原発再稼働の是非

 明日で東日本大震災から丸十二年になります。
 福島第一原発の事故により、日本は脱原発を目指しました。しかし、事故の記憶は時間とともに風化し、岸田政権は原発再稼働に大きく舵を切りました。

 ウクライナ情勢による燃料費高騰で、各電力会社では値上げラッシュです。電気料金を人質に原発再稼働の容認を国民に迫っているようにも映ります。「原発が再稼働されないと、さらに電気料金は上がります」と言われれば、多くの人は「やむなし」と思うのではないでしょうか。

 原発はもともと最終処分の方法が未解決のまま、見切り発車しました。最終処分場の候補地に名乗りを挙げた自治体が現在2町村ありますが、処分地決定には至っていません。そもそも日本に適地を見つけること自体が困難でしょう。
 日本は、世界初の最終処分場であるオンカロがあるフィンランドとは、地質的な環境が全く異なります。フィランドは安定陸塊といって、地震や火山活動がほとんどないところにある国です。一方日本は、地震や火山活動といった地殻活動が活発な新期造山帯に位置しています。日本で地殻活動が平穏で安定した場所はほとんどありません。唯一、一部の学者が最終処分場の適地として、南鳥島を挙げているぐらいです。

 最終処分のことだけでなく、原発再稼働には(安全性のこと以外にも)多くの問題があります。
 原発を稼働させると、使用済み核燃料が生まれます。そして、この使用済み核燃料の保管場所には限りがあります。再稼働させれば、最終処分の前段階でも問題が生じてしまう恐れがあります。
 使用済み核燃料は原発施設内ある貯蔵プール(水)で冷却させるために、3〜5年ほど保管されます。再稼働させれば使用済み核燃料が出てきます。これを貯蔵するプールが満タンになってしまえば、原発を止めるしかありません。
 そこで、プール(湿式)に代わる方法として乾式貯蔵が開発され、各原発では乾式貯蔵を進めています。それでも、例えば東海第二原発は3年が6年に延びるだけのようです。
(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/kanshiki_tyozou.html)

 日本では、核燃料サイクルといって、使用済み核燃料からウラン、プルトニウムを取り出し、それを再利用しようといった政策がとられています。
 しかし、ここにも問題があります。ウラン、プルトニウムを取り出す再処理工場(青森県六ヶ所村)は昨年も完工を先延ばししました。先延ばしはこれで26度目になります。

 仮に再処理工場が稼働し、使用済み燃料からウラン、プルトニウムを取り出し、MOX燃料と呼ばれる新たな燃料が生成されたとしましょう。ところが、このMOX燃料を使える原発は限られているようなのです。
 ふくしまミエルカPROJECT(https://311mieruka.jp/info/report/fuelcycle_2022/?gclid=EAIaIQobChMIoOrs86zQ_QIVDqyWCh3sFwg-EAAYASAAEgIlHvD_BwE)によれば、それは、玄海原発3号機など5基だけで、プルトニウムの余剰を増やさず、MOX 燃料として使いきるには16~18基が必要とのことです。

 プルトニウムを所持することは、核兵器開発につながることから、日本ではそれを燃料として使い切ってしまう政策をとっています。ところが、使い切ることは現在の施設ではできないのが現実ということです。

 原発を再稼働させれば、使用済み核燃料が生じます。それを貯蔵する施設にも限界があります。使用済み核燃料からウラン、プルトニウムを取り出す再処理工場も未完です。また、仮に再処理工場が稼働し、MOX燃料が作られてもそれをすべて使い切ることができない、、、、なんともお粗末な政策です。

 電気料金を人質にとるような姑息な真似はしないで、最終処分のことだけでなく、日本の原発政策の様々な問題点を国民に知らせた上で、再稼働の是非を考えるべきではないでしょうか。

2023年03月10日