ボラの大量死は地震前兆か?
東京新聞から「東京と大阪で同時期にボラが謎の大量死 新月での大潮が酸欠招いた?」といった記事が、5月8日に配信されました。
(https://www.tokyo-np.co.jp/article/176053)
記事によりますと、3月6日に東京都大田区の呑川で体長12~13センチのボラを中心に約1000匹が死んでいるのが見つかりました。また、大阪市では、3月7日と8日に大阪城に近い平野川と第二寝屋川で、体長約20センチのボラ約7500匹が死んでいるのが見つかりました。
その後、3月11日に兵庫県南東部を震源とするマグニチュード(M)4.2の地震(最大震度3)、3月16日には福島県沖で M7.3 の地震(最大震度6強)が発生しました。
東京と大阪のボラ大量死は、これらの地震の前兆ではないか?といった話がネットで広がっていました。
この件について、東京新聞からコメントを求められました。
ボラの大量出現や大量死は、春にニュースになることがよくあります。
ボラと地震との関連をデータに基づいて調べたことはないので、はっきりしたことは言えないものの、今回の件は、しばしば発生する春のボラ大量死の後に、たまたま目立つ地震があったから、これらを結び付けようとしたのではないか、とお答えしました。
こうした関連づけは人間の心理的な作用(本性)によるものの可能性が考えられます。
今回はたった2事例ではありますが、ボラ大量死の後に地震がありました。しかし、地震を伴わなかったボラの大量死はこれまでにもありました。さらに、ボラの大量死が先行して発生していない地震は、相当数あります。
何かの出来事と別の何かの出来事との関連性を考える場合は、以下に示す4つの場合(四象限の窓)について、それぞれがどの程度の頻度で起きているのかを考える必要があります。(ボラ大量死と地震を例に)
前兆ではないか?という今回のネット情報は、① だけを取り上げています。
地震はマグニチュードが1小さくなると、桁違いに発生数が増えます。
3月11日に兵庫県南東部で発生した地震程度の規模(マグニチュード4)であれば、日本周辺で年間900個程度発生しています(2001〜2010年の気象庁地震データより)。このことを考慮すれば、②ボラ大量死なし&地震ありのケースが非常に多くなることが容易に想像できます。
今回のネット上のうわさは、1日平均2回程度発生する出来事に対して、別の出来事がたまたま場所と時期が2回連続して重なったに過ぎない、と考えるのが妥当かと思います。