ハザードマップの落とし穴

 災害が起こりそうなとき、命を守る行動を取るためには、まずは身の回りにどのような危険が潜んでいるのかを知ることが大切です。それを知るひとつの手段がハザードマップになります。

 しかし、危険を教えるはずのハザードマップが、場合によっては「安心確認マップ」になってしまう恐れがあります。
 2011年東日本大震災では、多くの方が津波の犠牲になりました。岩手県の大槌湾周辺では400人を超す死亡・行方不明者が出てしまいました。この約400人の8割に上る方々が浸水想定範囲外の住民だったというのです(https://www.kahoku.co.jp/special/spe1114/20130501_01.html)。
 東日本大震災では多くの地域で想定を超える津波が襲ってきました。この調査結果は浸水想定範囲外の住民が、「ここまでは、津波は来ない」と安心していた可能性があることを示しています。ハザードマップにより自宅の危険性を知って、危険ではない(安全)との認識が生まれ、津波からの避難を遅らせてしまった可能性があります。

 9月26日のブログでは令和元年台風19号における栃木県足利市のことをお話ししました。浸水した地域はハザードマップでは、浸水想定範囲に含まれていませんでした。これは、足利市では氾濫した旗川のハザードマップが当時はなかったためです。(足利市の洪水ハザードマップは渡良瀬川が対象)

 このように、ハザードマップは危険性を知らせてくれる地図であると同時に、見方によっては安全を知らせるマップにもなってしまいます。想定範囲外であっても、想定を超えて被害が及ぶことも十分あり得ることを教訓としなければなりません。

2022年10月03日