過去にもあった放射性物質の海洋処分

 福島第一原発からでたALPS処理水の海洋放出により、放射性物質の海洋処分に人々の関心が集まりました。

 田嶋陽子氏(元国会議員、元大学教授)は、テレビ番組の中で、魚の形態変わるんじゃないかとコメントしました。
(https://www.huffingtonpost.jp/entry/fukushimafc5_jp_651101e7e4b0e83)

 トリチウム以外の放射性物質に着目しても、海洋処分は今に始まったことではありません。
 世界的な取り決め(条約)以前は、各国が実施していました。日本も、です。
 表1 は、過去に行われた海洋投棄における国別投棄放射能量を示したものになります。

表1: 1946年〜1993年に実施された海洋投棄における国別投棄放射能量
(https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_05-01-03-22.html)

 47年間で、約 85,078 TBq (テラベクレル) が海洋投棄されています。そのうち、トリチウムは 15,569 TBq となっています。

 なお、このホームページ(国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構発機構)によると、「海洋投棄」とは、濃縮された液体廃棄物をドラム缶にセメント等で充填・固化し、その固化体を容易に破損しない方法で公海に投棄することを指します。
 一方、放射性液体廃棄物の放射能を各国政府の定める許容濃度より十分低いレベルにして、沿岸海域等に排出する方法は「沿岸放出」になります。福島第一原発のALPS処理水の海洋放出は、これに相当します。
 そして、これら2つを合わせて「海洋処分」(放射性廃棄物を回収の意図なしに、人の管理下から海洋に移行する最終措置)となります。
 図1 は同様に、国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構発機構 のホームページにある、海洋投棄した海域を示したマップになります。

図1: 1949年〜1982年までに行われた海洋投棄の海域
(https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_05-01-03-22.html)

 日本沿岸でも海洋投棄されています。
 今から約50年以上も前のことです。たとえ深海に投棄したとしても、ドラム缶の一部が破損し、なかのセメント固化体が崩れて出ている可能性も考えられます。
 また、トリチウムに関しては、正確には「海洋投棄」ではなく、「沿岸放出」だったのかもしれません(そこまでの記載を見つけられませんでした)。

 となると、田嶋陽子氏が言う「魚の形態変わるんじゃないか」が正しいとしたら、すでにそのようなことが表面化していてもいいのかもしれません(ただし、ドラム缶破損等の話はあくまで憶測です)。

 気になったのが、トリチウムの放出量です。
 表1 では、47年間で 15,569 TBq です。ところが、フランスの再処理施設から出たトリチウムは、たった1年間で10,000 TBq です。
(https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/no2/)

 再処理施設は、とてつもない量のトリチウムも生成していることがわかります。
 なお日本では、この再処理施設が青森県六ヶ所村に建設されています(すでに26回も完成が延期されてますが、、、)。
(https://jp.reuters.com/article/idJP2022122601001073)

2023年10月11日