原料から考えるレジ袋有料化の効果

 レジ袋の原料はポリエチレンで、ポリエチレンはプラスチックの一種です。
 そして、プラスチックは石油からつくられるナフサが原料となります。レジ袋は石油の一種ナフサが原料というわけです。

 5月2日のブログ「レジ袋有料化は地球温暖化抑止に役立つのか」では、ポリエチレン市場規模の年推移からレジ袋有料化の効果(地球温暖化抑制、CO2削減)を検証してみました。
 その結果、ポリエチレンの消費削減効果はあったとしても2020年のたった1年でしかない可能性が示されました。

 今回は、さらに上流にさかのぼって、ナフサの消費(需要)から、レジ袋有料化の効果を考えてみます。
 Fig.1 は、経済産業省の石油製品需要想定検討会 燃料油ワーキンググループ により作成された「石油製品需要見通し」から作った図になります。一方、Fig.2 は5月2日のブログに掲載した「ポリエチレン市場に関する調査を実施(2021年)2021/08/24 株式会社矢野経済研究所 プレスリリース」の図を書き改めたものです。いずれの図も縦軸が誇張されています。


 両者を比較すると、いずれもレジ袋有料化が導入された2020年(Fig.1は年度)に、前年比で大きく減少しています。
 株式会社矢野経済研究所では、このポリエチレンの減少(Fig.2)はレジ袋有料化の影響があると分析していました。

 では、2020年度のナフサの減少(前年度比マイナス5.2%)も、主要因はレジ袋有料化なのでしょうか?
 2020年度は、新型コロナ(COVID-19)が世界規模で流行した年になります。COVID-19 により日本でも経済活動の縮小を余儀なくされました。
 それを象徴するような数字が以下になります。
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 ジェット燃料油
 2019年度 5,146 (千KL)
 2020年度 2,733 (千KL) :前年度比マイナス46.9%
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 これも、前述した「石油製品需要見通し」からのデータです。
 渡航が大幅に制限された結果が如実に表れています。

 レジ袋有料化は2020年7月からですから、その効果は丸一年間で計算される2021年のほうがより如実に現れるはずです。
 ところが、Fig.1のナフサでも、Fig.2のポリエチレンでも2021年は前年より増加すると見込まれています。
 したがって、2020年度のナフサの需要減少の主要因は、COVID-19の影響によるものと考えたほうがよいのではないでしょうか。

 そして、2021年(年度)のナフサの需要およびポリエチレンの市場規模の見込から言えることは、レジ袋有料化による地球温暖化抑制効果(CO2削減)は、残念ながら、ほとんどないということです。あったとしても、他所の増加で相殺されてしまい、全体としての効果は無いに等しい、となってしまうようです。

2022年05月23日