また、だまされるかもしれない次の総選挙

 今回は、防災や地球科学などとは直接関係がありませんが、政治のホットな話題を取り上げたいと思います。
 現在の衆議院の任期満了は10月21日で、その前に9月29日投開票の自民党総裁選挙があります。
 昨日9月3日、菅義偉首相が退任の意向を示しました。これにより、少なくとも総選挙前に自民党総裁の交代、内閣総理大臣の交代が確定しました。自らの保身しか考えていない一部の自民党議員にとっては、新首相・新内閣というご祝儀相場で選挙に臨めると喜んでいるかもしれません。

 菅内閣のもとでの選挙であれば敵失で有利とみていた野党も慌てていることでしょう。立憲民主党の枝野幸男党首は菅首相の退任を「無責任」と批判しました。また批判か、と思った人も少なくないのではないでしょうか。この場合、菅首相が「コロナ対策に専念」と言ったのですから、「では明日にでも国会を開きましょう」ぐらいのことが言えないものか?と思ってしまいました。

 来たる総選挙で、新内閣への期待感・ご祝儀相場の気持ちをそのまま投票に持ち込んだら、嘘や隠蔽、改ざん、お友達優遇、国会軽視といったこれまでの政治が続くことになるでしょう。「国民なんか簡単にだませる」と、ますます国民不在の政治が加速してしまいます。
 「新型コロナ対策は誰がやっても批判される」と、安倍・菅政権を擁護する声もありますが、台湾やニュージーランドなどのように、国民から支持された政府もあります(ただし支持は流動的です)。ザルの水際対策、初動の遅れ、アベノマスク、五輪優遇の特例など、安倍・菅政権による対策は総じて国民に支持されませんでした。
 その間、自民・公明の議員たちはいったい何をしていたのでしょう?安倍・菅政権の失政に不満を抱く国民の声を、一体誰が代弁して政権を批判し、軌道修正を進言したのでしょうか?「政権批判しようものなら次期選挙で公認がもらえない」などと、自らの保身しか考えていない議員が山ほどいたのではないでしょうか?
 自分の選挙区の自民党または公明党議員が、この一年半余どれだけ自分たちの声を聞いて動いてくれたのか?そのことを決して忘れないで欲しいと思っています。

 では、野党はどうでしょう?野党議員も同じく自分の保身しか考えていないとしか思えません。仮に現政権に取って代わるつもりがあるなら、部分的でもいいですから影の内閣をつくって、現政権とは違う国民に期待を抱かせるような新型コロナ対策や経済対策などを逐次アピールすべきです(国民民主党は10万円給付をいち早く訴えていました)。ところが現実は、特に野党第一党の立憲民主党は、現政権への批判ばかりが目立っていて、政権奪取の本気さが全く伝わってきません。
 与党が支持を下げても支持率が上がらない今の立憲民主党は、まさに自公政権の最大のアシスト勢力です。
 国民が欲しているのは政権批判だけではなく、自公政権に取って代わることができる、対案を示す政権奪取に本気の野党の存在です。かつての民主党がそうでした。しかしながら、政党としての未熟さや個々人の能力の問題などから、国民の期待は失望へと変わりました。
 このことをもって一部の自民党の支持者などからは、しばしば「悪夢の民主党政権」といった言葉が出てきます。しかし、民主党政権は東日本大震災のときにちゃんと国会を開いていました。一方、安倍・菅政権は憲法違反であるにも関わらず、野党の求めに応じて臨時国会を開きませんでした。民主党のほうがまだマシでした。コロナ禍の安倍・菅政権は「悪夢が正夢になった自公政権」です。


 次の総選挙は菅内閣に対する国民の審判ではなくなりました。新内閣にご祝儀相場はつきものですが、今回ばかりはそのことは横に置いて、安倍・菅政権のコロナ対策を支持した自公政権(自民党・公明党議員)への審判と考えて欲しいです。
 とはいっても、今の野党に期待が持てないのも事実です。自公過半数割れまで追い込むことすらできないかもしれません。しかし、それでは今までと何も変わりません。首相の顔がかわっても結局中身は同じ。嘘、隠蔽、改ざん、お友達優遇、国会軽視などが続くことになります。ただし、これまでの嘘、隠蔽、改ざんを白日の下にさらし、責任を追及できるなら話は別です。
 新首相・新内閣を支持するとは、安倍・菅政権を批判してこなかった自民党・公明党議員を支持することを意味します。しかしながら、その時の雰囲気(空気)に流されてご祝儀相場になる可能性のほうが、現時点では高いとみています。(残念!)

2021年09月04日