電気自動車とアルミニウム
「電気自動車と銅」(2022/10/31ブログ)に引き続き、今回はアルミニウムを取り上げます。
アルミニウムは、これまで自動車の軽量化に大いに貢献してきました。軽量化することで燃費が向上します。車両の重量が10%減量すると燃費が約7%向上するといわれています。
(https://sdgsmagazine.jp/2022/04/21/5772/)
そして、ガソリン車よりも重い電気自動車の普及に伴って、アルミニウムの需要はさらに伸びることが予想されています。
電気自動車1台あたりのアルミニウム使用量はガソリン車より4割多く、世界需要は2030年までの10年間で6倍になると言われています。
(https://www.nikkei.com/prime/mobility/article/DGXZQOUC068WG0W2A900C2000000)
アルミニウムの原料となるボーキサイトは、アルミニウムの水酸化物(Al2O3・nH2O)で地表近くに分布しています。
(https://www.nirs.qst.go.jp/db/anzendb/NORMDB/PDF/30.pdf)
酸化物であるアルミナ(Al2O3)から、酸素を取り除いて純度の高いアルミニウムを精錬する方法としては、ホール=エルー法なるものがあります。
(https://www.shisaku.com/blog/anatomy/post-113.html)
これは電気分解によってアルミニウムを精錬する方法です。正極の炭素とアルミナの酸素が結びついて二酸化炭素(CO2)が発生します。負極にはアルミニウムが引き寄せられます。
アルミニウムを精錬するには大量の電力が必要となります。1トンのアルミ地金を製錬するのに必要な電力は、平均的な家庭の年間電力使用量の3倍強(1万3000kWh以上)にも達すると言われています。このようなことから、アルミは「電気の缶詰」などと呼ばれることがあります。
また、24時間・365日安定的な電力供給が必要になります。仮に発電源が石炭火力であれば、CO2排出量は水力よりも当然多くなります。
(https://sdgsmagazine.jp/2022/04/21/5772/)
さらに、アルミニウムのサプライチェーンには人権侵害といった問題もあります。
ボーキサイト鉱山は地表レベルの採掘を伴うため、広い面積を占めることになります。これにより、農地の破壊、生活飲料水や灌漑に欠かせない河川、地下水源に壊滅的な影響を与えることがあります。
西アフリカの国ギニアでは2019年の政府調査で、今後20年で858平方キロメートルの農地が消え、4,700平方キロメートル以上の自然生息地が破壊される算出されました。なお、同国のボーキサイト採掘地域の住民の約80%は農業を生業としています。
(https://www.hrw.org/ja/news/2021/07/22/379281)
ボーキサイトの採掘によって、それまでの住民の生活に危害が及んでいる事実が世界各地にあるようです。
これは、SDGs【目標6】安全な水とトイレを世界中に、【目標11】住み続けられるまちづくりを、【目標15】陸の豊かさも守ろう、などに反する行為と言えます。