地震予知研究のあり方 (1)

 「関東で地震」、「山梨で地震」、「和歌山で震度5弱」など、最近地震が多いと話題になることがあります。そして、週刊誌などでは「首都直下地震」や「南海トラフ巨大地震」、「富士山噴火」で不安を煽る記事が次々とでてきます。しかし、警戒宣言を出せるような確度の高い地震の予測、つまり地震予知はできないのが現実です。ですから、私たちはいつ起きでもおかしくないといった心構えと準備が必要になります。

 さて、科学的な予知ができないのになぜ研究を続けるのでしょうか。
 1880年に世界初の地震学会を日本に創始したジョン・ミルンは「地震学が研究されるようになって以来、その学徒の主要な目的の1つは、地震の到来を予言 (foretell) する何らかの方法を発見することである」と述べ、地震予知の研究が地震学の重要な課題であることを説いています(泊, 2013)。日本では地震学の草創期から地震予知を目指していたということです。

 しかし、いつ・どこで・どの程度の大きさの地震が起きるのかを事前に100%の確率で言い当てること(地震予知)ができないなら、予知研究はどこに向かっているのでしょうか。
 ひとつは、いつ・どこで・どの程度の大きさといった地震予知の三要素について、確率で示すといったことです。
 ある現象が観測された場合、いつ・どこで・どの程度の大きさの地震が発生するのかを、可能性として確率(パーセンテージや割合)で示します。この確率が偶然起こるよりも高い場合は、地震に先行して観測される"ある現象"が前兆現象である可能性が示唆されることになります。そして、地震に先行する現象と地震との間の物理的因果関係を示すことが最終目的になります。ただし、そこまでいかなくとも、相関関係が示されれば実用的な予知手法になる可能性はあります。現在進められている地震予知研究の多くはこれでしょう。
 もうひとつは、動物異常行動で見られる研究手法になります。動物がどのような外からの刺激に反応して異常行動を示すのかを実験などから明らかにしようとするものです。ただし、この場合は外的刺激(においや音、電磁気など)が地震の前兆現象であることを示さなくてはなりません。そうなると、ひとつめの手法により、少なくとも相関関係のある外的刺激となる現象を見出す必要があります。

 となると、まずは前兆現象といえる地震に先行する現象を見つけることが地震予知研究の本筋といえそうです。実は、これは上田(2001)が唱えていたことになります。

2021年12月20日