【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(3) クジラ
今回は3つの事例の最後「クジラ」について考えてみます。
読売新聞の記事(2011年7月2日夕刊13ページ)によりますと、震災一週間前の3月4日、茨城県鹿嶋市の海岸で、小型クジラのカズハゴンドウ54頭が打ち上げられました。
そして、同様の現象が同年2月のニュージーランド・カンタベリー地震(マグニチュード6.1、死者185名)の前にもあったと紹介されています。地震の数日前に同国南西部の島で107頭のゴンドウクジラが打ち上げられました。
カズハゴンドウ54頭の打ち上げは、本震の一週間前、前震の5日前と時間的に近いです。場所は震源からは少し遠い茨城県ですが、地震の規模(マグニチュード9.0)が非常に大きいので、震源から遠くても異常が現れたと考えられなくもありません。
この件については、織原・野田 (2015) で検証していますが、結論から言えば両者には関係がない、と考えるのが妥当です。
カズハゴンドウ54頭が打ち上げられた鹿島灘に面する海岸では、過去にも何度か集団でクジラやイルカが打ち上げられていました。2001年1月から2011年3月までに6回ありました。そして、その6回は全て2月〜5月に起きていました。
鹿島灘は遠浅でクジラなどが一度海岸付近に迷い込むと外海へ脱出しにくい地形であることや、集団打ち上げの発生が春あたりに集中していることから、仮に自然現象が原因であったとしても、それは地震ではなく別の現象(海流の変化など)と考えた方が合理的です。
実はこの話には後日談があります。
2015年4月10日、同じ鹿島灘に面する海岸でカズハゴンドウ156頭が打ち上げられました。2011年3月と同じ場所で、同じカズハゴンドウが、今度は前回よりも100頭以上多く打ち上げられました。
この事件はワイドショーでも取り上げられ、コメントを求められたので、過去に何度もあった出来事で地震との関連は考えにくい、といった主旨の説明をしました。事実、この後に3.11同等の巨大地震は発生しませんでした。
もうひとつ、2011年2月のニュージーランド・カンタベリー地震について付け加えます。
2011年2月22日の地震は余震で、本震は2010年9月4日に発生しています(マグニチュード7.0)。また、2011年6月13日にはより大きな余震(マグニチュード6.3)が発生しています。しかし、それらの前にクジラやイルカの集団打ち上げがあったとの情報は見当たりません。
ニュージーランドについても、過去にどれだけ集団打ち上げがあったのか、客観的なデータから地震との関連を考察する必要があります。