日本地震学会2025年度秋季大会にて発表(1)
10月20日〜22日までの3日間、福岡市の福岡国際会議場で開かれた日本地震学会2025秋季大会にて研究発表を行いました。今年は口頭発表に加え、ポスター発表も行いました。
ここでは、口頭発表を取り上げます。今回は地震教育・地震学史セッションにて「地震発生のうわさとどう向き合うべきか」のタイトルで発表しました。
今年の7月5日に大災害(地震・津波)が発生するといったうわさが、日本のみならず海外にも広まりました。本ブログでも何度が取り上げています。この出来事から地震流言に対して、学校の教員が何を生徒に示すと良いのか、といった視点でお話ししました。
地震流言とは、不特定多数の人に広まった大地震発生のうわさを指します。過去の地震流言を見ますと、いくつかの共通項が見受けられます。
一つ目は、発生日が指定されていることです。場合によっては時間まで特定されています。
二つ目は、うわさの出所はもっともらしい権威を利用している点です。例えば「東日本大震災を言い当てた人」などです。
三つ目は、しばしば流言が広まる背景に、不安を助長する出来事があることです。例えば、大地震そのものです。どこかで大地震が発生した場合、地震に見舞われた地域では、地震再来流言が広まることがあります。また、震源地から離れた地域でも地震流言が広まることがあります。1995年阪神・淡路大震災の後には、福島県の会津若松地方などで地震流言が確認されています。
本発表では過去の地震流言として、以下の8例を取り上げました。
1) 2025年4月26日、首都直下地震
2) 2016年5月17日、南海トラフ地震
3) 2012年1月25日、東海地震or首都直下地震?
4) 2008年9月13日、東海地震(M8.6)
5) 2007年9月13日、富山付近でM8.1、最大震度7
6) 2005年4月27日午前2時頃、福岡で震度7
7) 2004年12月4日、 秋田で震度8
8) 2003年9月16, 17日±2日、南関東でM7.2
いずれの場合も該当する地震は発生していません。
この8例に限らず、日時と場所、地震の大きさを言い当てた地震流言は、少なくとも私の知る限りひとつもありません。
「過去の地震流言はひとつも当たっていない」という事実を伝えることで、不安を抱える子供たちの心を、少しは和らげることができるのではないかと考えています。
そもそも地震流言はデマ(事実に反した内容で人を煽る話)です。
なぜなら、「現在の科学では、日時と場所、大きさを特定した地震予知は不可能」だからです。地震予知の実現を目指して研究し続けている私も認めざるを得ない事実です。
ですから、日時と場所、地震の大きさを特定していたらそれは「デマ」です。
このことを子供らに伝えることも、不安解消に役立つと考えます。
また、菊池(1998)の予言者による予言の特徴から、以下の3つを取り上げました。
a) たくさんの予言をする
b) あいまいな予言をする
c) 悪いことを予言する
a) 下手な鉄砲数打ちゃ当たる、たくさん予言すれば、何個かは当たる場合があります。しかし、多くはハズレです。しかし、人間は当たったことは強く印象付けられる一方で、ハズレた内容は忘れてしまう傾向にあります。予言者はこうした人の心理を巧みに利用しています。
b) 内容があいまいであると、理由を後付けして当たったことにしてしまうことができます。
c) 予言がはずれても、「悪いことが起きなくてよかった」と、失敗責任を追及されない傾向があります。地震予言など災害予言は、まさにこれが該当します。
こうした予言者の裏事情を知ることも、不安解消に役立つのではないかと提案しました。
今後も地震流言は発生するでしょう。そのときに、本発表の内容が不安解消に役立てば、と思っています。