知っておきたい二酸化炭素排出量の算出方法

 2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みが「パリ協定」になります。
 パリ協定では、世界共通の長期目標として、以下を掲げています。
・世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
・そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html より)

 さて、温室効果ガス(二酸化炭素:CO2)の排出量は、どのようにして測っているのでしょうか?
 国別のCO2排出量は、「生産ベースCO2排出」と呼ばれる推計になります。直接、計器などを使って空中のCO2を測定するものではありません。ガソリン・電気・ガスなどの使用量といった経済統計などで用いられる「活動量」に、「排出係数」をかけ算して求められています。これは、たとえば「石油を燃焼する」など、“CO2排出が実際に起こった国”で排出量をカウントする方式になります。(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/co2_sokutei.html)
 この方式で求められた国別のCO2排出量が Fig.1 になります。

Fig.1 https://www.jccca.org/download/66920 より

 生産ベースによる算出は、ある製品を作った国に排出量がカウントされます。日本は多くの製品を海外から輸入しています。しかし、CO2排出量は消費する日本ではなく、例えば、中国や東南アジアの国々のものとしてカウントされます。

 Fig.2 は、製品の輸出入の量をCO2排出量に換算したグラフになります。世界の工場といわれる中国がマイナス(CO2の輸入量より輸出量が多い)になる反面、日本やアメリカ、EUなどはプラス(輸入量のほうが多い)になることがわかります。

Fig.2 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/co2_sokutei.html より

 CO2排出量は生産国ベースではなく消費国ベースで考えるべき、といった主張は、実態をより正確に把握するには良いかもしれません。しかし、この方法で計算するためには精緻なデータが必要となることから、統計に5年を要するとのことです。(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/co2_sokutei.html)

 国別の責任を考えるには、消費ベースがより相応しいですが、CO2排出量の推移をすばやく知るには、どうしても生産ベースになってしまいます。
 ただし、この問題は世界全体にかかわることですから、生産ベースで自国が目標を達成できれば良い、といった考えでは、上記の「世界共通の長期目標」は達成できないでしょう。

2022年10月24日