大地震の事前注意の呼びかけ (2)

 南海トラフに加えて、千島海溝と日本海溝についても、巨大地震の事前注意呼びかけの検討を国が始めたことを「大地震の事前注意の呼びかけ (1)」で紹介しました。

 国は警戒宣言を出せるほど確実な地震予測(つまり地震予知)はできない、としています。しかし、本当に発生するかしないかわからないけど、観測データに異常が見られた場合には、事前に注意情報を出すとしています。
 地震発生の事前注意情報を出すといったことを、南海トラフ以外にも広げると言うのであれば、国にはそうした情報を出せる機関(または個人)を限定する法律も制定すべきではないかと思っています。

 気象に関しては、気象予報士以外が予報してはいけないと平成6年度の気象業務法の改正によって定められています。しかし、地震動と火山現象及び津波については、そのような制度がありません。こうした現状に対して、尾池他 (2018)※ は地震火山予報士の制度化を提唱しています。
 現在、民間企業や個人などが、地震予測(予知)情報を有料で配信しています。また、一部メディアが定期的にそれらを宣伝していることもあり、ある民間企業では有料会員が5万人とも言われています。

・地震の起きる地域には偏りがある。→日本は地震がたくさん起きる場所
・大きな地震は滅多発生しないが、小さな地震はたくさん発生している。→小さい地震は桁違いに数が多い
など、地震に関する少しの知識と、統計に関する少しの知識、さらに人の心理に関する少しの知識があれば、こうした地震予測の有料情報が、単なるゴミでしかないことを見抜くことができます。

 しかし、何万人ものひとがお金を出してゴミを買っているといった現状を考えると、これ以上騙される人をなくすためにも、国として、気象予報士のような制度を地震等についても設けてほしいと思ってしまいます。

※)尾池和夫・金田義行・北川源四郎・鳥海光弘・樋口知之(2018): 特集 地震予測の新しい考え方[座談会]地震予測と「第4の科学」データに駆動された新たなアプローチへ(後編), 科学, 8(86), 0563-0569.

2021年09月13日