能登半島地震を示唆する地震雲はあったのか?

 2024年12月21日の日本地震予知学会第11回学術講演会にて、「能登半島地震を示唆する地震雲はあったのか?」のタイトルで発表しました。

 いわゆる地震雲と呼ばれている雲の存在は確かめられていません。気象学者の荒木健太郎氏はSNS上で地震雲が話題になるたびに、「地震雲とされる雲はすべて気象学で説明できる雲である」と主張しています。

 本発表では、Yahoo!のリアルタイム検索を利用して、地震雲かもしれない雲の情報を入手しました。
 Yahoo!のリアルタイム検索は、あるキーワードに関することがX(旧Twitter)でどれだけつぶやかれているかをリアルタイムで示しています。また、それは1ヶ月前まで遡ることができます。
 この機能を利用し、2023年12月1日から2024年1月1日までのキーワード「地震雲」のつぶやきから、いつ、どこで地震雲かもしれない雲が発生していたのかを見出し、その中に能登半島地震を示唆するようなものかあったのか調査しました。

 その結果、1月1日16時10分の本震に向かって、震源周辺からの投稿が増えるとか、投稿数そのものが増えるといった傾向はありませんでした。
 地震雲を見たという投稿は、12月28日から12月31日までゼロでした。投稿する人が年末休みに入ったためかもしれません。
 地震前1ヶ月間で、石川県からの投稿とわかるものもゼロでした。震源に最も近かった投稿は、12月13日の富山県からのものでした。

 このようにXの投稿からは、能登半島地震を示唆する地震雲はなかった、といえます。

 では、地震発生後の投稿はどうだったのでしょうか。
 気になった投稿は、1月1日地震発生直前に七尾湾付近で撮られたという雲です。この雲はおそらく積雲かと思われますが、雲と青空との境界がやや直線上に伸びているものでした。

 そこで、同様の雲が過去になかったのかを https://tenki.jp/ の過去天気(気象衛星) から検索しました。すると、例えば2022年9月21日は東北地方で、2022年12月9日には福岡県で雲と青空との境界が直線上に伸びる雲が見られていました。したがって、2024年1月1日に石川県で見られた地震雲候補は、「気象学で説明できる雲」と言えそうです。

 ただし、ひとつ気になった点がありました。この雲と青空の境界は能登半島を横切る状況が、9~10時あたりから16~17時あたりまで続いていたようなのです。
 このような現象が気象学で説明できるかについてはさらなる調査が必要ですが、おそらく気象学者からは気象学で説明できる、といわれてしまうのかもしれません。

 Xの投稿をここ数年来追っていますが、これまで地震雲の投稿が地震を予知した、といえることは一度もありませんでした。そのほとんどは、投稿者が「おかしな雲」と思った雲を地震雲?として投稿しているだけです。

 本気で地震雲の存在を証明したいのであれば、その「おかしな雲」が、この気象条件で発生することはあり得ない、と気象学者が認めざるを得ないことを示すことです。ただし、それでもそれが地震雲とまではいえません。気象学で説明できない成因の雲があることを示したまでです。

 また、気象学で説明できる現象であるなら、それが大地震の前に有意な差をもって現れていることを証明することでしょう。つまり、大地震前の何か(この時点では不明)が気象に影響を及ぼしていることを、統計的に示すことです。

2024年12月29日