ヤフーコメントから探る民間の地震予測を信じる理由、のタイトルで発表

 先週の土曜日(10月16日)、日本地震学会秋季大会の地震教育・地震学史のセッションで「ヤフーコメントから探る民間の地震予測を信じる理由」と題した口頭発表を行いました。今年もリモート開催の大会でした。

 本発表は、週刊ポストが年に数回記事にする「MEGA地震予測」に関するものです。MEGA地震予測とは、村井俊治氏が取締役会長を務める株式会社地震科学探査機構(JESEA)が配信する地震予測情報のことです。

 MEGA地震予測は、「ノイズをシグナルとしている」、「ハズした予測を後から当たりにしている」、「日本中が年中警告エリアになっている」などの批判が絶えないにも関わらず、有料会員は5万人ともいわれています。なぜ、これほど多くの人たちがそうした情報を購入するのか?別の言い方をすれば、どのような理由で信じているのか?その理由を知りたいと常々思っていました。


 今年の4月26日に、NEWSポストセブンからMEGA地震予測の記事が配信され、Yahoo!ニュースでも取り上げられました。Yahoo!ニュースには読者が投稿できる「コメント欄」があります。今回の研究では、このコメントをデータとして扱い、MEGA地震予測に対して、どのような理由から好意的もしくは批判的なのかを探ってみました。そして、その結果を先週の学会で発表しました。

 MEGA地震予測に好意的な理由は、「予測内容を信用」しているものが割合として最も多く、次いで「注意喚起の情報として容認」でした。この2つで8割以上を占めました。一方、批判的な理由は、予測エリアが広すぎる等から「当たって当然」とするものが約7割で最も多くなりました。次に、ハズした予測を後で当たったことにしている、当たった事例だけをアピールしている、など「予測成功を装うことへの批判」が1割強でした。
 好意的な理由として最も多かった「予測内容を信用」については、一見科学的にみえる手法の問題点を理解したり、絶対に当たる占いと同じ手法を用いていることなどに気づいたりすれば、現時点で抱いている信用が揺らぐかもしれません。しかし、「注意喚起の情報として容認」している人たちの中には、ハズレてもOK、と半ば信者的な人もいます。こうした人たちが自らの考えを変えるのは難しいかもしれません。


 MEGA地震予測については、以前、拙著『地震前兆現象を科学する』(2015年)のなかでも、過去情報(データ)を公開すべきだ、と主張しました。有料会員は将来のことが知りたくてお金を出しているわけですから、過ぎてしまった情報に価値はありません。したがって、過去の配信情報をそのまま公開しても問題はないはずです。しかし、いまだに過去のデータは公開されていません。これでは当事者や週刊誌などが宣伝するように、本当に予測が当たっているのかどうかを第三者が検証ができません。もしかしたら、過去の予測情報を公開すると、有料会員が減ってしまうことを恐れているのではないか?と勘ぐってしまいます。

2021年10月18日