南海トラフ地震臨時情報への批判
先月8月8日に出された南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)は、1週間後に解除されました。
新たな大規模地震の発生可能性につながる異常な現象が観測されなかったことや、後発地震の発生可能性が時間経過とともに低下したことなどが理由になります。
8月21日付ブログ「南海トラフ地震臨時情報に対しおおむね好意的というが、、、」でも取り上げたように、東京大学によるWebアンケート調査では、「空振りでも公表して」41% 、「どんな情報も提供を」32%と、人々はおおむね好意的に受け止めていたようです。
しかし、批判的な意見もあります。ネット上で目にした典型的な意見のひとつは「気象庁は予知はできないといっているのに、巨大地震に注意って、矛盾していないか?」といった主旨のものです。
また、巨大地震注意の臨時情報が、「異常な現象が観測されなかった」ことを理由に解除されたなら、「異常は観測されるの?それって予知できるってこと?」と思った人がいても不思議ではありません。
これを「言葉尻を捕らえた言いがかり」と思う人もまたいるでしょう。しかし、全ての人が専門家のような知識を持っているわけではありません。公表するなら、最新の注意を払って言葉を選ぶべきでしょう。
今回の場合は、直後に「ただし、異常が観測されずに地震が発生する場合もある」を必ず付け加えることを、マスコミに周知徹底させることです。
気象庁は 「令和6年8月8日16時43分頃の日向灘の地震について(第8報)及び南海トラフ地震関連解説情報(第7号)について」の3ページ目、「防災上の留意事項と今後の見通し」なかで、「南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すような地震活動や地殻変動は観測されていません。」と述べています。
(https://www.jma.go.jp/jma/press/2408/15a/kaisetsu202408151800.pdf)
残念ながら、この後に「ただし、特段の変化が観測されずに地震が発生する場合もある」といった内容は、記載されていませんでした。
南海トラフ地震の前には「固着状況に特段の変化を示すような地震活動や地殻変動は観測される」のであれば、「南海トラフ地震を予知できる」と解釈する人がいるかもしれません。
一方で、"気象庁「予知はデマ」明言、地震雲の発生や動植物の予知能力は「科学的な根拠に欠ける」"
(https://www.yomiuri.co.jp/national/20240812-OYT1T50051/)
と、地震予知はできない、としています。
この状況に矛盾を感じる人がいても、確かにおかしくはないでしょう。
キャスターの辛坊治郎氏は「今回の注意情報の根拠があまりにも薄弱」、「大きな地震が起きた1週間は同じような大きな地震が起きる確率がちょっと高くなりますというとで、南海トラフ関係ない。どこの地震だってそうだろ」とぼやいた、とあります。
(https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2024/08/15/kiji/20240815s00041000206000c.html)
また、地震予知・予測に批判的なロバート・ゲラー氏は自身のX (旧Twitter) で「「南海トラフ地震臨時情報」はありがた迷惑だ。「起きるかも,起きないかも、まぁいつでもよりちょい危ないかも」、と。じゃー,だからいつもの備え以外どうすべき?なんの意味が無い「地震少年」ぶりをやめてくれないのか?」と言っています。
(https://x.com/rjgeller/status/1821457766881313230)
しかし、一般市民の多くがゲラー氏と同じ、とは言えないようです。
「【Yahoo!検索】「南海トラフ地震臨時情報」発表で「防災グッズ」の検索数が前週比約90倍、翌9日は約155倍に Yahoo!検索、災害時の情報収集や防災に役立つ検索方法を紹介」
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000680.000129774.html)
「防災グッズへの関心高まる、南海トラフ地震臨時情報の影響受けホームセンターで品薄や売り切れ【宇部】」
(https://ubenippo.co.jp/2024/08/17/4016804/)
これを契機に備えをした人もいましたし、いつもの備えを点検する人もいました。
さて、政府には批判も踏まえて、今後同じようなことが起きた場合の対策を準備しておいてほしいです。