残念な「ファクトチェック」

  "イワシやクジラの漂着は地震の影響?関連づける根拠やデータはない【ファクトチェック】" 2024年9月18日
(https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/disasters/baseless-whale-sardine-beach-earthquake/)
といった記事が、Yahooニュースでも取り上げられていました。

 このファクトチェックの判定は「イワシが大量に海岸に漂着しているニュースとともに地震の前兆だ、あるいは地震の影響だは、根拠不明。イワシやクジラ、イルカの漂着と地震を結びつけるデータや根拠はない」です。

 確かに「イワシやクジラ、イルカの漂着と地震を結びつけるデータや根拠はない」でしょう。
 ただし、残念!と思ったのは、ファクトチェックと言いながら、調べが浅いと感じたからです。地震との関連を調べるなら、長期間にわたるデータを調べて結果を示すべきです。

 このファクトチェックでは、イワシの大量漂着については、2023年12月7日に北海道函館市の大量漂着のみで検証しています。イルカやクジラについては、2024年1月1日の能登半島地震のみを対象として、前後のイルカやクジラの打ち上げを調べて検証しています。

 学術的な検証ではないので、仕方ないかもしれませんが、それであっても、もう少し検索すれば「2011 年東北地方太平洋沖地震前に発生したマス・ストランディング-鹿島灘における鯨類のストランディングと日本周辺の地震との関係-」といった論文にもたどりつけたのではないか、と思います。

 Woith et al., Review: Can Animals Predict Earthquakes?, (2018) では、地震前の動物異常行動を取り上げた論文の多くが、長期的なデータによる検証がなされていない、と問題点を指摘しています。

 今回のファクトチェックは学術論文ではありませんが、根拠不明と結論づける側も長期的なデータによる検証がなされていない、ことになります。長期的なデータによる検証をした論文に辿り着けるまで、もう少し検索して欲しかったです。

 ちなみに、イワシの大量漂着と地震との関連については、来月10月に新潟で開催される日本地震学会秋季大会で、研究結果を発表する予定です。長期間のデータによる検証です。

2024年09月19日