電力消費を抑えた社会実現の可能性
太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電は、二酸化炭素(CO2)削減の手段として世界各国で導入が進められています。
一方、必要とされる電力は、電気自動車(EV)が広まれば、さらに増加します。
今回は、電力需要を賄う発電ではなく、限られた電力量に生活スタイルを変えることで対応できるか?といった発想で、これからの社会を考えてみます。
図1は、1952年度から2018年度までの日本における発電電力量の推移を示しています。電源(発電方法)別の発電量の総和が各年の発電電力量になります。
図1 発電電力量の推移
(https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2020html/2-1-4.html より)
CO2をより多く排出する石炭火力と、放射性廃棄物等の問題を抱える原子力を除いた電源(新エネ等・石油等・LNG・水力)による2018年度の発電電力量はおよそ6,500億kWhになります。この発電電力量で一年間の総電力を賄えた年は、1988年度より以前になります。
30年前となる1988年度は昭和の最後になります。昭和から平成へ移った時ぐらいまでの消費電力量で生活できれば、石炭火力も原子力も必要ありません。
図2は、部門別電力最終消費の推移で、運輸・家庭・業務他・産業の部門別に示されています。
図2 部門別電力最終消費の推移
(https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2020html/2-1-4.html より)
2018年度と1988年度を部門別で比較すると、運輸部門では2018年度175億kWh、1988年度190億kWhと、2018年度のほうが少ない消費電力量になっています。産業部門も2018年度3,506億kWh、1988年度3,593億kWhと、2018年度のほうが少ないです。
一方、家庭部門は2018年度2,607億kWh、1988年度1,766億kWh、業務他部門は2018年度3,168億kWh、1988年度1,506億kWhと、家庭部門は約1.5倍、業務他部門は約2.1倍も2018年度の消費電力量が増えています。
家庭部門と業務他部門で省電力ができれば、石炭火力と原子力が不要な社会になります。果たしてそのようなことが実現可能なのでしょうか?
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2020html/2-1-4.html(資源エネルギー庁HP)の説明では、2倍以上になった業務他部門の電力消費の増加は、事務所ビルの増加や、経済の情報化・サービス化の進展を反映したオフィスビルにおけるOA機器の急速な普及などによるもの、となっています。
また、家庭部門の増加は、生活水準の向上などにより、エアコンや電気カーペットなどの冷暖房用途や他の家電機器が急速に普及したため、とあります。
https://www.yonden.co.jp/cnt_landl/2008/promenade.html(四国電力グループHP)によれば、2018年の冷蔵庫やテレビの電力消費量は、10年前の製品と比べて約半分になっているとのことです。
家電製品の省電力化が進んでも、家庭部門の電力消費量が増えているのは、スマホやパソコン、ゲーム機器など新たな電化製品の使用、冷蔵庫やテレビの大型化、使用台数の増加などが、その理由として考えられます。
こうしたライフスタイルを変えることは可能でしょうか?
現在のネット社会で、スマホやパソコン、インターネットの使用を抑制することは、不可能に近いのではないかと考えられます。
また、家電製品が省電力化されても、利用時間が増えたり、使用台数が増えれば、省電力化は無効になってしまいます。例えば、夏が暑くなってエアコンの利用時間が増えれば、省電力モデルのエアコンであっても、電力消費量の削減は難しくなるでしょう。
数字上では、昭和最後の年まで電力の消費量を減らせば、SDGs的に好ましい社会にすることが可能です。
しかし、スマホを捨ててポケベルの時代に逆戻りすることは無理でしょう。むしろ、コロナ禍でリモートワークが増え、さらにネット関連の電力消費は増加しているのではないでしょうか。
それに加えて、電気自動車が普及したなら、、、。電力消費量を抑えた社会の実現は不可能かもしれません。