電気自動車とレアメタル

 電気自動車 (EV) の生産は、実は二酸化炭素 (CO2) 排出ひとつとっただけでも、決して環境に良いものではないことが、これまでの調べてわかりました。そして、SDGsが掲げる「持続可能な開発(発展)目標」、言い換えるなら、技術革新によって環境保全と経済成長を両立させることは極めて難しいことが、以前に取り上げたLEDの話に加え、電気自動車とCO2排出との関係からも明らかになりました。
 仮に、技術革新により商品一個の環境負荷が従来品より軽減できたとしても、商品の総量が増えれば全体の環境負荷は増えてしまいます。際限ない開発(発展)が経済成長を意味するなら、SDGsは絵に描いた餅です。

 さて、今回は電気自動車がSDGs的にアリかナシかを、レアメタル、レアアースの視点から考えてみます。
 国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)のレアメタル・レアアース特集(https://www.nims.go.jp/research/elements/rare-metal/study/index.html)によれば、レアメタルの明確な定義はありません。「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、安定供給の確保が政策的に重要(経済産業省)」で、産業に利用されるケースが多い希少な非鉄金属を指す、とあります。
 レアメタルは必ずしも資源的にレア(希少)とは限りません。例えばチタンなどは地中埋蔵量は多いものの、高純度なものへと精錬することが技術的に難しく、そのコストが非常に高額になるため、レアメタルに分類されるものもあります。
 一方、レアアースとはレアメタルのうち、スカンジウム、イットリウム、ランタンからルテチウムまでの17元素のグループ(希土類元素)のことを指します。

Fig.1 「元素周期表」から見るレアアース
https://www.nims.go.jp/research/elements/rare-metal/study/index.html より引用

 こうしたレアメタル、レアアースは、現代社会を支える重要な元素といえるでしょう。そして、電気自動車にとっても、不可欠な元素になります。
 資源エネルギー庁ホームページにも「EV普及のカギをにぎるレアメタル」といった記事があります(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ev_metal.html)。
 電気自動車にはさまざまなレアメタルが使われています。別の記事「xEVに必須のレアメタル「コバルト」の安定供給にオールジャパンで挑戦」(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/cobalt.html)では、コバルトに焦点をあてています。ちなみにxEVとは、電気自動車だけでなくハイブリッド車など電動化された自動車全般を指します。

 コバルトは、埋蔵量、生産量ともにアフリカのコンゴ民主共和国が世界第1位です。いずれも世界の約半分を占めています(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/5031cf98b023cbd4.html)。
 このコンゴ共和国におけるコバルト生産の実情に触れると、電気自動車はSDGs的にナシ!なことがわかります。

 「不満を言えば即解雇 時給46円…環境に優しいEV車(原文ママ)のために“奴隷労働”させられるコンゴの人々」(https://courrier.jp/news/archives/269300/)
 「コロナ禍で「まるで囚人のような待遇」 中国人上司にぶたれ、罵られ… コンゴ人労働者を搾取するEV産業の“深すぎる闇”」(https://courrier.jp/news/archives/269301/)
 上記2つの記事は「EVの労働問題」として取り上げられています。タイトルからおおよその内容が推測できるかと思います。
 「命を削って掘る鉱石 コンゴ民主共和国における人権侵害とコバルトの国際取引」(https://www.amnesty.or.jp/library/report/pdf/drc_201606.pdf)では、児童労働の実態が伝えられています。
 
 このように、レアメタルのひとつ、コバルトを取り上げただけでも、SDGs【目標1】貧困をなくそう、【目標4】質の高い教育をみんなに、【目標10】人や国の不平等をなくそう、などに反していることがわかります。
 コンゴ共和国で生産されたコバルトを使用したバッテリー、そのバッテリーを搭載する電気自動車は、人権面からも SDGs的にナシ!となってしまいます。

2022年09月05日