあったか?です。今回の予測では5つのゾーンのうち4つは外れです。また、この予測では危険度を5段階で示しており、危険度1位と2位では地震はなく、危険度3位のゾーンでのみ地震がありました。

 この予測的中が偶然レベルなのかどうかは精査する必要があります。ただ問題なのは、この予測情報会社がデータを開示していないことです。以前、拙著のなかで「お金を出して買っている人たちが求めているのは将来の情報についてであり、過去の情報は価値がないのだから公開できる」旨を述べました。事実、過去の予測情報を一部開示している予測会社もあります。本当に地震予測を人命救助のために役立てたいと考えているなら、是非とも科学的な検証が可能な過去の情報を開示していただきたいものです。

2021年05月10日

民間の地震予測を雑誌が紹介

 ゴールデンウィーク中の要警戒エリアが示されていました。
(https://www.news-postseven.com/archives/20210426_1654811.html?DETAIL)
東海地方~九州北部と沖縄地方をのぞく日本が要警戒エリアといったものです。日本の3分の2ぐらいに相当します。これだけ広いと、仮に当たったとしても不思議ではないかもしれません。

 こうした一見科学的に見えて、実は科学的ではない情報により世間を煽る傾向が一部のマスコミにはあるようです。非常に残念ではありますが、そうした記事を載せると売れるから載せるのでしょう。こうしたものは、タダで見ることができるWeb記事にとどめておき、雑誌やWeb有料記事を買わないようにすることが大切です。

2021年04月27日

政府が震度6弱以上の予測地図を更新

3月26日、政府の地震調査委員会は2020年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した「地震動予測地図」を公開しました。
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/20_yosokuchizu/yosokuchizu2020_mm.pdf

「全国地震動予測地図2020年版のポイント」より引用


この地図で黄色いエリアは、今後30年間に震度6弱以上の地震に見舞われる確率が相対的に低い地域になります。しかし、あくまで確率ですから確率の高い赤いエリアで発生せずに黄色いエリアで発生することもあり得ます。黄色いエリアだからといって決して安全ではありません。日本はどこに住んでいても大きな地震に見舞われる可能性があります。

2021年03月27日