海底地滑りによる津波

 令和6年能登半島地震では津波が発生しました。
 富山湾における津波発生の原因について、以下のような記事がありました。

"津波の要因か…富山湾の海底で“東京ドーム半分“相当の土砂が崩れ水深40メートル深く 海上保安庁の調査" 2024年1月25日(木) 15:34
(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tut/961358?display=1)

 富山湾では地震発生の3分後に40センチメートルの津波が観測されています。気象庁は近い位置に津波の原因がある可能性を指摘していたことから、記事ではこの土砂崩落が富山湾での津波発生の原因である可能性を示唆しています。

 津波の発生原因としては、海底地震によって海底地形が変形(隆起・沈降)し、それが海面に伝わることで津波になるというメカニズムが一般的です。日本海溝などのプレート境界の地震が引き起こす津波がその典型です(図1)。

図1:海底地形の変形と津波発生
(https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/tsunamibousai/01/index01.htm より)

 能登半島を襲った津波は、逆断層型の地震だったので、同様に海底地形が上下に変動し発生したと考えられます。

 一方、富山湾における津波は、地震の揺れによって海底で土砂崩れが起きたことが原因ではないか、といった異なる発生メカニズムです。

 このような海底の土砂崩落(海底地滑り)による津波の例として、2018年9月28日にインドネシア・スラウェシ島で発生した地震(マグニチュード7.5)による津波を紹介します。

 この地震は横ずれ断層による地震だったので、一般的に津波は発生しにくいと考えられます(上下の変動が少ないため)。しかし、この地震では最大11.3メートルの津波が発生しました。
(https://www.jrc.or.jp/international/news/181024_005483.html#:~:text=9月28日現地,被害をもたらしました。)
 津波被害があった州都パルは、震源のドンガラからは約78キロメートルも離れています(図2)。

図2:震源のドンガラと津波被害があったパルの位置関係
(https://www.jrc.or.jp/international/news/181024_005483.html#:~:text=9月28日現地,被害をもたらしました。 より)

 津波研究の第一人者である東北大学の今村教授によれば、この津波は地滑りを起こしやすい特性があったパル湾の地形が、揺れに伴って海底地滑りを起こしたためではないか、とのことです(図3)。
(https://weathernews.jp/s/topics/201811/080125/)

図3:海底地滑りによる津波発生のメカニズム
(https://weathernews.jp/s/topics/201811/080125/ より)

 能登半島地震による富山湾の津波も、同様のメカニズムによるものだった可能性があります。

 ちなみに、地震が少ないイギリスでも、遠い昔に海底地滑りによる大津波があったようです。
"8200年前、大津波がイギリスを襲っていた…同時期の人口減少との関連は?" Jan. 28, 2024, 08:00 AM
(https://www.businessinsider.jp/post-281566)

2024年01月30日