兵庫県知事選挙の結果を考える
11月17日投開票の兵庫県知事選挙で、前知事の斎藤氏が再選しました。百条委員会が開催された時には、誰も想像できなかった結末だと思います。
失職時には「港湾権益にメスを入れたため潰された」などというフィクションがネットで広まりました。ここから既得権益(悪)に一人で立ち向かうヒーロー、というストーリーが始まっていたと見ます。
このシナリオを誰が考えたのかは不明ですが、ここまでうまくいったわけですから、笑いが止まらないでしょう。
負けた稲村氏は「私個人の感想としては、候補者の資質、政策を問うというより、何を信じるかということが大きなテーマになった選挙に結果的にそうなっていたというふうに感じている」とコメントしています。
パワハラ捏造説や既得権益に歯向かったという陰謀説を信じた人が多かった、ということだと思います。
ある有権者の書き込みでは、訴えられた人が公益通報者探し(犯人探し)をしても違法にならない、といった弁護士の説明をネットで見て納得した、とありました。
恐ろしくなりました。この有権者の「納得」は、強者は自らに楯突いた弱者を自由に葬っても構わない、といった発想につながります。
また、これがまかり通るなら、公益通報制度は有名無実で何の役に立ちません。仮にこの弁護士が主張するように違法にならないのであれば、それは法律の不備といえます。
今回なぜ選挙になったのか?
知事がパワハラで訴えられたことを知った後、犯人探しをせずに粛々と第三者委員会を立ち上げ、そこに判断を委ねていれば、今回の選挙はなかったでしょう。おそらく、ここまで全国的に注目されるようなニュースにすらならなかったと思います。
しかし、パワハラ捏造説や陰謀説は、犯人探し自体も「問題なし」としてしまったようです。
「人間ならば誰にでも、現実の全てが見えるわけではない。多くの人たちは、見たいと欲する現実しか見ていない」というユリウス・カエサルの言葉があります。
今回の選挙でパワハラ捏造説や陰謀説を信じた人たちは、まさに見たいと欲する現実しか見ていなかったのでしょう。
ただし、光明もあります。10代と20代の多くは斎藤氏に投票したようです。
高齢者の声が強いシルバー民主主義などといわれる今の日本でも、自分が投票すれば変えることができる、といった成功体験を若者は得ることができました。この点は良かったと思います。