レジ袋vsマイバッグ
レジ袋が有料化されて以降、個人で実践しているSDGsの取り組みとして「マイバッグを使う」と答える人は多くなったのではないでしょうか。
有料のレジ袋を買うのはもったいないと考える人もいるかもしれませんが、SDGsを意識している人なら「地球環境のため」にマイバッグを使うと考えているでしょう。
しかし、本当に環境に良いのか?自分で調べて納得して、レジ袋からマイバッグへと移行した人は、実際のところかなり少ないのではないかと思います。なぜなら、マイバッグも環境に負荷を与えているからです。使い方によっては、それがレジ袋以上になることもあります。
眞弓和也ほか, 2009, 環境配慮行動支援のためのレジ袋とマイバッグのLCA(https://www.jstage.jst.go.jp/article/ilcaj/2008/0/2008_0_130/_pdf)は、レジ袋とマイバッグのCO2(二酸化炭素)排出量を算出した調査報告になります。
LCA (Life Cycle Assessment: ライフサイクルアセスメント) とは、製品のもととなる資源採取から廃棄に至るまでの全過程(ライフサイクル)における環境負荷を科学的に評価する手法です。
Fig.1 はプラスチックを例にしたLCAの概念になります。
Fig.1:LCAを考える 「ライフサイクルアセスメント」考え方と分析事例, 一般社団法人 プラスチック循環利用協会(PWMI), 2019
(https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf6.pdf)
さて、眞弓和也ほか (2009) ではレジ袋とマイバッグそれぞれ1枚づつのLCAからCO2排出量を比較しています。
前提条件は、1枚の重量がレジ袋 3.0g, マイバッグ 32.2g, 原料・製造・輸送・処分それぞれの段階で排出されるCO2の合計がレジ袋
15.4g, マイバッグ 781.7g です。全段階でマイバッグのほうがCO2排出量が多くなります。特に原料と製造段階でポリエステル生地の製造と製品加工にかかる環境負荷が大きくなっています。
Fig.2 は買い物の回数とCO2排出量の関係をまとめた図になります。
Fig.2:LCAを考える 「ライフサイクルアセスメント」考え方と分析事例, 一般社団法人 プラスチック循環利用協会(PWMI), 2019
(https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf6.pdf)
マイバッグは耐用使用回数の異なる3種類で比較しています。
レジ袋は1回に1枚使用、マイバッグはそれぞれ耐用使用回数の上限(25, 50, 100回)に達したら、新しいものに買い換えます。そのため、マイバッグのグラフは階段状になっています。
この図が示していることは、耐用使用回数25回のマイバッグだとレジ袋よりCO2排出量が多く、50回のマイバッグで同程度、100回耐えうるものなら、100回を超えた段階でレジ袋よりCO2排出量が少なくなる、といったことになります。
「レジ袋よりマイバッグ」と安易にいえないことがわかります。また、「これ、おしゃれ」などとマイバッグをいくつも買うこと自体、レジ袋よりも大きな環境負荷を与えているということになります。
本気で環境負荷を少なくしたいなら、政府やマスコミの宣伝をまずは疑って、自分で調べてみることが大切なようです。