皆無に等しい、中国のCO2排出量改ざん報道

 国連の気候変動枠組条約締約国会議 COP28が、13日に閉幕しました。
 前週の8日には、"中国のCO2濃度、公表の1.5~3倍で増加…環境省が観測衛星で分析しCOP28で発表へ"(2023/12/08 05:00)といったニュースが流れました。
(https://www.yomiuri.co.jp/science/20231207-OYT1T50255/)

 読売新聞の独占記事のようで、他社からの配信は見当たりませんでした。
 この調査結果は「9日にもCOP28で発表される」と書かれていたので、続報を待っていました。しかし、COP28で発表され、マスコミ各社がこぞって報道することはなく、会議は閉幕しました。

 読売新聞からは続報として、9日に記事配信がありました。
"中国の実際のCO2濃度増加量、公表値の最大3倍か…観測衛星「いぶき」の調査結果"(2023/12/09 20:53)
(https://www.yomiuri.co.jp/science/20231209-OYT1T50191/)

 この記事によれば、環境省は中国の情報が不正確であることを、各国代表が集まる会議で発表したわけではなく、単に情報を公表(中国と共有)しただけだったようです。内容が明らかにトーンダウンしています。
 各国が中国の情報改ざんの可能性を知り、中国が「デタラメだ」などと日本を批判する、といった白熱した議論が展開されるかと思っていたので、何とも肩透かしを食らった感じです。

 このニュースに関しては、読売新聞の記事以外、他のマスコミ報道が見つかりません。
 どこぞの環境団体による化石賞は、多くのマスメディアが取り上げたのに、なぜこのニュースを報道しなかったのか、非常に疑問に思います。

 "バッテリー生産における「知られざる環境負荷」が明らかになってきた" (2022.06.20)
(https://wired.jp/article/the-surprising-climate-cost-of-the-humblest-battery-material/)
 この記事によれば、電気自動車のバッテリーの負極に使われるグラファイトは、9割超が中国産です。そして、その大半が石炭火力発電に依存する内モンゴル自治区で製造されていたことが判明しました。これにより、二酸化炭素の排出量がこれまでの推定より最大10倍になることを示しています。
 この研究結果は、上記の「中国のCO2濃度、公表の1.5~3倍で増加」とも整合的です。

 しかし、おそらくこのグラファイトの記事を知っている日本人はごく少数ではないか、と推測します。その理由は、日本のマスメディアが取り上げた形跡がないからです。

 中国のCO2濃度、公表の1.5~3倍で増加…の記事は、Yahoo!ニュースでも取り上げられていましたが、既に記事は削除されています。

 環境省という公の機関が関わることなので、読売新聞がガセネタを流したとは考えにくいです。
 となると、どこかから圧力がかかり、「COP28で発表」が「中国と情報を共有」にトーンダウンしてしまった可能性が考えられます。
 他のマスコミからの報道がなかったことも、圧力に屈した(もしくは忖度した)結果ではないかと推測しています。

2023年12月18日