震災誌、後世に何をどう伝える?

 "釜石市の「震災誌」続く生みの苦しみ 原稿案や編集方針で認識の違い" 毎日新聞 2023/4/12 07:30(最終更新 4/12 10:10)といった記事を目にしました。 (https://mainichi.jp/articles/20230411/k00/00m/040/296000c)

 東日本大震災の発生から復興までの10年間を総括する「震災誌(仮称)」の作成は、岩手県内で初の試みだそうです。ただし、編集方針を巡って関係者間の認識の違いが表面化して完成がずれ込んでいるとのことでした。

 こうした震災の記録誌に関しては、岩手県遠野市の『3.11 東日本大震災 遠野市後方支援活動検証記録誌』の編さんに深く関わりました。
 通常、震災で何が起きたかを記録しておく記録誌は、いつ、何が起きたか、その際にどのような対応をとったか、などが時系列でまとめられます。遠野市の記録誌を編さんする際はそれに加えて、事前計画と実際とった行動との比較、情報や物資等がどのように流れていったか(加えて、それに要した時間)、マンパワー(人材)確保の方法などについても整理しました。

 事前計画との比較は、計画が有効だったかどうかの検証に役立ちます。
 情報や物資等の流れは、今後の災害対応を考える際に、迅速化や臨機応変の対応の参考になれば、と考えました。
 マンパワー確保は、実際に災害対応にあたる人材をスムーズに確保する参考になれば、と考えました。
 いずれも、後世に役立つ情報にしたい、といった思いです。そうした思いは、被災されたどの自治体でも同じでしょう。

 記事によりますと、今回の釜石市の震災誌について、市長は「市が何をやったのかを押さえたうえで、反省や教訓を見いださねばならない」と、市の対応を中心に考えているようです。一方、委員からは今後の災害対応に役立つ内容とするよう求める声が相次いだ、とのことです。

 震災から既に12年が経過していることを考えると、震災発生からの10年間を統括するのであれば、震災の被害から復興がどのように進んだのか、復旧・復興の期間に焦点をあてたほうがよいのではないか、と個人的には思っています。(そのように考えているのかもしれません。)
 復旧・復興の段階で様々な問題点が出てきたことでしょう。それをどのように解決していったのか、は後世に残すべき記録だと思います。また、復興では、次の災害に備えるまちづくりを、念頭に置いていたのではないかと推測します。こうした記録は、日本全国で、災害に強いまちづくりの参考になるかもしれません。

 災害の記録誌というと、大抵は発災から復旧の始まりあたりまでのことが中心になります。
 今回の釜石市の震災誌は、それとは違った視点(焦点をあてる時間)で考えた方が、後世に役立つ内容になるのではないかと思いました。(外野のひとり言です。)

2023年04月14日