神戸と地震

 『壊滅的な被害は間違いない』発災21年前に"神戸の大地震"を指摘した報告書「これが伝わればもう少し人が死なずにすんだかも」京都大学名誉教授が当時を語る【阪神・淡路大震災から30年】 2025/01/28 13:00
(https://www.mbs.jp/news/feature/kansai/article/2025/01/104928.shtml)
といった動画を見ました。
 1974年に発行された『神戸と地震』の研究に関わっていた尾池和夫・京都大学名誉教授へのインタビュー動画です。

 『神戸と地震』は、神戸市が地震学者に地震の危険性の検証を依頼し、その結果をまとめた報告書になります。
 この報告書では、「将来都市直下型の大地震が発生する可能性はあり、その時には断層付近でキ裂・変位がおこり、壊滅的な被害を受けることは間違いない」と、断定的な表現で神戸市の危険性が指摘されています。

 しかし、「『神戸と地震』の研究の代表者から、「報告書はなかったことになった」と聞いた」と尾池氏は当時を振り返っています。
 そして、「ありきたりな対策をしておけばそれでよいという報告書だったら(神戸市にとって)よかったかもしれないが、(神戸市にとっては)結論がどぎつすぎた」と、報告書が生かされなかった原因を推測しています。

 この推測はおそらく図星だったのではないか、と思います。
 行政からすれば、我が町の繁栄を目指しているわけですから、安全は前提になります。企業も大地震の危険性があるまちに、わざわざ移転しようなどとは考えないでしょう。

 研究成果が実際の防災対策に活かされていない現実は、昨年の能登半島地震(マグニチュード7.6)でも見られました。

 石川県地域防災計画の「津波災害対策編」では、能登半島地震の地震断層が重なるF43と呼ばれる断層で、マグニチュード7.6前後の地震を想定していました。しかし、「地震災害対策編」では能登半島北方沖でマグニチュード7.0の地震は想定していたものの、マグニチュード7.6前後のF43断層は想定地震に含まれていませんでした。(参照:本ブログ2024年01月13日付「能登半島地震は想定されていたのか?」)

 東日本大震災後に、各都道府県の地域防災計画にある県境付近の活断層の扱いについて調べたことがあります。その結果、ある県では想定地震としていた県境付近の活断層を、もう一方の県では想定地震としていなかった事例が複数ありました。(織原義明他, 2011, 地域防災計画における被害想定地震の考え方と課題, 地域安全学会梗概集, 29, 71-74.)

 このように、行政の防災対策にはチグハグなところがあります。

 上記の動画で、尾池氏は(1974年発行の『神戸と地震』が活かされていたなら)「(阪神・淡路大震災で)もう少し人が死なずにすんだかもしれないと、だんだん思いました。残念ではありますね」と回顧しています。

2025年02月03日