レジ袋有料化は地球温暖化抑止に役立つのか
レジ袋有料化は地球温暖化対策(CO2削減)に役立っているのか? プラスチックの生産は原油全体のわずが3%で、そこからレジ袋に使われた原油を推計すると全体の
0.1% にも満たないことは、4月25日付のブログ「レジ袋有料化は何のため?」でも述べました。
また、有料化によりレジ袋が全てなくなったわけではありません。新たに石油由来のエコバッグ(マイバッグ)も作られています。したがって、効果としては
"焼け石に水" であることは容易に想像がつきます。
しかし、それでは元も子もないので、プラスチック全体(レジ袋もここに含まれるので)の生産量の推移を調べてみました。レジ袋有料化は2020年7月からはじまったので、その前後のデータを探しました。
Fig.1: プラスチックの種類別生産量(https://www.vec.gr.jp/statistics/statistics_4.html)塩ビ工業・環境協会HPより
これは2020年までのデータです。昨年(2021年)のデータはまだ掲載されていませんでした。
プラスチック生産量の推移をさらに検索していたところ、画像からレジ袋の原料となるポリエチレン市場に関する調査のサイトを見つけました。以下にその図を示します。
Fig.2: ポリエチレン市場に関する調査を実施(2021年)2021/08/24 株式会社矢野経済研究所 プレスリリース
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2771
ここには2021年(見込み)と2022年(予測)のデータも含まれていました。
しかも、レジ袋の原料となるポリエチレン(PE)がさらに細分化されています。レジ袋は Fig.2 にあるHDPE(高密度ポリエチレン)に含まれます。
2020年のHDPE出荷量は前年比93.2%の75万トンでした。
これはレジ袋有料化の影響であると、株式会社矢野経済研究所では説明しています。
ということは、レジ袋の原料となる石油の一部の消費が減ったわけですから、レジ袋有料化は地球温暖化抑止に役立っているといえそうです。
しかし、2021年の出荷見込は75万9千トンと微増し、2022年は76万9千トンとさらに増えるとの予測を示しています。
となると、レジ袋有料化の地球温暖化抑止効果はたった1年だけということになります。
また、このデータでは輸入の分が考慮されていない点に注意が必要です。
株式会社矢野経済研究所によれば、国内レジ袋市場に占める輸入品は7割と見ているメーカーもあるとのことです。したがって、上記に書かれていることは、あくまで国内のHDPE出荷量から考えられることになります。
さらに、HDPEから作られるのはレジ袋だけではないことにも注意が必要です。
メーカーはレジ袋で減った分を他の用途で補い、さらに消費拡大へとつなげる努力をしているものと考えられます。株式会社矢野経済研究所でも同様の説明をしていました。
地球温暖化抑止とはCO2排出削減で、それは石油の消費削減を意味します。
しかし、上記のデータは、レジ袋を有料化したところで石油製品であるポリエチレンの消費削減効果はたった1年で、その後は逆に増加に転じてしまう可能性を示しています。
資本主義経済である以上、企業は利益につながる努力をするということです。
企業の利益を確保しつつ、石油消費削減を実現するには、これらの企業が石油関連製品の販売ではない、環境負荷の少ない製品の販売へとシフトする以外に、SDGs(持続可能な開発目標)を実現するのは難しいのではないでしょうか。