イルカやクジラの集団座礁と地震
2023年4月3日(月) 10:26付で、"【速報】約30頭のイルカが海岸に打ち上げられる 5頭が死んでいるのを確認 千葉・一宮町"
といったニュースがありました。
(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/412066?display=1)
今回も、この集団座礁と地震とを結びつけるコメントがネット上に見られます。
なかには、2011年の東日本大震災前や同年2月のニュージーランドの地震前もそうだった、といった書き込みもありました。
この件については、地震との関連性は考えにくいことを、2022年08月30日付のブログ "【再考】3.11(東日本大震災)前の動物異常行動(3)
クジラ" で説明しています。
(https://dfir-lab.info/posts/post31.html)
今回の集団座礁は、東日本大震災前の茨城県(鹿島灘に面する海岸)より南、九十九里海岸の南端あたりのようです。鹿島灘に面する海岸同様に、ここも遠浅と考えていいようです。
過去のデータを調べますと、2006年2月22日に、いすみ市岬町太東海岸でカズハゴンドウ 2頭、2006年2月28日は長生郡一宮町東浪見(トラミ)
でカズハゴンドウ 67頭の集団座礁が記録されています。
地震はどうでしょうか?
政府の地震調査研究推進本部「2006年の主な地震活動の評価」(https://www.jishin.go.jp/evaluation/seismicity_annual/major_act_2006/)によりますと、
3月27日、日向灘 M5.5 最大震度5弱
4月17日頃~、伊豆半島東方沖の地震活動 最大M5.8(21日) 最大震度5弱(30日)
6月12日、大分県中部 M6.2 最大震度5弱
11月15日、千島列島東方 M7.9 (津波を観測)
の4つの地震がでてきます。
場所的には4月17日頃からはじまった伊豆東方沖の地震活動が最も近くなります。しかし、集団座礁からは2ヶ月近く後になります。
それでも、この67頭の集団座礁は伊豆東方沖の地震活動の前兆だったかもしれない、と考える人はいるでしょう。
両者は無関係と言い切ることはできません。一方、カズハゴンドウ 67頭が集団座礁した段階で、伊豆東方沖で4月半ばに顕著な地震活動がある、と予知した人もおそらくいません。
「2006年2月28日・長生郡一宮町東浪見・カズハゴンドウ67頭の集団座礁」といった情報から、「伊豆東方沖で4月半ばに顕著な地震活動」を読み解くことは、まず不可能です。2011年の茨城県での集団座礁でも同様のことが言えます。
イルカやクジラの集団座礁に限らず、いつもと違う何らかの出来事があると「地震の前兆では?」と考えたがる人がいます。しかし、その出来事から、具体的な地震の日時・場所・規模を精度良く言い当てる(地震予知)ことは、まずできないでしょう。地震が起きて、はじめて具体的な地震と関連づけようとするわけです。決して地震前ではありません。
イルカやクジラの集団座礁は、少なくとも現時点では、実際の防災・減災に役立つ情報にはなり得ない、と言えます。