温暖化問題解決のカギは経済か?
「30年のCO2排出、半減が必要 1.5度抑制へIPCC」(2023年03月20日)によれば、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今世紀末の気温上昇幅が1.5度を超える恐れが強まっており、この水準に抑えるには2030年に世界の二酸化炭素(CO2)排出を現状から半減させる必要があるとの報告書を公表した、とのことです。(https://www.47news.jp/9085605.html)
またIPCCは、新たな石炭生産をやめるよう各国に(富裕国は2030年、貧困国は2040年までに)要請したとのことです。(https://forbesjapan.com/articles/detail/61795)
とにかく石炭を目の敵にしていますが、石炭火力なしでは、IPCCが思い描く未来像も実現できないといった現実をなぜか、マスコミは報道しません。
太陽光パネルや電気自動車(EV)のバッテリー製造で世界シェアが大きい中国は、石炭火力をさらに増やすと、昨年のCOP27で表明しています。太陽光パネルもEVも石炭火力がなければ、生産できていないのが現実です。
また、各国の事情を考慮せず(なぜか中国に対してだけは考慮しているように思えますが)、画一的に「石炭=悪」を押し付けようとするなら、決してIPCCが求める削減は実現しないでしょう。世界のすべての国がノルウェーと同じであれば、水力発電で大半の電力を賄うことができます。しかし、現実は自然環境も人口も世界各国バラバラです。
温暖化問題の本質は何か?と日々と考えています。
科学技術による解決については、生産段階でガソリン車より多くのCO2を排出するEVに象徴されるように、少なくとも現段階では無理でしょう。
また、今のエコ活動の多くは、見せかけ、自己満足にすぎません。環境に良いとされるリサイクルであっても、場合によっては環境負荷が大きくなることがあります。最も良いのは、使わないこと、つまり消費しないことです。しかし、それでは経済が回らなくなってしまいます。
では、どのようにすれば解決できるのか?と考えていくと、やはり、経済の問題にたどりついてしまいます。
この点については、斎藤幸平氏の書籍(人新世の「資本論」 (集英社新書)など)が注目されています。「脱成長」がキーワードです。
資本主義が、温暖化のみならず世界の貧困など、現代社会が抱える多くの問題を生んできたことは、おそらく大多数の人が認めることなのではないでしょうか。それでも、資本主義がこれほどまでに世界に広がったのは、それなりの理由があったからだと思います。その点まで深く入り込まないと、資本主義擁護派も受け入れてくれるような解決策は見出せないと考えています。
人間の欲望にはキリがありません。また、価値観も人それぞれ異なります。それを同じベクトルにしようとすると、おそらく別の問題が生じてしまうと思います。
今の資本主義経済は、ある意味、人の欲望や価値観まで考慮した経済システムと言えます。したがって、人の欲望や価値観まで考慮した、資本主義とは異なる経済システムが解決策のように思えますが、今のところ具体的な提案ができる段階ではありません。