例外的な群発地震、能登半島地震

 地震活動のパターンは、2種類に大別されます。
 1) 本震−余震型:本震と呼ばれる大きな地震の後に、それより規模の小さな地震(余震)を伴うもの。場合によっては、本震に先行して、それより規模の小さい地震(前震)が発生する場合がある。
 2) 群発型:ある地域で地震活動が徐々に活発になり、その状態がダラダラと続く(群発地震活動)。通常、特に際立った大地震は発生しない。

 能登半島では、2020年末頃から地震活動が活発化していました。いわゆる群発地震です。
 2023年5月5日にマグニチュード(M)6.5の顕著な地震が発生しました。そして、2024年1月1日にはそれを上回るM7.6の地震が発生しました。

 一連の能登半島の地震活動は、群発地震のなかでも大地震を伴った例外的なものといえます。したがって、地震学者が大地震発生の可能性を警告できなかったのも仕方ないことかもしれません。

 さて、能登半島の群発地震活動では、なぜM7.6といった大地震が発生したのでしょうか?
 これについて、能登半島の地震は逆断層タイプで、そのために、より深部から上昇してきた流体が放出される場がなく、大量の流体が蓄積されて大地震発生に至った、とする仮説が発表されました。
(Ishikawa and Bai, 2024, The 2024 Mj7.6 Noto Peninsula, Japan earthquake caused by the fluid flow in the crust, Earthquake Research Advances; https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2772467024000186)

 この論文では、1965年から活発化した松代群発地震との比較で、上記の仮説を説明しています。
 松代群発地震は、主に横ずれ断層だったため、地下深部から上昇し群発活動を引き起こしたとされる流体が地表に噴き出したのに対し、逆断層の能登半島では流体は横に広がるものの、深部から供給される流体が多いため、それが蓄積され大地震発生に至ったという主張です。(詳しくは上記の論文をご覧ください。)

 今回の能登半島の群発地震活動で現代の地震学は、1月1日のような大地震発生の危険性を警告できませんでした。
 2016年熊本地震でも、震度7の地震が続けて起きることは予想されていませんでした。

 これが今の科学(地震学)の実力です。
 警告できなかったことよりも、まだまだ知らないことが多いと謙虚になることのほうが、私は大切だと考えます。

 2024年1月22日ブログ「能登半島は高レベル放射性廃棄物処分の好適地?」でも述べたように、科学的な知見では、能登半島の大半が高レベル放射性廃棄物処分の好適地でした。しかし、実際は不適地であったことが、今回の地震で証明されました。

 高レベル放射性廃棄物処分のように、将来に禍根の残す可能性があることについては、危険の可能性を排除しないスタンスが重要と考えます。

2024年05月22日