人類は他の生命体の世話役か?
WHAT IS LIFE? (ホワット・イズ・ライフ?) 生命とは何か,ポール・ナース (著), 竹内 薫 (翻訳) といった書籍について、訳者である竹内薫氏が、NHKの「100分de名著
for ティーンズ」で紹介しています。
そのなかに「人間は生命の世話をしなければならない(We need to care for it.)。」といった文言がありました。ここが引っかかりました。
著者のナースは、人間以外の地球上の生命体は自身の生存と子孫の繁栄だけを目的としているが、人類は違うと言っています。人類は地球全体に対して責任を負っており、(他の生命の)世話をしなければならない、と主張しています。
そして、そのために人類は、生命を慈しみ、生命を理解する必要がある、というのです。
「生命を慈しみ理解する必要がある」は納得できましたが、「人類は地球全体に対して責任を負っており、(他の生命の)世話をしなければならない」については首を傾げてしまいました。
「人類が他の生命体に比べ、並外れた脳を持っている」、だから、「人類は地球全体に対して責任を負っている」とする点に論理の飛躍があると思ったからです。
著者のポール・ナースはイギリス人です。イギリスの国教はキリスト教です。人類が地球の他の生命体の管理者とする発想は、おそらくキリスト教の影響ではないかと推測します。
“神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。
神は自分のかたちに人を創造された。”(創世記1章26節)
(https://www.bible.com/ja/bible/81/GEN.1.26-27.JA1955)
旧約聖書の創世記1章26節に、人間は他の生命体の管理者・支配者であることが記されています。
これが、ナース氏の発想の背景に、キリスト教があると推測する理由です。
そして、この発想こそが人類を誤った方向に向かわせている元凶ではないか、と思っています。
仮に、人類が他の生命体の管理者・支配者であるなら、人類は住民たる他の生命体のことを知っていなければなりません。どんな種の生命体がどこにどれだけ生息しているのか、彼らの生態はどのようなものなのか、それがわかってなければ、管理者・支配者として適切な行動をとることはできません。
ところが、地球上の生命体のうち、陸上種の86%、海洋種の91%が未知種だというのです。
(https://tenbou.nies.go.jp/news/fnews/detail.php?i=6363)
これでは、管理者・支配者の資格などないでしょう。
誰が、どこに、どれだけ住んでいるのかも知らずに、管理・支配などできるはずもありません。だから、まずは知ることが優先的に重要になります。それゆえ「生命を慈しみ、生命を理解する必要がある」ことには、合点がいきました。
人類もまた他と同様に地球上に生まれた生命体です。
人類は他の生命体の管理者・支配者ではなく、他の生命体と共に生きる共同生活者である、と考えるべきではないでしょうか。