Society 5.0 が目指す社会
内閣府によれば、Society 5.0とは我が国が目指すべき未来社会の姿で、サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことです。
(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/)
狩猟社会がSociety 1.0、農耕社会がSociety 2.0、工業社会がSociety 3.0、情報社会がSociety 4.0で、それにに続く新たな社会がSociety 5.0です。そして、第6期科学技術・イノベーション基本計画で、日本が目指すべきSociety 5.0の未来社会像とは「持続可能性と強靭性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会」としています。
そんな社会が実現できたなら、本当に素晴らしいことでしょう。
個人的に気になる点は、Society 5.0 は「経済発展と社会的課題の解決を両立する」社会だ、と言っていることです。

図:経済発展と社会的課題の解決を両立する社会
(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0.pdf より)
おそらく、日本人のみならず世界中の多くの人が、経済発展と社会的課題の解決は両立できると思っているでしょう。だからSDGsなる理想も掲げていると考えます。
経済が発展することにより、所得が増え生活水準が向上します。しかしその一方で、環境破壊や経済格差の拡大などのデメリットも生じます。この環境破壊や経済格差の拡大などが社会的課題です。
工業社会 (Society 3.0) は、自然環境を破壊することで得られる天然資源により、経済を発展させてきました。情報社会 (Society 4.0) はその延長線上にあります。
現在が Society 4.0 から Society 5.0 への移行期だとした場合、今もなお私たちは、自然環境を破壊して経済を発展させています。
では、Society 5.0がいう「経済発展と社会的課題の解決を両立する」社会は、どのように実現できるのでしょうか?
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0.pdf を見ると、科学技術の進展により社会的課題が解決できる、と考えている節があります。
しかし、Society 5.0 の中心となる AI技術の拡大により、既に大量の電力消費とそれに伴う二酸化炭素排出量の増加や、大量の水資源の消費などの新たな社会的課題が顕在化しています。(2025年8月14日付ブログ『AIの進歩が温暖化を促進する!?』参照)
科学技術の進歩は、何らかの社会的課題を解決するかもしれません。しかしながら、別の新たな社会的課題を生んでしまっているのです。これが現実です。