地震発生確率の長期評価をどう考えたらよいか

 1月13日、政府の地震調査委員会は、大地震が今後起きる確率を予測する長期評価の最新版(算定基準日2023年1月1日)を公表しました。
https://www.static.jishin.go.jp/resource/evaluation/long_term_evaluation/updates/prob2023.pdf
https://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/ichiran.pdf

 マス・メディアもこの件を報道しています。例えば、産経新聞から活断層に関する記事を紹介すると「活断層の地震では、岐阜県から三重県に延びる養老-桑名-四日市断層帯のM8程度の地震では、30年以内の確率が昨年のほぼ0~0.7%からほぼ0~0.8%に上昇した」とあります。
(https://www.iza.ne.jp/article/20230113-QYJAHSYHGNJXDATFAVDZMDC4QI/)

 おそらく多くの人にとっては、地震の発生確率が0.7%から0.8%に上昇したことに、特別な意味を見出すことは難しいでしょう。「そもそも0.7%とか0.8%って、警戒する必要ないんじゃないの?」って考えるのが普通ではないかと思います。

 活断層の大地震は発生間隔が非常に長いため、確率で表すと低い値になってしまいます。
 これでは一般市民に地震の切迫度が伝わらないないため、地震調査委員会は2016年熊本地震の後にランク分けの評価も示すようになりました*1)。
 Sランクが相対的に最も危ない活断層で、Aランク、Zランクと続きます。Xランクは地震発生確率が不明な活断層になります。
 しかし、ランク分けであっても、SランクよりZランクの安全、などと安心情報にならないとも限りません。

 私は地域防災で講演する際に「発生確率は参考程度に」とお話ししています。
 発生確率に使われる平均活動間隔は、例えば、(熊本地震の)布田川断層帯・布田川区間のように、8,100年~26,000年程度と大きな幅(1万年以上など)がある場合があります。言い換えれば、誤差が1万年以上もあるということです。人の一生(せいぜい100年)を考えたら、とてつもなく長い誤差になります。
 したがって、近隣に活断層があったなら、(発生確率は考えずに)いつ地震が発生してもおかしくない、といった心構えで対策するようお話ししています。

 加えて、現在知られている活断層以外にも、日本には発見されていない活断層があり、日本中どこでも地震が起こりうると考えた方がよい、といったこともお話ししています。

*1) 熊本地震の発生時点で、布田川断層帯(布田川区間)における今後30年以内の地震発生の確率は、ほぼ0~0.9%でした。
この表現では、「防災を担う自治体担当者や一般国民に、正しく危険性を伝えられていない」、「あたかも降水確率を見るかのように、「起こらない確率」が高く見えてしまい、かえって安心情報になっている」などの指摘を国会や報道などから受け、表記が見直されました。
(https://www.jishin.go.jp/main/seisaku/hokoku16j/sg60-5.pdf)

2023年01月27日