日本の地震防災を問う(3) 地震ハザードマップは廃止が妥当?

 地震ハザードマップとして知られているのは、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を黄色〜赤色〜茶色で示した全国地図の確率的地震動予測地図になります。
(https://www.jishin.go.jp/main/chousa/20_yosokuchizu/yosokuchizu2020_chizu_10.pdf)

 知られていると言いましたが、大学の授業で知っているかを尋ねたところ、2年続けてほとんどの学生がその存在を知りませんでした。更新されればニュースになるし、この地図を壁に貼っている役所の防災課もあります。それでも、実はさほど世間一般には知られていないのかもしれません。

 さて、この地震ハザードマップについて、日本の地震防災に批判的なロバート・ゲラー博士はハザードマップではなくハズレマップだ、と揶揄しています。確率の高い南海トラフ沿いなどでは、震度6弱以上の地震は起きず、確率の低い地域で起きていると、批判しています。
(ロバート・ゲラー, 2015, 間違った学説に頼るな.pdf)

 そもそも、地震に限らずハザードマップは、危険な場所を示していることから、そこから外れたエリアは、逆に「安全」と認識されてしまう傾向があります。

 東日本大震災では、津波浸水ハザードマップが示した危険(浸水)エリアを超えて、津波が襲ってきました。
 岩手県の大槌湾周辺では、400人を超す死亡・不明者のうち、浸水想定範囲外の住民が8割も占めていました。この結果は、危険エリアの人の多くは避難して助かりましたが、安全とされたエリアの人たちの多くが逃げ遅れ、犠牲になってしまったことを示唆しています。
  つまり、危険(想定浸水域)を示すハザードマップは、逆に「安心確認マップ」にもなってしまう、ということです。
(https://www.kahoku.co.jp/special/spe1114/20130501_01.html)

 平成30年7月豪雨は、西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的な大雨をもたらしました。
 岡山県倉敷市真備地区も大きな被害に見舞われました。
 倉敷市が平成29年に作成した洪水・土砂災害ハザードマップと、平成30年7月豪雨による浸水状況はほぼ一致していました。

 いずれの例でも、ハザードマップの危険エリアは被害に見舞われました。その意味においては、津波浸水ハザードマップも洪水・土砂災害ハザードマップも、ハザードマップとしての役割を果たしていたといえます。

 これに対して、地震ハザードマップはどうでしょうか。
 比較的に安全とされていたエリアで地震が発生し、南海トラフ沿いをはじめとする危険エリアでは、まだ地震が発生していません。
 こうした事実から、地震ハザードマップは、ハザードマップとしての役割を果たしているとは言い難い状況といえます。

 今の地震ハザードマップは、もはや廃止が妥当と考えます。

2024年12月28日