トルコ・シリアの地震と怪しい雲 (3)

 2月10, 11日付ブログに引き続き、トルコ・シリアの地震と怪しい雲を取り上げます。
 前回、ヤフーコメントでは、気象学者で雲研究科の荒木健太郎氏の「ない」と否定する断定口調を批判する書き込みが多く見られたことを紹介しました。

 今一度、荒木氏のツイートを眺めてみましょう。
 「何度でも言いますが、雲は地震の前兆にはなりません」「巷で『地震雲』と呼ばれることの多い雲は全て気象学で説明できる子たちで、雲の見た目から地震の影響等を判断するのは不可能です」

 確かに、雲が地震の前兆現象だったことを明確に示した事例はない、と言っていいでしょう。
 などと言うと、「阪神・淡路大震災前に見られた渦巻き上の雲は?」といった質問がくるかもしれません。あの雲は地震雲か?とも言われていますが、推測の域を出ていません。また、他の疑わしい雲もみな後付けで「だったかもしれない」と言われているに過ぎません。

 荒木氏が言うように、雲の見た目から地震の影響等を判断するのは、まず不可能です。などと言うと、今度は「私は雲で予知してきた」と主張する人が出てくるかもしれません。以前、そのような方に「ではこれから先、あなたの予知情報をすべて私に教えてください。」というと、その後の連絡が途絶えてしまいました。

 雲の形状や出現方位、時間などの情報から、再現性のある地震予知情報を導き出すことは、まず無理でしょう。
 だいぶ前のテレビ番組になりますが、どこかの大学の研究室が地震と地震前に見られた雲とのあいだに、何らかの法則性のようなものがある、と主張していたことを覚えています。
 しかし、その後この話は途絶えてしまいました。学術論文での発表もなされていないのではないかと思います。

 昨年の3月に、東京と大阪でボラが大量死し、その直後に福島県沖で最大震度6強地震がありました。このボラ大量死を、東京から約300kmも離れている地震の前兆とする書き込みがネット上で散見されました。

 このことは、異常ともいえる現象に出くわすと、たとえその後の大地震が遠く離れた場所であっても、両者を関連づけてしまう人が少なからずいることを示しています。そして、今回のトルコ・シリアの地震についても同様のことが起こったといえます。

 雲と地震の関係について、いらぬ反発を招かずに、読者に冷静に(客観的に)判断してもらうには、どのような表現がふさわしいのでしょうか?

 例えば以下のような言い方ではどうでしょう。
 「雲を見て地震を予知することはまず無理でしょう。」「現に今回の雲をみて、700km以上離れた場所で2月6日にマグニチュード7.8の地震が起こるといった人は誰もいませんでした。」
 「ただし、科学的に解明されていない事実が隠されているかもしれません。雲で地震が予知できる方がいましたら、ぜひご連絡ください。」

 雲が地震の前兆になり得ることについて、科学的な検証に耐えうる客観的なデータがあるなら、それは大変興味深いことです。

2023年02月15日