イタリアの地震雲論争 (2)
さて、地震雲論争の続きです。
イタリアのアペニン山脈に現れる線形を示す雲が地震前兆だとするGuangmengは、Thomasらの批判に対して、2012年4月の異常と2012年5月の地震は、いずれも他の異常や地震に比べ顕著であり、両者は関連している可能性が高い、と反論しています。
Guangmengによる反論の論文は2本ありますが、今回は以下の論文について触れます。
G. Guangmeng, 2021, A Retrospective Analysis about the Italy Emilia M6.0 Earthquake Prediction, Open Journal of Earthquake Research, 68-74, DOI: 10.4236/ojer.2021.102005
Guangmeng は、線形を示す雲がその形状を維持している時間(継続時間)に着目しました。
Thomas et al. (2015) にある2010年から2013年の間にあった線形状の雲(計23回)の継続時間を調べたところ、最も長かったものは2012年4月21-23日の雲で、継続時間は34時間でした。
そして、この雲の継続時間(34時間)だけが、標準偏差の2倍(2シグマ)ばかりか、3倍(3シグマ)をも超えていました。
一方、2009年から2016年の間にマグニチュード6を超えた地震は、2012年5月20日の地震だけでした。
このことから、両者には関連がある、といった主張です。
ただし、この主張は説得力に欠けると考えます。
1点目。雲の異常を調べた期間(2010-2013)と、対象にした地震の期間(2009-2016)が一致しません。
雲も同様に2009年から2016年までを調べたとしたなら、34時間よりも継続時間が長い雲が見つかる可能性があります。その点の考察が欠けています。
2点目。仮に、雲の継続時間と地震のマグニチュードとの間に関連があるとするなら、他の22回の異常についても、地震のマグニチュードとの対応を調べるべきです。
3点目。一方、2012年4月21-23日だけが地震の前兆シグナルとするなら、それ以外はハズレのシグナルなのか?、または、しきい値未満とするのか?の議論がありません。
以上により、この論文は説得力に欠けると言わざるを得ません。