【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(2) カラス
【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(1) に引き続き、今回は「カラス」について考えてみます。
読売新聞の記事(2011年7月2日夕刊13ページ)によりますと、宮城県石巻市で震災当日の午前1時50分頃、公園で普段暮らす3倍近い約50羽のカラスが、すごい鳴き声をあげながら飛び回っていたとのことです。5年間で初めての経験だったとのことです。
地震前にカラスが騒いでいた、といった話はよく耳にします。では、ことわざではどのように言われているのでしょうか。
『災害予知ことわざ辞典』(大後美保, 1985)には、
・カラスが早口で鳴く時は地震あり 各地
・地震のあとカラスの宿る森でカラス鳴かざる時は続けて地震あり 各地
の2つが載っています。
他に、消防庁が収集した防災に関わる「言い伝え」では、
・地震が起きる前には、スズメ・カラス等の鳥がいなくなる 富山県小矢部市
・カラスが騒ぐと、地震が来る 宮崎県串間市
がありました(https://www.fdma.go.jp/publication/database/item/database009_02_02.pdf)。
意外なことに、「地震前にカラスが騒ぐ」といった言い伝えは全国各地にあるわけではなかったようです。
一般的にカラスの繁殖期は3月〜7月頃になります(https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-1b/01.pdf)。
そして、繁殖期は警戒心が高まり鳴くことがあるようです(https://rescue.epark.jp/brands/sharing/害鳥/2257)。また、カラスは起床時間が早いため、午前0時頃に起きる個体もいるようです(https://meetsmore.com/services/harmful-animal-removal/media/112127#:~:text=夜中巣に近づかれ,て仲間を呼びます。)。
このようなことを考慮すると、3月の午前2時頃にカラスが騒いだ原因は、地震とは関係ない別の理由だった可能性も浮上してきます。
カラスはいつ騒いでいるのか? Yahoo!リアルタイム検索により「カラス 地震」で過去1週間(8/13-8/22)を調べてみました。すると、毎日日本のどこかでカラスが騒いでいたり、カラスの大群が見られていたりしていました。
ほぼ毎日、日本のどこかでカラスが騒いでいたり、大群が出現したりしているようです。一方、地震については、小さいものを含めれば、日本周辺で毎日発生しています。
しばしば起きる出来事どうしを比較する場合、その中でも数が少ない出来事に着目するとわかりやすくなることがあります。 今回の例でいえば、発生数が少ない大きな地震に着目し、その前に見られたカラスの異常行動が、他の時期の異常行動と区別できる特徴を有しているか?を調べることです。
震源により近い場所でより多くのカラスが騒いでいた、騒いでいるカラスの数がいつもよりはるかに多かったなど、同じカラスの騒ぎであっても、客観的に異なると判断できる行動が大きな地震前のみに見られるかどうかを調べることができれば、少なくとも、カラスの騒ぎが大地震発生の注意を促すような情報になりうるか否かを判断することができます。
ただし、そのためには毎日のカラス定点観測データが必要になります。
であるなら、上述した3.11前のカラスの事例は5年間の定点観測になるのでは?と考える人がいるかもしれません。残念ながら人の記憶はあいまいで、印象に残らなかったことは忘れてしまう傾向があるため、客観的なデータとはいえません。それでも、興味深い話ではあります。