首都直下の想定地震が見直される可能性

 2013年に内閣府中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループがまとめた資料、"【別添資料4】首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)" によりますと、首都直下のM7クラスの地震を防災対策の主眼を置く、とされています。

 一方、相模トラフ沿いのM8クラスの地震 【大正関東地震タイプの地震(Mw8.2)】は、当面発生する可能性は低い(2120〜2320年頃?)ので、長期的視野に立った対策の実施、としています。また、大正関東地震よりも、さらに規模が大きい元禄関東地震(1703年、M8.5)規模のものは、2000〜3000年程度の間隔で発生すると考えられるため、さらに切迫性は薄れます。

図1 南関東で発生した地震(1600年以降、M>6.0以上)
中央防災会議, 2013, 【別添資料4】首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告) より


 これに加えて、M8クラスの海溝型地震として、大正関東地震で破壊されなかった元禄関東地震の震源域として、房総半島の南東沖、日本海溝の1677 年延宝房総沖地震も想定にあります。これらも当面発生する可能性は低いと考えられています。

図2 M8クラスの海溝型地震
中央防災会議, 2013, 【別添資料4】首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告) より

 ところが、先月 "1000年前「未知の巨大地震」が発生か、九十九里浜に大津波の跡" といった9月25日付のニュースがありました。
(https://www.yomiuri.co.jp/science/20210925-OYT1T50201/)

 産業技術総合研究所などのチームによりますと、千葉県の房総半島沖で1000年ほど前に未知の巨大地震があり、九十九里浜一帯が大津波に襲われた可能性があるとのことです。地震の規模はマグニチュード (M) 8.5〜8.8 と、かなり大きなものです。
 平安~鎌倉時代にこのような巨大地震と津波があったとの記録がないため、首都直下地震対策検討ワーキンググループでも当然ながら、このことは考慮されていません。したがって、M8クラスの巨大地震発生の可能性が、今後これまでよりも高く見積もられる可能性が出てきました。

 今回の産業技術総合研究所らの研究チームによる発見は、首都圏の防災を考える上で非常に重要な報告です。

2021年10月04日