電気自動車はSDGs的にアリか? - CO2排出量から - (5)
電気自動車はSDGs的にアリか? - CO2排出量から - (4) では、2020年以降に販売される自動車が全てガソリン車だった場合と、全て電気自動車だった場合とで、2050年までに排出される総CO2排出量の比較を行ってみました。
その結果、全て電気自動車のほうが 11.3% の削減となりました。しかし、全てガソリン車で販売台数を2050年まで同じにしたほうがよりCO2が削減できる、言い換えるなら販売台数を調整したほうが、電気自動車に乗り換えるより効果的でした。
CO2の排出量は、毎年見積もられています。そこで、今回は年ごとのCO2排出量を単純なモデルで考えてみます。
大和証券による「世界の自動車販売台数の見通し」(https://www.daiwa.jp/products/fund/201802_ev/change.html)をもとに、2020年の販売台数を9500万台、2050年を1億2500万台とし、毎年100万台の増産とします。
ガソリン車と電気自動車のCO2排出量の見積りは、今回も Volvo (2021) を使用し、全車1年間で2万キロ走行したと仮定します。
ガソリン車と電気自動車の比率については、2020年にガソリン車9050万台、電気自動車450万台とします。ガソリン車は毎年350万台減産、電気自動車は毎年450万台増産し、2046年でガソリン車0台、電気自動車1億2100万台になるようにします。
その結果を示したグラフが Fig.1 になります。
Fig.1
(なんと!)多くの人が良かれと思っている電気自動車を増やせば増やすほど、年ごとのCO2排出量は毎年増えてしまいます。
SDGs(持続可能な開発目標)では、経済成長と気候変動対策を技術革新で両立させることを目的としていると考えられます。
ところがこの図(Fig.1)は、電気自動車という新たな技術による経済成長と、気候変動対策としてのCO2削減は両立しないことを物語っています。
では、販売台数を2050年まで9500万台のままにしたらどうでしょう?
Fig.2 はその仮定での見積もりです。それでも、2046年まで毎年のCO2排出量は増えてしまいます。
Fig.2
次に、毎年100万台の減産で、2050年には電気自動車のみ6500万台になるとしたらどうでしょう?
Fig.3 がその結果になります。2046年までほぼ横ばいで経過しています。
車両総数を毎年減産しても、電気自動車の割合を増やしてしまっては、CO2排出量削減にはならないようです。
Fig.3
非常に単純化した見積りではありますが、電気自動車の普及は、毎年のCO2排出量を減らすどころか、むしろ増やす結果になってしまうようです。