津波避難と地震予知

 "「津波避難タワー」費用負担が課題…「高齢者にはきつい」建設しても使われないケースも"
 (https://news.yahoo.co.jp/articles/e8422b65a723b1ffc7541df359254d84862fe149)
といった読売新聞オンライン記事(2022/4/6付)を目にしました。

 2011年東日本大震災以降、全国で500棟近くの津波避難タワーが建設されましたが、階段を登るのは高齢者にとってはきついため、実際にお年寄りの命を救う手段になり得るか疑問があるとのことです。
 これに対してヤフーコメント欄には、「若者の命が助かるならタワー必要」、「高齢者は別の対策を考えるべき」、「弱者保護は道徳的観点から理解できるが・・・」などの意見がありました。

 「津波てんでんこ」は、三陸地方にある言い伝えで、地震が来たらてんでんばらばらでも、とにかく(津波から)逃げて自分の命は自分で守れ、といった意味とされています。
 若者と高齢者の避難を別々に考えている前述のヤフコメは、この津波てんでんこに通じるものがあると考えます。

 いつ・どこで・どの程度の地震が発生するのかをほぼ100%の確率で言い当てる、いわゆる地震予知は少なくとも現時点では不可能です。それでも地震予知研究が必要な理由として、「予知でなければ救えない命がある」といわれることがあります。
 津波到達前に避難タワーに登り終えない高齢者などの命は、確かに地震を予知して発生前に安全な場所に移動させれば助けることができます。

 しかし、地震予知研究が進んだとしても、次の南海トラフや首都圏直下などの大地震までに、100%確実な地震予知はできないでしょう。それでも、例えば「30%程度の確率で起きる」といった言い方ができるようになるかもしれません。
 ただし、こうした不確実な情報を実際の防災に活かすには、空振りや避難解除後に地震が発生する場合もあることなどについて、市民の理解と同意が必要になります。
 地震予知研究は理学的な真理探究に加え、それを実用化するための工学的要素、さらに社会学や心理学などの要素もからんできます。

2022年04月11日