トルコ・シリアの地震と怪しい雲 (1)

 2月6日未明にトルコとシリアの国境付近を震源とするマグニチュード7.8の地震が発生しました。
(https://www.usgs.gov/news/featured-story/magnitude-78-earthquake-nurdagi-turkey)
 日本時間10日朝の時点で、死者は2万人を超えていると報道されています。

 さて、この地震が発生する前の1月19日朝に、トルコ・ブルサ県に赤みを帯びたレンズ雲が現れました(下写真)。

写真:https://forbesjapan.com/articles/detail/60364 より

 写真元のフォーブスジャパンによれば、「複雑な地形に強い風が吹き、空気中の水蒸気が交互に圧縮、減圧され、その結果、その下にある地形を反映したような形状に凝縮された」ときに出現するとあります。また、赤色については、「日の出の瞬間かそれに近い時間に撮られた」ため、赤みを帯びたとあります。朝夕の空の色は、朝焼けや夕焼けを想像するといいかもしれません。

 しかし、ネット上では、この雲が地震の前兆だったという、いわゆる地震雲説が出てきました。予想していた通りです。
 残念なのは、それを紹介するネット記事です。

 2023/2/7(火) 18:39 日刊スポーツ配信の記事では、気象学者で雲研究科の荒木健太郎氏がツイッターで「雲は地震の前兆にはなりません」としたことを中心に紹介しています。単に、他人のツイートを紹介しているだけです。
 マスコミとしての自覚があるなら、記者自身がもう少し調べて記事にすべきです。
 下図は、この雲が発生した場所と、今回の地震との位置関係です。

図:https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/us6000jllz/map?historic-seismicity=true&shakemap-intensity=false に加筆

 上図が示すように、雲が発生したブルサ県と震源となったガジアンテプ県カフラマンマラシュは、直線距離で 700km以上あります。
 仮に、ブルサ県の雲がカフラマンマラシュの地震の前兆だったとするなら、日本でいえば、東京の地震の前兆が東京ではなく、広島県や愛媛県、北海道南部などで見られたことに相当します。

 こうした、ちょっと調べればわかるようなこともせずに、他人の言動を横流しするだけで記事にしてしまう、マスコミ(といっていいのか?)情報が、ネットにはあふれています。
 このような事実を認識することも、ネットリテラシーのひとつといえるでしょう。

2023年02月10日