次の100年に向けての地震予測、災害軽減
11月12日に、東京大学地震研究所の創立100周年を記念する式典が東大の安田講堂で開かれました。この式典で古村孝志所長は「次の100年に向けて、地震現象の理解や予測、災害の軽減を目指す」と話した、とのことです。
"東京大学地震研究所、創立100周年で記念式典 「災害の予測を」" 2025年11月13日 5:00
(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG122H90S5A111C2000000/)
研究者が地震現象の理解を深め、地震予測の精度を上げることは、災害の軽減につながるでしょう。末席ながら、私も災害軽減を目指して、地震予測の研究を続けています。
災害を軽減するには、研究者の努力だけでなく、政府機関や地方自治体等の理解も不可欠です。そして何より国民の災害に対する意識向上が重要と考えます。
地震調査研究推進本部は、一般市民を対象にした地震用語の知識に関するアンケート調査を実施したことがあります。調査は調査実施会社の登録モニターによるインターネット調査で 2,000 人から回答を得ています。
この調査によれば、中学理科で学ぶ用語について、他人に説明できるくらい知っていると答えた割合は、活断層が16.0%、マグニチュード 20.7%、プ レート境界 14.5%でした。
一方、中学理科で学ばない用語について、他人に説明できるくらい知っていると答えた割合は、海溝型地震が 7.6%、地震発生確率 6.0%、強震動 4.5%、長周期地震動 7.7%と、上記用語の半分以下でした。
(https://www.jishin.go.jp/main/seisaku/hokoku16j/sg60-5.pdf)
高校における2019年度の地学の履修率は、地学基礎が 26.2%、地学はたった 0.9%といった調査結果があります。
(吉田幸平・高木秀雄, 2020, 高等学校理科「地学基礎」「地学」開設率の 都道府県ごとの違いとその要因, 地学雑誌, 129(3), 337-354.)
多くの国民は中学理科で地震について学んだ後、高校で地学を学ばないため、中学理科で学ばない用語についての理解度が低かったのかもしれません。(高校で地学を学びたくても学べない現実もあります。この問題については、別の機会に考察することにします。)
さて、ちょっと乱暴かもしれませんが、上記のアンケート調査から中学理科で学ぶ地震について十分に理解している一般市民の割合を推定するならば、1〜2割程度となります。裏を返せば、一般市民の8〜 9割程度は中学理科で学ぶ地震について十分理解していないことになります。
高校で地学が学べないといった問題点は、以前から指摘されていますが、改善が難しい様です。
であるならば、いつ来るかわからない地震の災害を軽減するためには、一般市民へ向けた広報とでもいいましょうか、研究者側からの働きかけが、より一層必要ということになります。