観測網設置が早ければ北伊豆地震は予知できたのか?
先日、興味深い記事が Yahoo News にありました。
「地震予知に初めて成功しそうだった91年前の北伊豆地震」饒村曜気象予報士 11/26(金) 4:04
(https://news.yahoo.co.jp/byline/nyomurayo/20211126-00266497)
1930年11月26日伊豆半島北部の丹那盆地でマグニチュード7.3の北伊豆地震が発生しました。死者・行方不明者は全国で272名にもなりました。この地震はまた、丹那断層が動いたことで当時建設中だった丹那トンネルが直線でつながらなくなってしまったことでも知られています。
この地震では前震が顕著でした。気象台は十数日続く群発地震の様子を見て危険性があると判断しました。そこで、震源地を囲む韮山、三島、湯河原、網代の4か所に臨時の観測網を設置することを決め、26日朝に観測機を持っていく準備をしていました。しかし、地震はその直前26日午前4時3分ごろに発生しました。
この Yahoo News 記事では「口惜しがる気象台 大地震を予知して準備中にこの災厄」(昭和5年(1930年)11月27日の東京朝日新聞)といったタイトルの、当時の新聞記事が紹介されています。
果たして、臨時の観測が開始されていたなら、北伊豆地震は予知できたのでしょうか?
地震予知とは、いつ・どこで・どの程度の大きさの地震が起きるのかを、予め確実に言い当てることです。
「どこで」については、群発地震があった北伊豆地方ということで当てられたでしょう。
「どの程度」については、確実なマグニチュードまでは示していませんが「大地震」と言っています。
「いつ」についてはどうでしょうか?結論からいえば、言い当てられなかったことになります。十日以上続いていた地震活動で、臨時観測開始直前に地震が発生してしまったわけですから、「いつ」は当てられなかったことになります。
では、臨時観測を行っていれば予知は可能だったのでしょうか?
臨時観測が数日早かった場合を仮定してみます。警戒情報などが発表されていたなら、数日後地震があったので「予知成功」といわれたかもしれません。一方、そうした発表がなかったなら「失敗」といわれたでしょう。
今日でも、前震は本震発生後に「前震だった」といわれるレベルです。しかし、小さな地震を大きな本震を伴う前震なのか、それとも小さな地震で終わってしまう地震なのかを区別する研究が進められ、興味深い結果を紹介した論文もあります。
2011年東北地方太平洋沖地震では、2日前にマグニチュード7.3の地震がありました。2016年熊本地震では震度7の直下型地震が立て続けに発生しました。このような地震に対して将来、「これは本震ではない可能性がある」といえるようになれば、それだけでも(予知はできませんが)災害軽減につながる情報になるかもしれません。