福島第一原発から出た処理水の議論
福島第一原発の事故による放射線で汚染された水を、ALPS(多核種除去設備)等を用いて安全に関する規制基準値を確実に下回った水(ALPS処理水:トリチウムを除く告示濃度比総和1未満)を海洋放出することについて、中国や韓国が日本を非難しています。
トリチウム(三重水素)が海洋を汚染するとする批判については、中国や韓国は「ALPS処理水」の数倍ものトリチウム(液体)を処分していることが経産省のHPに掲載されています。(図1)
図1
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/no2/
中国や韓国の反対派には、この図を見せて「批判するならまずは自国を批判せよ」と言い返して欲しいです。
一方、この図からは、確かに中国や韓国が「ALPS処理水」より多くのトリチウムを処分していることがわかりますが、処分方法がわかりません。
海洋放出であるなら、一言そう書くべきでしょう。それが示されていないので、「何かを隠しているのか?」といった疑念を抱く人が出てきても不思議ではありません。日本政府のアピール下手を感じてしまいます。
「ALPS処理水」海洋放出反対の理由には、「排出される処理水が、通常の稼働下で排出される冷却水とは質が異なる」といったものもあります。
これは、2021年4月に日本政府が海洋放出を発表した際に、中国の専門家らが示した批判の根拠の1つになります。
(https://diamond.jp/articles/-/269625)
同様に、「原子力市民委員会」は事故炉から処理水であることを問題にしています。
(http://www.ccnejapan.com/?p=13899)
ただし、経産省や東京電力のホームページにある「ALPS処理水」の説明では、"トリチウム以外の放射性物質が、安全に関する規制基準値を確実に下回るまで、多核種除去設備等で浄化処理した水"
とあります。
であるならば、通常の原発から出された排水と質が異ならないのではないでしょうか?経産省や東電は、そのことを積極的にアピールすればよいと思います。
また、批判する側も通常の原発から出される排水と、事故炉から出された「ALPS処理水」のどこが異なり、どのように危険なのかを具体的に示す必要があります。でなければ、科学的な議論はできません。
反対派には科学的な根拠に基づいた批判を、日本政府には反対派の意見に対して、論理的に説明(反論)することを望みます。